上 下
528 / 680

深緑の森!

しおりを挟む
「千春、目を覚ましそうだぞ。」
 ルプは猫の精霊ケットシーを見ながら教えると、千春はケットシーをのぞき込む。

「猫さーん。」
「なんにゃ?」
「ミタマじゃなーい。」
 千春と頼子がのぞき込み、その後ろからテールカとアルデア、横にはルプ達も居る。

「ん~・・・。」
 ケットシーはうっすらと目を開けると・・・

「ぎゃぁぁ!!!!!!」
「あ、おきた、おはよう猫さん。」
「え!?へ!?」
 皆がのぞき込んでくる、ケットシーは怯えながら声を出す。

「だれ?どこ?なに?」
「私はチハル、ここはジブラロール、石になってたよ?君。」
「あ!魔女は!?」
「まじょ?お母様?」
「おまえ!魔女の娘か!!!」
「千春、その魔女とコイツの言う魔女は違うだろ。」
「まぁそうだよね。」
 驚きの顔から怒りに、そしてルプの言葉にキョトンとした顔になるケットシー。

コンコン

「あ、魔女来ましたよぉ?」
 モリアンは気配でマルグリットが来た事に気付くと、扉を開ける。

ガシッ!!!

「だ~れが魔女かしら?モリアンちゃぁ~ん?」
「もうしわけございm!!!いたいいたいいたい!!!」
 アイアンクローをされたままもがくモリアン、マルグリットはニッコリ微笑みながら圧を掛ける。

「遅くなっちゃったわね・・・何してるの?」
 マルグリットはモリアンの顔から手を離すと千春に声を掛ける。

「なんか石化したケットシー?猫ちゃんをアイトネにほにゃららしてもらって今起きた所なんですよ。」
「あら、珍しい、猫の精霊じゃない。」
「知ってるんですか?」
「えぇ、昔遺跡の守り人をしている猫の精霊に会った事があるわ。」
 ケットシーは近寄るマルグリットに怯える。

「・・・なんでこんなに怯えてるの?」
「さぁ?・・・あ、そう言えば魔女は!?って言ってました。」
「魔女?」
 チラッとモリアンを見るマルグリット。

「メグ、この子石化した事有る?」
 アルデアが楽しそうに問いかける。

「有るわけ無いでしょう?石化の魔法は土魔法と精霊魔法の複合魔法よ、私には出来ないわ。」
「・・・あれ?精霊魔法って。」
 頼子が思い出しながら話す。

「そうえばレナが練習してたよね、それに精霊の涙に精霊が魔力入れたら使えるとかドライアドさん言ってたような。」
「って事はレナは石化魔法出来るって事ぉ?」
「魔女じゃん。」
「やっぱりお前達魔女の仲間か!」
 ケットシーがまた怒り出す。

「違うよー、落ち着きなー?」
「そうそう、それに猫ちゃんの石化解いたんだよ?」
「石化?はっ!あの魔法!」
 何かを思い出したケットシーは悔しそうな顔をし俯く。

「さてと、あ、お母様いらっしゃい!ご飯できてますよ♪」
「ありがとうチハル。」
 微笑むマルグリットは席に移動する。

「猫ちゃんもご飯食べる?」
「猫っていうな!僕はデンハ・ニード・ワーフだ!」
「へぇ、で、ご飯食べる?」
 スンスンと匂いを嗅ぐケットシーのデンハ、そしてお腹が鳴る。

キュゥゥゥ

「・・・たべる。」
 デンハがそう言うと宙に浮く、ルプが襟首を掴み持ち上げた。

「ほれ、そのクッションは俺の場所だ、起きたならこっちに座れ。」
「ひっ!?」
 狼男姿のルプに持ち上げられ怯えるデンハ。

「ルプ、もうちょ~っと優しくしてあげな~?」
「優しいだろ?」
 ぽんっと椅子に座らせるルプ、横にはビェリーとロイロ、そして三珠が座っている。

「わっちはビェリー、よろしくばい。」
「儂はロイロじゃ、ほれ!お前も一杯行くか?ん?」
「猫仲間にゃー、吾輩は三珠よろしくにゃー。」
「俺はルプだ、お前酒呑めるか?」
「・・・で・・・で・・・デンハです。」
 ペット達は挨拶が終わると何故か乾杯して酒を呑みだす。

「あれ生きてたんだね。」
 事の成り行きを見ていた大樹が呟く。

「まぁ人助け出来たなら持ってきたかいがあったな。」
 勇も楽し気に見ていた。

「猫ちゃん魔女に石化されたの?」
「そうです・・・。」
 デンハは目の前のすき焼きを見ながら答える。

「ほれ、熱いから気を付けろ。」
 ルプは肉を器に入れるとデンハに渡す。

「ありがとう、狼・・・えっと。」
「ルプだ。」
「ルプさん。」
「ルプで良いぞ。」
「それで?何処の魔女に?」
「深緑の森です・・・あっつぅい!」
「あ、食べてからでいいよ、ゆっくりたべなー?」
 デンハに言うと千春もすき焼きを食べ始めた。


---------------


「で?」
「はい、深緑の森の魔女が僕を捕まえて逃げようとしたんですが、石にされてしまったようです。」
 食事が終わり、話を聞く千春達。

「お母様知ってます?深緑の森。」
「聞いた事有るわね、何処だったかしら。」
『人が言う深緑の森なら北の方に有るわよ?』
「あ、そうそう、あの国の近くね。」
「あの国?」
「そ、ファスケスよ。」
「・・・あー!あの!ノースちゃん送り込んできた国!」
 思わず大声で言う千春にデンハは毛を逆立て尻尾がぶわっと広がる。

「あ、ごめんごめん、で、なんで石にされたの?」
「わかりません。」
「なんでだろ、アイトネわかる?」
『流石に分からないわー、本人に聞けばわかるんじゃない?』
「本人って何処に居るの?」
『それも流石に分からないわ、この子の記憶を覗いても顔が見えないのよね。』
「そっかぁ。」
「ねぇ、千春。」
「何?ヨリ。」
「なんで捕まえたか知るのって必要?」
「・・・いや?必要じゃないね。」
「んじゃ別によくね?捕まえて罰与えるわけじゃないでしょ?」
 頼子は三珠を捕まえソファーに座ると三珠を膝に乗せる。

「猫ちゃんの家も深緑の森?1人で帰れる?」
「はい、ココからどれくらい離れてるのですか?」
「え~っと、馬車で1ヶ月?2か月?結構かかるはずだよ。」
「・・・それくらいなら。」
「それくらい・・・で済む距離なんだ、ロイロー、ドラゴンで送ったら早い?」
「のんびり行っていいなら片道2日も掛からんぞ。」
「2日かー、ファスケスにフェアリーリング有ればなー。」
「チハル、ファスケスは止めておきなさい。」
 話を聞いていたマルグリットが声を掛ける。

「あ、ヤバいです?」
「例の件はモート様が処理して下さったから大丈夫だけれど、他の貴族も危険かもしれないわ。」
「あー、そっかぁ。」
「あれ?ファスケスって国と教国って近いんじゃなかった?」
 頼子がふと思い出し千春に問いかける。

「あ、言ってた言ってた!教国ならフェアリーリングあるわ!リリが作ったもん!」
「それで?行くの?」
 マルグリットは苦笑いで言う。

「教国久しぶりに行きたいですねぇ。」
「そうなの?」
「はい!色々な豆が有るんですよ、そろそろ補充したかったのと、あと鰻!」
「あー、アレおいしかったねー。」
「ね!久しぶりに鰻食べたい!」
 既に千春の口は鰻になっていた。

「あとバニラも欲しいんだよねぇ。」
「そういや見つけてたね、バニラの豆。」
「餡子にバニラ、そして鰻!久しぶりに教国満喫したい!」
『教国行くなら送るわよ!』
 アイトネが千春の言葉に反応する。

「よし、教国行こう!」
「おー!・・・っていつ行くのさ。」
「あ、もう遅いし明日かな。」
「んじゃ美桜達もよぶべぇ~。」
 頼子はLIMEで連絡を取る、当たり前の様に秒で行くと返事が返って来る。

「おかぁさん!鰻食べるでしょ!」
「良いわねぇ鰻、タイちゃんも行く?」
「いや、一度領地に戻るから、千春お土産よろしく!」
「了解!パパさん達の分は任せて!」
 千春達はそう言うと明日の準備を始めた。


---------------


「えっとぉ。」
「デンハ、大丈夫だ。」
 ルプはデンハの頭に手を置き呟く。

「忘れられとるねぇ。」
「目的が変わっとるのぅ。」
「いつもの事にゃ。」
「ま、教国まで行けば儂が飛んで送ってやるわ。」
「そやね、わっちらで送り届けても構わんやろ。」
「いや、流石に思い出すだろ、デンハを送る事くらい。」
 ペット達は千春達を見ながら呟く。

「私も忘れられてるわ~。」
 テールカはアルデアとお茶を飲みながら呟く。

「教国ね~、テールカ行ってみる?」
「行ってみたいけど・・・私が行っても大丈夫かしら?」
「大丈夫でしょ?アイトネ様居るし、私も一緒に行ってあげるわよ。」
「アルデア様が一緒なら心強いです。」
 ワイワイと準備をする千春達を、ペット達とアルデア、テールカは生暖かい目で見守った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

【完結】限界離婚

仲 奈華 (nakanaka)
大衆娯楽
もう限界だ。 「離婚してください」 丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。 丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。 丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。 広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。 出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。 平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。 信じていた家族の形が崩れていく。 倒されたのは誰のせい? 倒れた達磨は再び起き上がる。 丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。 丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。 丸田 京香…66歳。半年前に退職した。 丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。 丸田 鈴奈…33歳。 丸田 勇太…3歳。 丸田 文…82歳。専業主婦。 麗奈…広一が定期的に会っている女。 ※7月13日初回完結 ※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。 ※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。 ※7月22日第2章完結。 ※カクヨムにも投稿しています。

魔法の盟約~深愛なるつがいに愛されて~

南方まいこ
BL
西の大陸は魔法使いだけが住むことを許された魔法大陸であり、王国ベルヴィルを中心とした五属性によって成り立っていた。 風魔法の使い手であるイリラノス家では、男でも子が宿せる受巣(じゅそう)持ちが稀に生まれることがあり、その場合、王家との長きに渡る盟約で国王陛下の側妻として王宮入りが義務付けられていた。 ただ、子が生める体とはいえ、滅多に受胎すことはなく、歴代の祖先の中でも片手で数える程度しか記録が無かった。 しかも、受巣持ちは体内に魔力が封印されており、子を生まない限り魔法を唱えても発動せず、当人にしてみれば厄介な物だった。 数百年ぶりに生まれた受巣持ちのリュシアは、陛下への贈り物として大切に育てられ、ようやく側妻として宮入りをする時がやって来たが、宮入前に王妃の専属侍女に『懐妊』、つまり妊娠することだけは避けて欲しいと念を押されてしまう。 元々、滅多なことがない限り妊娠は難しいと聞かされているだけに、リュシアも大丈夫だと安心していた。けれど――。

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

処理中です...