上 下
1 / 420
目が覚めたらゲームの世界!?

プロローグ

しおりを挟む
 目が覚めて、最初に目に飛び込んできたものはファンタジーの世界に出てくるような天蓋の一部だった。夢でも見ているのかと錯覚を覚える。左には大きな窓があって、太陽の陽が部屋の中を照らしていて、右にはドレッサーや、自宅には大きすぎる洋テーブル。
 そんな見たことのない部屋の光景にやっぱり自分が夢の中にいるのだと再認識した。もう一度寝よう。起きたらまた嫌な残業続きの仕事に行く現実が待っている。

「フランソワお嬢様。そろそろ起きていただくお時間になります」
 
 ドアの外から女性の声がした。丁寧な口調にお嬢様と呼ばれるのはなんとも幸福な気分になる。
 こちらの返事がなかったからか声の主がドアを開けてこちらに寄ってくる。

「フランソワお嬢様。珍しく起きてこられないのですが、具合でも悪いのでしょうか?」

 目じりを下げて心配そうに顔を覗き込んでくるメイド姿の女性。可愛い系で合コンにいたら男相手を虜にできそうな甘い笑顔が似合いそう。思わず彼女の頬に手を伸ばしてしまう。

「えへっ。可愛いやんけぇ……」
「どうやら体調が悪いようですね。学院の方には連絡してお休みに致しましょう」

 そう言い残して部屋を出ていった。一瞬の事だったが、目が覚めてしまった。
 夢の中でここまで自分の意思がはっきりしているのは初めてだ。ならこの夢を堪能しないともったいない。
 目を擦って、ベッドから降りて窓の方へ向かう。日差しが寝ぼけた頭と視界を明瞭にしていく。眼前に広がる噴水のある大きく広がった庭。ここはどんな設定なのか。
 設定と言うと頭に引っかかる言葉があった『フランソワお嬢様』その名前は乙女ゲーム『白銀の騎士物語』に出てくるキャラの名前だ。
 昔やりこんだゲームの設定が夢になるとは……。相当現状に不満があったのかもしれない。

「さて。とりあえず状況整理しよか」

 明かりをつけて部屋の中を見渡す。現実では見た事もない装飾に広い部屋。見たことあるのはゲームの中でだ。
 ほっぺを三回両手で思いっきり叩いた。まだ少しまどろみの中にいた頭がさえてくるのと同時に、痛みが走る。

「えぇ……。これリアルなの……?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

ドラゴンなのに飛べません!〜しかし他のドラゴンの500倍の強さ♪規格外ですが、愛されてます♪〜

藤*鳳
ファンタジー
 人間としての寿命を終えて、生まれ変わった先が...。 なんと異世界で、しかもドラゴンの子供だった。 しかしドラゴンの中でも小柄で、翼も小さいため空を飛ぶことができない。 しかも断片的にだが、前世の記憶もあったのだ。 人としての人生を終えて、次はドラゴンの子供として生まれた主人公。 色んなハンデを持ちつつも、今度はどんな人生を送る事ができるのでしょうか?

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。そして……

久遠 れんり
ファンタジー
五歳を過ぎたあたりから、体調を壊し始めた弟。 お医者さんに診断を受けると、自家性魔力中毒症と診断される。 「大体、二十までは生きられないでしょう」 「ふざけるな。何か治療をする方法はないのか?」 その日は、なにも言わず。 ただ首を振って帰った医者だが、数日後にやって来る。 『精霊種の住まう森にフォビドゥンフルーツなるものが存在する。これすなわち万病を癒やす霊薬なり』 こんな事を書いた書物があったようだ。 だが、親を含めて、大人達はそれを信じない。 「あての無い旅など無謀だ」 そう言って。 「でも僕は、フィラデルを救ってみせる」 そして僕は、それを求めて旅に出る。 村を出るときに付いてきた幼馴染み達。 アシュアスと、友人達。 今五人の冒険が始まった。 全くシリアスではありません。 五人は全員、村の外に出るとチートです。ご注意ください。 この物語は、演出として、飲酒や喫煙、禁止薬物の使用、暴力行為等書かれていますが、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。またこの物語はフィクションです。実在の人物や団体、事件などとは関係ありません。

家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~

りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。 ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。 我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。 ――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。 「はい、では平民になります」 虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...