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ガルド城の秘密
第98話-暗闇の中の戦い-
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視界の景色から色が消えた。
壁に沿って吊るされていた明かり、鈍色の岩の壁何もかもが暗闇に飲まれている。
作戦通り、最高のタイミングでフランソワ様が明かりを消してくれた。
私の声が無事に届いてくれたことに内心安堵した。
フランソワ様が私に伝えてくれた作戦、それは今朝教えてくれた、昨夜の出来事、暗闇の中で一つの明かりが像を照らした場面の再現。
当然この地下の洞窟の中に地上の光が降り注ぐような穴などない。
それでもこの洞窟の中で唯一の明かりになるものがある。
それは火の灯った剣。
相手の手にある剣は赤い炎を刀身に纏ってこの暗闇の中でハッキリと見えている。
私はこの瞬間のために啖呵を切った後にまばたきを装って目を閉じた、そして目を開くと今の状況になっていた。
相手はいきなり視界の明かりが消えてこちらを見失って居るはずだ。そして何より燃え盛る炎、それが相手の位置を知らせてくれている。
言葉は発さない。暗闇に乗じてこの短剣を相手に突き立てる。そのために相手に近づく。
私の反対側から足音が大きく聞こえた。多分バレルさんが私のためにわざと足音を立てて相手に近づいている。ありがたい。
呼吸音を小さく抑えて、柄を握る手に力を込める。
「(ここからなら……行ける……)」
後少しの所まで距離を詰めた。足に力を込めて地面を蹴った。
その時予想外の事が起こった。
「くっ……」
思わず声を出してしまう。
それは今まで動かなかった剣が突然、こちらに向かって振られた剣を短刀で受け止めた時の衝撃によるもの。
避けきれなかった。短刀で受けなければ私の身体は剣が直撃していた。
そして、予想外の攻撃に対応したせいで短刀が弾かれた。
私の右方向から短刀が岩に当たる音が響く。
最悪の状況だ。とにかくその場を離れた。場所がバレた状態で留まれば2撃目が来る、こちらは丸腰、避けるしか選択肢がなくなる。
ただこの暗闇の中どう私の位置を見つけたのかが分からない。そして、何より追撃が来ない。
離れたとはいえ、確実に私が居るところは分かったはずだ。なのに、攻撃は来ない、また剣は静止している。
そして次に剣が振られたのは逆側だ。おそらくバレルさんに向かって振られたのだろう。
ただ、火の軌跡が照らした先には誰もいなかった。バレルさんが避けたと言う事でもなさそうだ。
「(当てずっぽうだ。気配か音がしたと思う方に振っている。そして剣の火を早く消そうとしている)」
この暗闇の中で自分の位置を教える火の件は邪魔でしかない、でも火を消すために鞘に収めればその瞬間は無防備で、こちらを捌ききれない。
だから防御兼攻撃をしながら火の勢いを消そうとしている。
火が消えて対等の条件になれば、リーチの長い武器を持つあちらの方が有利になる。
現に剣に灯っている火は一振り毎、時間が経つに最初と比べて勢いは落ちて来ている。
時間は掛けられない、火が消えるまでに決着を付けないとこちらの敗北だ。
壁に沿って吊るされていた明かり、鈍色の岩の壁何もかもが暗闇に飲まれている。
作戦通り、最高のタイミングでフランソワ様が明かりを消してくれた。
私の声が無事に届いてくれたことに内心安堵した。
フランソワ様が私に伝えてくれた作戦、それは今朝教えてくれた、昨夜の出来事、暗闇の中で一つの明かりが像を照らした場面の再現。
当然この地下の洞窟の中に地上の光が降り注ぐような穴などない。
それでもこの洞窟の中で唯一の明かりになるものがある。
それは火の灯った剣。
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相手はいきなり視界の明かりが消えてこちらを見失って居るはずだ。そして何より燃え盛る炎、それが相手の位置を知らせてくれている。
言葉は発さない。暗闇に乗じてこの短剣を相手に突き立てる。そのために相手に近づく。
私の反対側から足音が大きく聞こえた。多分バレルさんが私のためにわざと足音を立てて相手に近づいている。ありがたい。
呼吸音を小さく抑えて、柄を握る手に力を込める。
「(ここからなら……行ける……)」
後少しの所まで距離を詰めた。足に力を込めて地面を蹴った。
その時予想外の事が起こった。
「くっ……」
思わず声を出してしまう。
それは今まで動かなかった剣が突然、こちらに向かって振られた剣を短刀で受け止めた時の衝撃によるもの。
避けきれなかった。短刀で受けなければ私の身体は剣が直撃していた。
そして、予想外の攻撃に対応したせいで短刀が弾かれた。
私の右方向から短刀が岩に当たる音が響く。
最悪の状況だ。とにかくその場を離れた。場所がバレた状態で留まれば2撃目が来る、こちらは丸腰、避けるしか選択肢がなくなる。
ただこの暗闇の中どう私の位置を見つけたのかが分からない。そして、何より追撃が来ない。
離れたとはいえ、確実に私が居るところは分かったはずだ。なのに、攻撃は来ない、また剣は静止している。
そして次に剣が振られたのは逆側だ。おそらくバレルさんに向かって振られたのだろう。
ただ、火の軌跡が照らした先には誰もいなかった。バレルさんが避けたと言う事でもなさそうだ。
「(当てずっぽうだ。気配か音がしたと思う方に振っている。そして剣の火を早く消そうとしている)」
この暗闇の中で自分の位置を教える火の件は邪魔でしかない、でも火を消すために鞘に収めればその瞬間は無防備で、こちらを捌ききれない。
だから防御兼攻撃をしながら火の勢いを消そうとしている。
火が消えて対等の条件になれば、リーチの長い武器を持つあちらの方が有利になる。
現に剣に灯っている火は一振り毎、時間が経つに最初と比べて勢いは落ちて来ている。
時間は掛けられない、火が消えるまでに決着を付けないとこちらの敗北だ。
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