上 下
490 / 680

千春の誕生日!⓫

しおりを挟む
「だぁぁ!づがれだぁ!」
「お疲れ千春~♪」
「やっと終わったねー。」
 ワイワイと騒ぐJK軍団、顔見知りばかりとは言え、お祝いに駆け付けた貴族達に愛想を振りまきまくった千春は、グッタリとソファーに倒れ込む。

「ほら、チーちゃん着物に皺が寄るよ。」
「はぁぁい。」
 文恵に言われ千春は姿勢を正す。

「はいチハル。」
 サフィーナはお茶を淹れると千春に渡す、千春は美味しそうに喉を潤す。

「あとは身内とお友達からのプレゼントね。」
「うん、やっと気を使わなくて良いよぉ。」
 サフィーナに言われ千春は微笑む、するとルクレツィアが嬉しそうにやって来た。

「チハルちゃんお誕生日おめでとう♪」
「ルクレツィアさん!ありがとー!」
「あら、疲れてるわねぇ。」
「嬉しいから大丈夫!」
「そう?私からのプレゼントよ。」
 ルクレツィアはユラの時と同じ様にドラゴンの鱗で髪飾りを作っていた。

「あらあら、こっちの髪飾りかい?」
「えぇ、私の氏族で良く作る髪飾りです。」
 ルクレツィアは文恵に説明する、髪飾りはかんざしの様に一本の棒になっている、そして先の部分には細かい細工がしてあった。

「着物にも合いそうだね、チーちゃんおいで。」
 文恵は軽く結った千春の髪を纏めるとかんざしを挿す。

「うん、似合うね。」
「ありがとうおばぁちゃん、ルクレツィアさん。」
「いいえ♪よく似合ってるわ♪」
 嬉しそうにルクレツィアは答える。

「次は私ね。」
 アルデアが千春の所にやってくる。

「はい、チハル。」
「うわぁこれネックレス?」
「えぇ、血玉のネックレスよ。」
「血!?」
「血みたいな真っ赤な石の事よ、血で出来てるわけじゃないわよ。」
「びっくりしたぁ、ありがとう!」
 アルデアにお礼を言うと次はユラだ。

「チハルおねぇちゃんはいこれ!」
「わー!ルプだ!」
「うん!」
「これユラが作ったの?」
「このね!めとね!わたをつめたの!」
「おー!すごいねー!」
 ユラの後ろにはコラリーとドロテが嬉しそうに立っていた、千春は2人にもお礼を言う。

「チハルお姉様、僕とフィンレーからです。」
 第二王子ライリーと、第三王子フィンレーが2人並び千春に箱を渡す。

「あけていい?」
「はい。」
「はい!」
 2人はニッコリ笑うと千春は箱を開ける。

「うわ、良い匂い!」
 千春は箱を開けると花の香が漂う。

「庭にある薔薇で香水を作りました。」
「手作りなの!?」
「魔法で作りました。」
「凄いね、ありがとう、大事に使うね♪」
 2人にお礼を言う千春、そして後ろに国王陛下エイダンが待ち構える。

「うぉっほん・・・チハル・・・気に入るかどうか分らぬのじゃが。」
 エイダンは少し申し訳なさそうに呟くと千春に箱を渡す。

「開けて良いんですか?」
「うむ。」
 千春は箱を開ける、中には綺麗なクラウンティアラが入っていた。

「うぁぁ!凄い!」
「チハルは次期王妃じゃからな、もしよければ受け取ってくれ。」
「有難うございますお父様。」
 ポリポリと頬を掻くエイダン、千春は満面の笑みでお礼を言う。

「お父様が最後かな?」
「まだ貰ってない人居ますよ。」
「ん?だれ?」
「旦那様から貰って無いでしょう?」
 サフィーナはチラッとエンハルトを見るとエンハルトは目を逸らす。

「あー、ハルトもくれるのかぁ。」
「当たり前でしょう。」
 千春に答えるサフィーナ、すると頼子達が動き出す。

「暗くなったね。」
 外を見る千春、外では準備が終わりエーデルの家族やホーキンの家族、そしてルクレツィアや狼の牙のメンバーも移動しのんびりとしていた。

「さてと、そろそろ良いかな?」
 頼子は立ち上がると美桜達を見る。

「そだねー、良い感じに日も落ちて暗いし。」
「何?何するの?」
 頼子達に千春は問いかけると、皆はニヤリと笑う。

「チハルこっちおいで。」
 麗奈が千春の手を引きながら庭に出る。

「皆も外にきてー。」
 青空達は寛ぐ王族やサフィーナ達侍女までも庭に呼ぶ。

「アリンさん、お願いしまーす。」
 頼子が声を掛けるとアリンハンドは魔道具でなにやら連絡を取る。

「さ、チハル!」
「なに!?」
「あっち見てて。」
 麗奈は真っ暗な空の方を指差す、すると光が上空へ幾つも飛んで行くのが見える、そして。

ドォォン!!!
ドドドドォォォォン!!!

「花火!?」
「うぃっ!」
「なんでこっちに花火あるの!?」
「私達が作ったんだよ。」
「ウチらも一緒に作りましたー♪」
「頑張ったもんねー♪」
 頼子達はニヤニヤしながら千春に言う、千春は青空に咲く花火をポカンと口を開けたまま見る。

「綺麗。」
 色とりどりに光り輝く花火、頼子達は爆裂魔法を詰めた魔石と金属の粉末を混ぜた玉を作り、魔導士団にお願いし花火を打ち上げていた。

ドドドドォォォン!!!!

「たまやー!」
「かぎやー!」
 青空達も一緒に声を上げ連続して打ち上がる花火を見る、日本の祭りに行ったメンバー以外は初めての花火に驚きそして美しさに呆ける。

「懐かしいな。」
 エンハルトが千春の横に立つ。

「うん・・・。」
 花火を見ながら千春はエンハルトに頷く、そして花火を見続ける。

ドォォォォン!!!

「うわぁ!」
 最後に特大の花火が打ちあがる、そしてキラキラと光を放ちそして消えて行く。

「・・・ありがとうヨリ、ミオ、レナ。」
 千春は目をウルウルとさせながら呟く。

「チハル、これは俺からだ。」
 エンハルトは千春に小さな箱を見せる。

「・・・ありがとう。」
 千春はそう言うと箱を見る、エンハルトはパカッと箱を開けると指輪が入っていた。

「・・・ゆびわ?」
「あぁチハルは18歳になったんだろう?」
「うん。」
「こちらの世界では違うが、チハルの国では18で結婚出来ると聞いた。」
「・・・。」
「結婚で指輪を付けると言う風習はこちらには無いが、アリンがヨリから聞いたらしくてな、準備した。」
「・・・。」
「まだ婚姻の儀式は先の予定だが、チハルと俺、そしてサフィーはいつも一緒だという証だ。」
 箱には指輪が3点入っていた、エンハルトは一つを取り出す。

「付けても良いか?」
 千春は無言で頷く、エンハルトは頼子に聞いていた左手の薬指に指輪を嵌める、そして横に立つサフィーナの指にも指輪を嵌める、そして残り1つを自分の指に嵌めた。

「おめでとうチハル、これからもよろしくな。」
「チハル、おめでとう、ずっと一緒よ。」
 エンハルトとサフィーナは千春をのぞき込みながら笑顔で言う。

「・・・うわぁぁぁあん!!!!!!」
 千春は我慢が出来なかったのか大きな声で泣きだす。

「あー、泣いちゃった。」
 頼子は笑みを浮かべ呟く。

「大丈夫なの?」
 美桜が呟くと横でロイロが笑いながら答える。

「先ほどから嬉しさが溢れてたからのう、キャバオーバーじゃ。」
「どうしたらいいか分からなくなったんだろうな、物凄く嬉しいってのは感じるぞ。」
 ルプもロイロの横で笑みを浮かべ答える。

「わぁぁーーーーーん!!!!」
 泣き続ける千春、サフィーナは千春を軽く抱きしめよしよしと頭を撫でる、エンハルトもそれを微笑みながら見る。

「チーちゃん幸せそうだねぇ。」
「そうだな、チーはこっちでも愛されとるなぁ。」
 文恵と源治はわんわんと泣き続ける千春を見ながら呟く、皆は千春が泣き止むまで微笑んでいた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

【完結】限界離婚

仲 奈華 (nakanaka)
大衆娯楽
もう限界だ。 「離婚してください」 丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。 丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。 丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。 広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。 出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。 平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。 信じていた家族の形が崩れていく。 倒されたのは誰のせい? 倒れた達磨は再び起き上がる。 丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。 丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。 丸田 京香…66歳。半年前に退職した。 丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。 丸田 鈴奈…33歳。 丸田 勇太…3歳。 丸田 文…82歳。専業主婦。 麗奈…広一が定期的に会っている女。 ※7月13日初回完結 ※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。 ※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。 ※7月22日第2章完結。 ※カクヨムにも投稿しています。

魔法の盟約~深愛なるつがいに愛されて~

南方まいこ
BL
西の大陸は魔法使いだけが住むことを許された魔法大陸であり、王国ベルヴィルを中心とした五属性によって成り立っていた。 風魔法の使い手であるイリラノス家では、男でも子が宿せる受巣(じゅそう)持ちが稀に生まれることがあり、その場合、王家との長きに渡る盟約で国王陛下の側妻として王宮入りが義務付けられていた。 ただ、子が生める体とはいえ、滅多に受胎すことはなく、歴代の祖先の中でも片手で数える程度しか記録が無かった。 しかも、受巣持ちは体内に魔力が封印されており、子を生まない限り魔法を唱えても発動せず、当人にしてみれば厄介な物だった。 数百年ぶりに生まれた受巣持ちのリュシアは、陛下への贈り物として大切に育てられ、ようやく側妻として宮入りをする時がやって来たが、宮入前に王妃の専属侍女に『懐妊』、つまり妊娠することだけは避けて欲しいと念を押されてしまう。 元々、滅多なことがない限り妊娠は難しいと聞かされているだけに、リュシアも大丈夫だと安心していた。けれど――。

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

処理中です...