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ガルド城の秘密
第55話-再会-
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会場の大窓から外に飛び出ているテラス。いくつも数あるテラス。その中から無人のテラスを見つけて飲み物を片手に外に出た。
中の空気とはまた違い、外の少し冷たい空気が直に私の頬を冷ました。中も暑くはないけど、人の熱気でどうしても暑さを感じてしまう。加えて立ちっぱなしだと疲れも相まって疲労感が凄まじかった。
会場の空気は私が外に出たくらいでは特に変わらず、みんな話を続けている。去年までフランソワが嫌がっていた気持ちが少しわかってきた。子どもにはそれ程楽しいイベントではないみたい。特に真面目なあの両親の傍らではゆっくりも出来なかったんじゃいだろうか。
私としても楽しくないわけではないけど、くたびれてしまう。
持ってきた飲み物を口に含むと爽やかな酸味が私の疲労感を少し和らげてくれたような気分になった。
「あの、もしかしてフランソワ様ではありませんか?」
突然の問いかけにびっくりして飲み物の入った器を落としそうになった。
振り返るとそこに居たのは肩まである綺麗な艶のある髪が目を引く少女だ。青いドレスが彼女の持つ鮮やかな魅力を引き出している。スタイルも良い。文句の付け所のない令嬢と呼ばれるべく存在が私の前に現れた。
問題はこの令嬢がフランソワのいつの知り合いかと言うことだ。それがさっぱり分からない。だからこそ探るように彼女の問いに答えた。
「そうよ。私がフランソワ=ソボール。間違いないわ。あなたとは久しぶりね」
昨日今日の反省を活かして私の知っているフランソワで答えを返した。
「なんだか、少し会われないうちに変わられましたね」
そう言って彼女は笑った。
「裏目に出たー!」と内心泣きつつも表情を崩さないように彼女との会話に戻る。
「いつもこんな感じだったと思うのだけれど、思い違いじゃないの?」
「いえ、そんなことはありませんよ。だって初めて学院で会った時は私のために怒ってくれたじゃないですか」
頭の中に「?」マークが乱立した。学院と言われると言われると多分交流会の時だ。その時に私はこの子に会ったらしい。全く覚えがない。
「あぁ。これは失礼しました。この格好だと分かりませんよねフランソワ様」
私の焦りを見て察してくれたのか髪を纏めて手で後ろに結い上げた。そして前髪をセンターで分ける。その顔は私もよく知っている顔だった。
「あなた……ユリ!?」
「やっぱり分かりませんよね。そうです学院でお会いしたユリ=ランです」
そう言って笑顔でこちらに微笑みかけてくるのは間違いなく、騎士を目指す学校の紅一点の騎士ユリだった。
中の空気とはまた違い、外の少し冷たい空気が直に私の頬を冷ました。中も暑くはないけど、人の熱気でどうしても暑さを感じてしまう。加えて立ちっぱなしだと疲れも相まって疲労感が凄まじかった。
会場の空気は私が外に出たくらいでは特に変わらず、みんな話を続けている。去年までフランソワが嫌がっていた気持ちが少しわかってきた。子どもにはそれ程楽しいイベントではないみたい。特に真面目なあの両親の傍らではゆっくりも出来なかったんじゃいだろうか。
私としても楽しくないわけではないけど、くたびれてしまう。
持ってきた飲み物を口に含むと爽やかな酸味が私の疲労感を少し和らげてくれたような気分になった。
「あの、もしかしてフランソワ様ではありませんか?」
突然の問いかけにびっくりして飲み物の入った器を落としそうになった。
振り返るとそこに居たのは肩まである綺麗な艶のある髪が目を引く少女だ。青いドレスが彼女の持つ鮮やかな魅力を引き出している。スタイルも良い。文句の付け所のない令嬢と呼ばれるべく存在が私の前に現れた。
問題はこの令嬢がフランソワのいつの知り合いかと言うことだ。それがさっぱり分からない。だからこそ探るように彼女の問いに答えた。
「そうよ。私がフランソワ=ソボール。間違いないわ。あなたとは久しぶりね」
昨日今日の反省を活かして私の知っているフランソワで答えを返した。
「なんだか、少し会われないうちに変わられましたね」
そう言って彼女は笑った。
「裏目に出たー!」と内心泣きつつも表情を崩さないように彼女との会話に戻る。
「いつもこんな感じだったと思うのだけれど、思い違いじゃないの?」
「いえ、そんなことはありませんよ。だって初めて学院で会った時は私のために怒ってくれたじゃないですか」
頭の中に「?」マークが乱立した。学院と言われると言われると多分交流会の時だ。その時に私はこの子に会ったらしい。全く覚えがない。
「あぁ。これは失礼しました。この格好だと分かりませんよねフランソワ様」
私の焦りを見て察してくれたのか髪を纏めて手で後ろに結い上げた。そして前髪をセンターで分ける。その顔は私もよく知っている顔だった。
「あなた……ユリ!?」
「やっぱり分かりませんよね。そうです学院でお会いしたユリ=ランです」
そう言って笑顔でこちらに微笑みかけてくるのは間違いなく、騎士を目指す学校の紅一点の騎士ユリだった。
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