66 / 419
白と黒の騎士
第41話-決着-
しおりを挟む
自分の周りを見渡して手頃の石を拾った。小さすぎず、私の手のひらで包めて、適度な大きさのあるものを拾って建物の陰から飛び出して構えた。
私だってキャッチボール位はしたことがある。後はこのフランソワの腕の力を信じて投げるのみ。
狙うは身体。倒すためじゃない、こっちに注意を引き付けるための石つぶてだ。面積の広い身体に向かって投げる。
「せーのぉぉぉ」
掛け声と共に思いっきり渾身の力で石を投げた。直線的な軌道で石は大男の方に飛んでいく。掛け声に気づいて大男がこっちを向いた瞬間に石が直撃した。
狙った位置よりも高い場所に飛んで行った石は見事に男の顔に吸い込まれるかのようにヒットした。「ノーコンでも当たったから問題なし! よっしゃあ!」と思わずガッツポーズを決める。
「ヤン! これ使って!」
懐から短刀を取り出してヤンに向かって今度は低く投げた。勢いもそんなにつけずにヤンの前に落ちるように。
突然のフランソワの行動に目が覚める。
あいつがこんな危ない場所で勇気出して出てきてんのに何諦めてんだよ俺。
右手は使えない、左手はまだ動く。それでもこれは2回目の勝機だ。次は逃さない。
キースはまだ顔を押さえて痛がっている、フランソワの投げてきた剣に飛びついて革鞘を外して左手で構える。
なんでこの見慣れた短刀をフランソワが持っているのか、思う点はあっても今は後回しだ。目の前のキースに集中する。
短刀がキースの体を引き裂いた。慣れない左手と右手の痛みで深い1撃は入れられていないにしても手数で圧倒するしかない。
1撃入れたところでキースは顔を押さえたまま、左手で内側に仕込んでいた短刀を持ちだして構える。
こっちの攻め手に対して防御して刃を徹底的に防いでくる。それでもこの時間が勝負の分かれ目だ。こっちは片手しか動かせない。キースは今は顔を押さえているがそれももう少しで解放されるだろう。だから息の続く限り左手を振るう。
次第に相手の防御をすり抜けて体に浅い1撃が刻まれていく。それにつれてキースの動きが鈍くなっていく。押せるこのまま行けば相手が先に倒れる。
「ふざけんあぁぁぁぁ」
咆哮と共にキースの顔を押さえていた腕が解放された。そのまま懐の短刀に手を伸ばす。だが、その一瞬の隙を見逃さない。いや、狙っていた。絶対に目の前以外に注意が向く瞬間を。
出せる力を全て右足に乗せて踏み込む、体全体で左手を振るって勢いつけた1撃。それは今の俺に出せる全力の1撃。それをキースにぶつける。
防御は間に合わない。キースにつけた傷から血が舞う。
「お前も終わりだろぉぉぉ。調子に乗んなぁぁ! お前だけでもなぁ!」
キースの右腕が俺の左肩をつかんだ。振り払おうにも力の入り方が尋常じゃない。最後のふり絞った力だ。せめて最後に俺だけでも殺す。その意思がはっきりとしている。
左手の短刀が弱々しく俺をめがけて振り下ろされた。
鮮血が宙に舞った。雨が舞った血を一緒に俺に叩きつけてきた。
私だってキャッチボール位はしたことがある。後はこのフランソワの腕の力を信じて投げるのみ。
狙うは身体。倒すためじゃない、こっちに注意を引き付けるための石つぶてだ。面積の広い身体に向かって投げる。
「せーのぉぉぉ」
掛け声と共に思いっきり渾身の力で石を投げた。直線的な軌道で石は大男の方に飛んでいく。掛け声に気づいて大男がこっちを向いた瞬間に石が直撃した。
狙った位置よりも高い場所に飛んで行った石は見事に男の顔に吸い込まれるかのようにヒットした。「ノーコンでも当たったから問題なし! よっしゃあ!」と思わずガッツポーズを決める。
「ヤン! これ使って!」
懐から短刀を取り出してヤンに向かって今度は低く投げた。勢いもそんなにつけずにヤンの前に落ちるように。
突然のフランソワの行動に目が覚める。
あいつがこんな危ない場所で勇気出して出てきてんのに何諦めてんだよ俺。
右手は使えない、左手はまだ動く。それでもこれは2回目の勝機だ。次は逃さない。
キースはまだ顔を押さえて痛がっている、フランソワの投げてきた剣に飛びついて革鞘を外して左手で構える。
なんでこの見慣れた短刀をフランソワが持っているのか、思う点はあっても今は後回しだ。目の前のキースに集中する。
短刀がキースの体を引き裂いた。慣れない左手と右手の痛みで深い1撃は入れられていないにしても手数で圧倒するしかない。
1撃入れたところでキースは顔を押さえたまま、左手で内側に仕込んでいた短刀を持ちだして構える。
こっちの攻め手に対して防御して刃を徹底的に防いでくる。それでもこの時間が勝負の分かれ目だ。こっちは片手しか動かせない。キースは今は顔を押さえているがそれももう少しで解放されるだろう。だから息の続く限り左手を振るう。
次第に相手の防御をすり抜けて体に浅い1撃が刻まれていく。それにつれてキースの動きが鈍くなっていく。押せるこのまま行けば相手が先に倒れる。
「ふざけんあぁぁぁぁ」
咆哮と共にキースの顔を押さえていた腕が解放された。そのまま懐の短刀に手を伸ばす。だが、その一瞬の隙を見逃さない。いや、狙っていた。絶対に目の前以外に注意が向く瞬間を。
出せる力を全て右足に乗せて踏み込む、体全体で左手を振るって勢いつけた1撃。それは今の俺に出せる全力の1撃。それをキースにぶつける。
防御は間に合わない。キースにつけた傷から血が舞う。
「お前も終わりだろぉぉぉ。調子に乗んなぁぁ! お前だけでもなぁ!」
キースの右腕が俺の左肩をつかんだ。振り払おうにも力の入り方が尋常じゃない。最後のふり絞った力だ。せめて最後に俺だけでも殺す。その意思がはっきりとしている。
左手の短刀が弱々しく俺をめがけて振り下ろされた。
鮮血が宙に舞った。雨が舞った血を一緒に俺に叩きつけてきた。
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の現場に遭遇した悪役公爵令嬢の父親は激怒する
白バリン
ファンタジー
田中哲朗は日本で働く一児の父であり、定年も近づいていた人間である。
ある日、部下や娘が最近ハマっている乙女ゲームの内容を教えてもらった。
理解のできないことが多かったが、悪役令嬢が9歳と17歳の時に婚約破棄されるという内容が妙に耳に残った。
「娘が婚約破棄なんてされたらたまらんよなあ」と妻と話していた。
翌日、田中はまさに悪役公爵令嬢の父親としてゲームの世界に入ってしまった。
数日後、天使のような9歳の愛娘アリーシャが一方的に断罪され婚約破棄を宣言される現場に遭遇する。
それでも気丈に振る舞う娘への酷い仕打ちに我慢ならず、娘をあざけり笑った者たちをみな許さないと強く決意した。
田中は奮闘し、ゲームのガバガバ設定を逆手にとってヒロインよりも先取りして地球の科学技術を導入し、時代を一挙に進めさせる。
やがて訪れるであろう二度目の婚約破棄にどう回避して立ち向かうか、そして娘を泣かせた者たちへの復讐はどのような形で果たされるのか。
他サイトでも公開中
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します
たぬきち25番
ファンタジー
*『第16回ファンタジー小説大賞【大賞】・【読者賞】W受賞』
*書籍化2024年9月下旬発売
※書籍化の関係で1章が近日中にレンタルに切り替わりますことをご報告いたします。
彼氏にフラれた直後に異世界転生。気が付くと、ラノベの中の悪役令嬢クローディアになっていた。すでに周りからの評判は最悪なのに、王太子の婚約者。しかも政略結婚なので婚約解消不可?!
王太子は主人公と熱愛中。私は結婚前からお飾りの王太子妃決定。さらに、私は王太子妃として鬼の公爵子息がお目付け役に……。
しかも、私……ざまぁ対象!!
ざまぁ回避のために、なんやかんや大忙しです!!
※【感想欄について】感想ありがとうございます。皆様にお知らせとお願いです。
感想欄は多くの方が読まれますので、過激または攻撃的な発言、乱暴な言葉遣い、ポジティブ・ネガティブに関わらず他の方のお名前を出した感想、またこの作品は成人指定ではありませんので卑猥だと思われる発言など、読んだ方がお心を痛めたり、不快だと感じるような内容は承認を控えさせて頂きたいと思います。トラブルに発展してしまうと、感想欄を閉じることも検討しなければならなくなりますので、どうかご理解いただければと思います。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
公爵家御令嬢に転生?転生先の努力が報われる世界で可愛いもののために本気出します「えっ?私悪役令嬢なんですか?」
へたまろ
ファンタジー
ここは、とある恋愛ゲームの舞台……かもしれない場所。
主人公は、まったく情報を持たない前世の知識を持っただけの女性。
王子様との婚約、学園での青春、多くの苦難の末に……婚約破棄されて修道院に送られる女の子に転生したただの女性。
修道院に送られる途中で闇に屠られる、可哀そうな……やってたことを考えればさほど可哀そうでも……いや、罰が重すぎる程度の悪役令嬢に転生。
しかし、この女性はそういった予備知識を全く持ってなかった。
だから、そんな筋書きは全く関係なし。
レベルもスキルも魔法もある世界に転生したからにはやることは、一つ!
やれば結果が数字や能力で確実に出せる世界。
そんな世界に生まれ変わったら?
レベル上げ、やらいでか!
持って生まれたスキル?
全言語理解と、鑑定のみですが?
三種の神器?
初心者パック?
肝心の、空間収納が無いなんて……無いなら、努力でどうにかしてやろうじゃないか!
そう、その女性は恋愛ゲームより、王道派ファンタジー。
転生恋愛小説よりも、やりこみチートラノベの愛読者だった!
子供達大好き、みんな友達精神で周りを巻き込むお転婆お嬢様がここに爆誕。
この国の王子の婚約者で、悪役令嬢……らしい? かもしれない?
周囲の反応をよそに、今日もお嬢様は好き勝手やらかす。
周囲を混乱を巻き起こすお嬢様は、平穏無事に王妃になれるのか!
死亡フラグを回避できるのか!
そんなの関係ない!
私は、私の道を行く!
王子に恋しない悪役令嬢は、可愛いものを愛でつつやりたいことをする。
コメディエンヌな彼女の、生涯を綴った物語です。
ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?
ラララキヲ
恋愛
乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。
学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。
でも、ねぇ……?
何故それをわたくしが待たなきゃいけないの?
※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。
◇テンプレ乙女ゲームモノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
私、モブのはずでは?〜嫌われ悪女なのに推しが溺愛してくる〜
皿うどん
恋愛
ある日アデルは婚約者に贈られたブローチを見て、自分がハマっていた乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気がついた。
それも本編前に死ぬ、推しの元婚約者のモブとして。
すぐに婚約解消すれば死なないだろうけれど、ヒロインが婚約者のルートを選ばなければ、婚約者の冤罪は晴らされないままだ。
なんとか婚約者の冤罪を晴らして、死ぬ運命を回避したい!
そのあとは推しとヒロインとの出会いのために身を引くので、今までの浮かれた行動は許してください! 婚約破棄されたら国外へドロンしますので!
と思って行動していたら、周囲と婚約者の態度が変わってきて……。あれ?もしかしてこれって溺愛ってやつ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる