上 下
92 / 419
ガルド城の秘密

第65話-手掛かり-

しおりを挟む
 持ってきて貰った本のほとんどが読み終わった。結果として今のところ手がかりとなりそうな物は無かった。
 どれもこの城の工事の記録と言ったもので当然ながら秘密の部屋の存在もない。あるのは天候情報と使用した石材木材の目安量と言ったものが予測として書かれていた。
 読むうちに眠たくなるほどの代物で開始早々に私としては魔法への興味が薄れていっているのが分かる。

「次に行きましょうユリ。普通の記録でしかないわ」
「当然と言えば当然なのですが。そうですね次に行きましょう」

 最後の4冊目を手に取った。3冊目の終わり辺りで城が完成。そこからは城をベースに庭となる場所への囲いを作る作業に入っていた。

「『城を中心にバレス=ガルドが指示する場所までの4点を計測、距離を測り4点を繋ぐように円上に囲いを引いた』ねぇ。それであの広い広い庭になったのね。適当だと思ってたけどそうでも無いのね」
「その4点を測るために最初に見渡すための城を建てたとも考えられますね」
「そこまで深い意味があるのかしらね」
「あくまで推測考えですよフランソワ様」
「このバレスさんって人がこの城を立てて、魔法が使えたと言われた人なのよね」
「そうなりますね。どうかしたんですか?」

 私は昨日父に言われた事を思い出した。『頭がいい人』の知識が魔法に見えたのではないか、そう言っていた。真実は分からないがこのバレスという人自体を知らないと先に進めないような気はした。
 今資料に出てくるバレスは少なくとも魔法という物を使っていない。だからなんだか引っ掛かった。

「本当に魔法が使えたのなら魔法で城を建てるとかしなかったのかしら。やってることが原始的な気がするのよ。時代相応と言うかなんと言うか」
「言われてみればそうですが……。魔法を人に見せなかったとかでは?」
「それなら1人でこっそり城を建てればいいじゃない」

 言った私も、言われたユリも2人で頭を抱えた。
 そう思うと父の言葉通りにこの時代ではあり得なかった知識、発送が魔法と言われた説が私の中で濃厚になってくる。つまりこの城にある技術とは昔の発明品の設計図なのではないかと勘繰ってしまう。

「あのー。今『魔法』って言われましたか?」
「ひゃっ!?」

 突然背後から声をかけられて2人であられもない声を出してしまった。
 こっちにくる気配もなく、背後に立っていた気配すらも抱かせないチェルさんのスニーキングスキルに驚いた。

「すみません。驚かせてしまいましたか」
「き、気付かなくてすみません」
「お気になさらずにー。それでもしかして『魔法』に関する資料をお探しで?」
「えっ!? あるんですか?」
「1枚だけですがありますよー。てっきり自由研究で城の歴史を調べにきたのかと思いまして」

 子どもだしね。そう思われても仕方がない。

「こちらですよ。この1枚だけです」
「何故この1枚をチェルさんが?」
「元々はその4冊目の最後に挟んであったもので、ただ挟んだままでは傷んでいくばかりでしたので、城主に相談したら私が持っておくようにと言われまして。『魔法』について調べる人が来たら見せるようにと言われておりましたのでー」
「他にも調べにくる人がいるんですか?」
「居たり居なかったりですね」

 つまり私達以外にも『魔法』を探しに来ている人がいる。チェルさんが把握してると言うことはつまりこの札を持っている人。この資料室へガルド公が誘導していると言うことになる。

「今年は他に居ませんか?」
「いませんねー」
「去年は?」
「いましたよー」
「何て言う人でしたか?」
「名前は聞いていません。ただ男の人でした」
「フランソワ様? どうしたんですか急に?」
「もしかしたら去年私達のように探しに来てた人がいてその人が『魔法』の正体をつかめてなくても、手がかりとかある程度持ってないかと思った。だからその人と話してみたいなって」

 0から集めるよりかははるかに効率的だ。仮に何も掴んでなくも、去年調べた事を除外すれば当たる件数を減らすことができる。

「特徴とかも覚えてませんか?」
「身体が大きかったような気はします。それと少しおっかなかった気がしますねー。同じ人は基本来ないので毎回覚えていたらキリがないので分かりませんねー」
「そうですか。ありがとうございました。また何か思い出したらまた教えて下さい。それと資料ありがとうございました。この1枚読んでみます」
「そしたら成り立ちは置いておいて下さい。後で片付けますのでー」

 呑気な言葉と共にチェルさんは元いた席に戻っていった。
 私とユリは気を取り直して受け取った1枚に目を通した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

煩悩まみれなのが推しに駄々漏れで聖女失格です?

カギカッコ「」
恋愛
【第一章完結】ですがまだ続きます。小説のキャラである青年セオドアを生涯推して孫までこさえた人生を終えたあたし。しかし何のご褒美か推しのセオドア――セオ様が実在する世界に転生した。アリエルという女として。前世を思い出したのは十代半ば。しかも聖なる力までが開花して聖女になった。聖女として国王陛下でもあるセオ様と接しながら彼への脳内妄想を募らせていたある日、あたしの煩悩が彼に筒抜けだと彼本人から告げられて絶望した。そんなところから始まる聖女ライフ。 編集して途中までを第一章にしました。非公開にした後の部分も編集してそのうち第二章としてまとめようと思います。

お幸せに、婚約者様。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

殿下、そんなつもりではなかったんです!

橋本彩里(Ayari)
恋愛
常に金欠である侯爵家長女のリリエンに舞い込んできた仕事は、女性に興味を示さない第五皇子であるエルドレッドに興味を持たせること。 今まで送り込まれてきた女性もことごとく追い払ってきた難攻不落を相手にしたリリエンの秘策は思わぬ方向に転び……。 その気にさせた責任? そんなものは知りません! イラストは友人絵師kouma.に描いてもらいました。 5話の短いお話です。

転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛
恋愛
食事のあまりの不味さに前世を思い出した私。 水洗トイレにシステムキッチン。テレビもラジオもスマホある日本。異世界転生じゃなかったわ。 と、思っていたらなんか可笑しいぞ? なんか視線の先には、男性ばかり。 そう、ここは男女比8:2の滅び間近な世界だったのです。 人口減少によって様々なことが効率化された世界。その一環による食事の効率化。 料理とは非効率的な家事であり、非効率的な栄養摂取方法になっていた…。 お、美味しいご飯が食べたい…! え、そんなことより、恋でもして子ども産め? うるせぇ!そんなことより美味しいご飯だ!!!

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

処理中です...