33 / 420
白と黒の騎士
第23話-助けてと叫ぶ-後編
しおりを挟む
「ここには医者なんていねーよ。居るのはもう少しあっちだ。残念だったなぁ」
「私急いでるの。邪魔しないで頂戴。お金が欲しいなら上げるから早くどいて」
「もの分かりいいけどよ、金だけじゃねーだろ。俺たちと部屋の中で遊ぼうや」
「しかし、本当にこんな所に良いとこのお嬢様がいるとは思わなかったな」
「だなぁ。俺の声のかけ方がうまかったんだぜ。俺に感謝しろよな」
2人目の男もこっちに少しずつ近づいてくる。
強がって見たけど内心怖い。どん詰まりで逃げ道はない、目の前には男が2人。足がすくんでいるのが分かる。
「誰か! 助けてください! お願い!」
お腹のそこから声を出した。響いた声は小路の中で反響して想像よりも大きな音がした。それを2回繰り返した。それでも男達の余裕は変わらなかった。
「聞こえてもだれもこねーよ。ここは俺たちの縄張りだ。来たら獲物が2人に増えるだけだしよ」
少しづつ近寄ってくる2人に対して私は前に駈け出した。出せる力を振り絞って全力で走り出す。横をすり抜けるか、ぶつかって体勢を崩して乗り越える。この場面を変えるにはそれしかない。
少しでも細見の男の左側を目指して飛び出す。右足で思いっきり地面を蹴って肩から突っ込む。
「逃げられんよ」
私の右手を男が掴んだ。そのまま引寄せられる。
金的には届かない、そう判断して私は男の脛を思いっきり蹴った。
「このくそ餓鬼が!!」
激高した男が私を投げ飛ばした。受け身も取れずに地面に転がされる。地面のひんやりとした冷たさが手と足を通じて感じられる。
立とうとしても足に力が入らない。だけど痛みはない。「怖い」その感情が私の足に力が入らない理由だ。
「先に大人しくいう事聞くようにしてやるか」
懐から短刀を取り出してこっちに近づいてくる。さっきまで以上に状況が悪くなった。
「嫌、やめて、助けて……。だれか! だれか助けて」
「無駄だってわかんねーかなぁ」
私の心の底から出た感情とさっき以上にどこから出したか分からない声をあざ笑うように男は言う。
蹴りを入れた方は舌打ちをしながらこっちにやってくる。
涙が地面に落ちる。私の我慢の限界だった。もう男たちを睨み付ける気力もない。
「助けてホリナ……」
かろうじて出た言葉はその一言だった。
「おめーら! そこで何してやがる」
この場にはいるはずのない声がした。迫力はあるのに聞きなれた優しい声。
その声の主に2人組の男は視線を向けた。
「だれだてめー。俺たちがだれだか分かってんのか!」
「おめーらこそ誰だ。俺を知らないってことはここらへんの人間じゃねーな」
黒いセミロングの髪に釣り目の顔。間違いない。声の聞き間違いでも幻聴でもなかった。
私は精一杯の声でこの場の空気を変えた人物に助けを求めた。
「助けて! ヤン!」
「私急いでるの。邪魔しないで頂戴。お金が欲しいなら上げるから早くどいて」
「もの分かりいいけどよ、金だけじゃねーだろ。俺たちと部屋の中で遊ぼうや」
「しかし、本当にこんな所に良いとこのお嬢様がいるとは思わなかったな」
「だなぁ。俺の声のかけ方がうまかったんだぜ。俺に感謝しろよな」
2人目の男もこっちに少しずつ近づいてくる。
強がって見たけど内心怖い。どん詰まりで逃げ道はない、目の前には男が2人。足がすくんでいるのが分かる。
「誰か! 助けてください! お願い!」
お腹のそこから声を出した。響いた声は小路の中で反響して想像よりも大きな音がした。それを2回繰り返した。それでも男達の余裕は変わらなかった。
「聞こえてもだれもこねーよ。ここは俺たちの縄張りだ。来たら獲物が2人に増えるだけだしよ」
少しづつ近寄ってくる2人に対して私は前に駈け出した。出せる力を振り絞って全力で走り出す。横をすり抜けるか、ぶつかって体勢を崩して乗り越える。この場面を変えるにはそれしかない。
少しでも細見の男の左側を目指して飛び出す。右足で思いっきり地面を蹴って肩から突っ込む。
「逃げられんよ」
私の右手を男が掴んだ。そのまま引寄せられる。
金的には届かない、そう判断して私は男の脛を思いっきり蹴った。
「このくそ餓鬼が!!」
激高した男が私を投げ飛ばした。受け身も取れずに地面に転がされる。地面のひんやりとした冷たさが手と足を通じて感じられる。
立とうとしても足に力が入らない。だけど痛みはない。「怖い」その感情が私の足に力が入らない理由だ。
「先に大人しくいう事聞くようにしてやるか」
懐から短刀を取り出してこっちに近づいてくる。さっきまで以上に状況が悪くなった。
「嫌、やめて、助けて……。だれか! だれか助けて」
「無駄だってわかんねーかなぁ」
私の心の底から出た感情とさっき以上にどこから出したか分からない声をあざ笑うように男は言う。
蹴りを入れた方は舌打ちをしながらこっちにやってくる。
涙が地面に落ちる。私の我慢の限界だった。もう男たちを睨み付ける気力もない。
「助けてホリナ……」
かろうじて出た言葉はその一言だった。
「おめーら! そこで何してやがる」
この場にはいるはずのない声がした。迫力はあるのに聞きなれた優しい声。
その声の主に2人組の男は視線を向けた。
「だれだてめー。俺たちがだれだか分かってんのか!」
「おめーらこそ誰だ。俺を知らないってことはここらへんの人間じゃねーな」
黒いセミロングの髪に釣り目の顔。間違いない。声の聞き間違いでも幻聴でもなかった。
私は精一杯の声でこの場の空気を変えた人物に助けを求めた。
「助けて! ヤン!」
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
転生悪役令嬢の前途多難な没落計画
一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。
私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。
攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって?
私は、執事攻略に勤しみますわ!!
っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。
※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる