上 下
153 / 420
騎士と派閥と学園生活と

第124話-噂の人物フランソワ-

しおりを挟む

 男女関わらず人が集まっているその中心に居たのは間違いなくアルだった。
 みんな制服なので学院の生徒である事はわかる。将来有望な騎士に目をつけてみんなが声をかけているんだろう。
 しょうがないここは1つ、アルの主人として助け舟を出そう。

「みんなここで待ってて。もう1人連れてくるわね」

 マナー違反かも知れないけどアルの前にいる人達をかき分けて中に入っていく。

「見つけたここに居たのね。あなたを友達に紹介したいのこっちに来て」
「フランソワ様!」

 人の間から顔を出した私に驚くアル。
 アルだけじゃなくて周りの人も驚いている。驚きながらもこっちに対して敵意を露にしている人もいる。

「なんだ君は? 突然出てきて」

 ごもっともな意見だ。だけど、これが終わるのを待ってたら今日みんなにアルを紹介出来る気がしなかった。
 だから私ははっきり言おう。アルは私の近衛騎士ですって。

「この方は私の仕えている方です。皆様には言うタイミングが無かったのですが、私は既にこの方の近衛騎士として仕えておりますので皆様の期待に答える事はできません」

 先に言われた。それなら最初から言えば良いのにと思ってしまうけど、人に気を使いすぎるのもアルの良いとこではあるのよね。
 その宣言に周囲がざわつく。落胆する人、信じられないと叫ぶ人、反応は様々だけど、1人として祝福のムードではない。

「知ってるぞ。そいつ噂になってるフランソワって子だろ。君以外に近衛騎士を取ったと聞いている。それはどうなんだ! 君は本当に近衛騎士なのか?」
「本当です。祝詞を捧げ、受け取ってもらっています。私以外に近衛騎士が居るのも承知の上です」
「そんなの可笑しいだろ! 近衛騎士は1人のはず、それを許すなんて。君に対しての裏切りじゃないか?」
「違います。私はそれを踏まえてもこの方の近衛騎士になると言ったのです。裏切りではありません」

 真っ直ぐとした瞳で言葉を返した。
 アルに対しての言葉では勝てないと思ったのか、次に言葉が飛んできたのは私の方にだった。

「近衛騎士を何人もなんてふざけるな! 歴史と伝統を侮辱している!」
「ふざけていませんし、侮辱もしていません。ただ、私なりの考えがあってそうしている事。それに可笑しい事であれば、アルは反対していると思います。アルは真っ直ぐな人ですから。それを踏まえて承知しているのであれば、それを否定するあなたが失礼だと思いますが?」
「勝手な理屈を並べるな!」

 激昂した相手の右手が私に迫る。けれどもその手が私に届く事はなかった。
 私の前で他の人の手によって掴まれていた。細い腕だけど、力強く相手の腕を掴んで動けないようにしている。
 私と言えば手が伸びた瞬間にアルに肩を掴まれてアルの隣に抱えられていた。
 このシュチュエーションだけでご飯を3杯は行けそうな気がする。心なしかいい匂いもする。

「やめとけよ。女に手を出すのは格好悪いんじゃないか?」

 飄々とした言葉だけど、芯のある言葉。そんな事を言うのは彼らしい。

「お嬢、大丈夫か? ってアルが居るなら大丈夫か」
「ヤン~。最高のタイミングね」

 余裕のある不敵な笑みが心強いもう1人の近衛騎士がそこに居た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】エルモアの使者~突然死したアラフォー女子が異世界転生したらハーフエルフの王女になってました~

月城 亜希人
ファンタジー
やりたいことを我慢して質素に暮らしてきたアラフォー地味女ミタラシ・アンコが、理不尽な理由で神に命を奪われ地球から追放される。新たに受けた生は惑星エルモアにある小国ガーランディアの第二子となるハーフエルフの王女ノイン・ガーランディア。アンコは死産する予定だった王女に乗り移る形で転生を果たす。またその際、惑星エルモアのクピドから魔物との意思疎通が可能になるなどの幾つかのギフトを授かる。ところが、死産する予定であった為に魔力を持たず、第一子である腹違いの兄ルイン・ガーランディアが魔族の先祖返りとして第一王妃共々追放されていたことで、自身もまた不吉な忌み子として扱われていた。それでも献身的に世話をしてくれる使用人のロディとアリーシャがいた為、三歳までは平穏に過ごしてきたのだが、その二人も実はノインがギフトを用いたら始末するようにと王妃ルリアナから命じられていた暗殺者だった。ノインはエルモアの導きでその事実を知り、またエルモアの力添えで静寂の森へと転移し危機を脱する。その森で帝国の第一皇子ドルモアに命を狙われている第七皇子ルシウスと出会い、その危機を救う。ノインとルシウスはしばらく森で過ごし、魔物を仲間にしながら平穏に過ごすも、買い物に出た町でロディとアリーシャに遭遇する。死を覚悟するノインだったが、二人は既に非情なルリアナを見限っており、ノインの父であるノルギス王に忠誠を誓っていたことを明かす。誤解が解けたノイン一行はガーランディア王国に帰還することとなる。その同時期に帝国では第一皇子ドルモアが離反、また第六皇子ゲオルグが皇帝を弑逆、皇位を簒奪する。ドルモアはルリアナと共に新たな国を興し、ゲオルグと結託。二帝国同盟を作り戦争を起こす。これに対しノルギスは隣国と結び二王国同盟を作り対抗する。ドルモアは幼少期に拾った星の欠片に宿る外界の徒の導きに従い惑星エルモアを乗っ取ろうと目論んでいた。十数年の戦いを経て、成長したノイン一行は二帝国同盟を倒すことに成功するも、空から外界の徒の本体である星を食らう星プラネットイーターが降ってくる。惑星エルモアの危機に、ノインがこれまで仲間にした魔物たちが自らを犠牲にプラネットイーターに立ち向かい、惑星エルモアは守られ世界に平和が訪れる。 ※直接的な表現は避けていますが、残酷、暴力、性犯罪描写が含まれます。 それらを推奨するものではありません。 この作品はカクヨム、なろうでも掲載しています。

しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記

スィグトーネ
ファンタジー
 ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。  そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。  まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。  全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。  間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。 ※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています ※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。

ドラゴンなのに飛べません!〜しかし他のドラゴンの500倍の強さ♪規格外ですが、愛されてます♪〜

藤*鳳
ファンタジー
 人間としての寿命を終えて、生まれ変わった先が...。 なんと異世界で、しかもドラゴンの子供だった。 しかしドラゴンの中でも小柄で、翼も小さいため空を飛ぶことができない。 しかも断片的にだが、前世の記憶もあったのだ。 人としての人生を終えて、次はドラゴンの子供として生まれた主人公。 色んなハンデを持ちつつも、今度はどんな人生を送る事ができるのでしょうか?

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

処理中です...