上 下
151 / 420
騎士と派閥と学園生活と

第122話-優しい友人と優しい言葉-

しおりを挟む
「朝はごめん。私のせいで変な空気になっちゃって」

 午前の授業を終えて私達はいつもの場所でお昼を食べていた。
 いつもは私が率先してアリス達の元へ迎えに行っていたけど気を遣ってくれたようでアリス達の方から私の教室へ来てくれた。その心遣いが身に染みる。

「お気になさらずに。相手の言い方が悪かっただけですのよ」

 アンは口を尖らせながらフォローをしてくれた。でも最初の原因を作ってしまったのは私だ。だから結果はどうであれ私も悪いことは承知している。

「だからフランソワ様! 早く噂のお話を聞きたいですわ」
「アンあなたそんな噂好きだったけ?」
「今更ですよフランソワ様。噂話は大好きです」

 他の2人がにこやかな笑顔を浮かべながら私の方へと視線を向けている。彼女達も少なからず私の話を楽しみにしてくれているらしい。

「そんな期待しないで。本当にあなた達が想像しているような話じゃないの。私は助けられてばっかりの話だったから」

 ガルド城での話を私はかいつまんで話した。
 言えることと言えないことがある。だから、言葉を選びながらも私のした冒険と関わった人達の勇姿を語った。
 話を聞いてくれている3人は目を輝かせて聞いてくれていて、私の話の山と谷ではリアクションをくれていた。
 話が進むと険しい表情を浮かべる場面もあった。それでも最後には聞き終わると拍手で称えてくれた。私は誇張して言うことは何もなかった。ただ、本当にあったことを話したつもり。

「フランソワ様、すごいですよ」

 ユリィは静かにそう言ってくれた。

「謙遜することはありません。周りの方のご活躍も凄いことです。ただ、フランソワ様も負けていません。自信をお持ちになってください」

 その言葉は私が心の中で背負っていた重石を少し軽くしてくれた。

「そうですね。フランソワ様の行動力あっての結果です」

 アリスの言葉はいつもと変わらず優しさに溢れていた。

「フランソワ様自身の魅力に皆様ついて来られたのですよ。フランソワ様はもっと誇ってください」

 アンの褒めすぎな言葉も今はとても嬉しい。
 周りを見て私はただついて行ってただけだと思っていた。だけど、それを周りからこうして褒められると少しは自分のことを認められるような気がした。

「ありがとう。みんな優しすぎて私泣いちゃいそう」
「でもそれが本当でしたら噂はかなり大きくなっていますわね」
「なにそれ。そっちの方が私聞いてみたいわ」

 私自身が気になっていた噂の真相を聞きたかった。一体どんな噂になっているのかを。

「『フランソワ様がガルド城に入ってきた盗賊をお供を連れて自ら剣をふるって撃退したと。そして盗賊から宝を頂戴したと。そして最後の夜にはガルド城の城主との討論で城主を負かし、城の全て手に入れるはずでしたが、それを拒否して騎士学生の夢を叶えるために自らが近衛騎士と仕えさせて、さらに城主の元から数人を騎士として引き抜いた』と聞いていたのですが、似て非なるものでしたね」
「尾ひれ付きすぎよ! なにそれ! 所々は間違いないのがまたムカつくわね」

 その情報の出所が気になるわね。そいつを見つけたら小一時間説教でもしてやりたい。
 その噂の人物の行動が無茶苦茶すぎてそれを話した人もおかしいと思わないのか不思議で仕方ない。

「ちなみに近衛騎士を決めたと言うのは本当ですの?」
「本当よ。しかも、3人。ちょうどアリスと休みの初日に街に行った次の日にね」
「流石フランソワ様。型に収まらないですね」

 ユリィはまたもや褒めてくれる。ここまできたらたまには褒め言葉以外でフランソワに言い返す所も見たくなってくる気がする。

「あの後そんな事が。私も見てみたかったです」

 「大した事じゃないわよ」と言いながらもあの日のことは流石に言えないから胸の内にしまっておく。

「そしたら是非次の騎士学校へ行った際は近衛騎士の方を紹介ください。お会いしてみたいです」
「もちろんするわよ。だからアリスもシャバーニ連れてきてね。私の近衛騎士になった人と知り合いらしいから」
「そうなのですね。わかりました。声をかけてみます」

 今週が終わるとまた騎士学校との交流会がある。
 私としてもみんなを紹介するのが私も楽しみで仕方ない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

転生悪役令嬢の前途多難な没落計画

一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。 私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。 攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって? 私は、執事攻略に勤しみますわ!! っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。 ※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました

市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。 ……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。 それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?! 上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる? このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!! ※小説家になろう様でも投稿しています

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

処理中です...