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カエルでディナー!

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「甘酢タレ?」
「そ、甘めが良いよねー。」
 別荘の厨房で千春は鍋に醤油、みりん、蜂蜜、そして酢を入れ煮立てる。

「キャベツの千切り出来たよー。」
「ほーい、冷水に浸けておいて。」
「ほーい。」
 美桜はスライサーでシュッシュッとキャベツの様な野菜をスライスし、麗奈がザルに入れたまま水に浸す。

ピピッピピッ

「はい!10分!」
「いぇっさー!」
 お湯に入れた卵を取り出し冷水に入れる大愛。

「これで温玉できんの?」
 日葵はのぞき込みながら呟く。

「チハルが出来るって言ってんだから出来るんでしょ?」
「多めに作ってるから一個割って見て。」
「はーい!私割るー。」
 青空はそう言うと小皿に玉子を割る。

「おー!温玉だー!」
「それ食べて良いよー。」
「・・・どうやって?」
「そこの濃縮麺つゆあるっしょ、ちょびっと掛けたら良いよ。」
 スーパーに売っている麺つゆを垂らし、青空はスプーンで掬って口に入れる。

「うめぇ!」
「私も頂戴!」
「私もー!」
 大愛と日葵もスプーンで食べ始める。

「それトッピングだよ?」
 千春は笑いながら三人に言う。

「これで料理一つ出来上がりじゃん。」
「沸騰したお湯に玉子入れただけで料理とは・・・。」
 納得いかない様に呟く千春。

「刻みのりどれくらい必要?」
「風味付けだからちょっとでいいよ。」
「えーいっぱい入れたい。」
「はいはい、いっぱい作ってくださーい。」
 グツグツと煮立っている甘酢タレを火から下ろし唐揚げを小さく切っていく千春。

「チハル、そろそろ30分経つわよ。」
「ほーい、それじゃソレもお湯から出して。」
 サフィーナは塩と胡椒を塗り込んだカエル肉を袋に入れ、レモンの様な酸っぱい柑橘果汁を入れお湯に浸けこんでいた。

「どう?」
 袋から肉を取り出しまな板に置くと、サフィーナは千春に見せる。

「良い感じだね。」
 5mmほどの厚さでスライスし、パクっと口に入れる。

「うん、鶏の胸肉より柔らかいね、でもちょっと柔らかすぎるかなぁ。」
 千春は切った物をサフィーナの口に入れる。

「はい、どう?」
「・・・良いんじゃないですか?」
「まぁサラダチキンならぬサラダカエルだし、試しに作った割には美味しいか。」
「チハルちゃん、すっごい簡単に料理作るね。」
 料理を一部始終見ていたユーリンが声を掛ける。

「本当、それなんて調味料塗り込んでお湯に入れただけでしょ?」
「こっちの玉子も沸騰したお湯に入れただけよ。」
 シャルルとユーリンは驚きつつも関心しながら話す。

「手を抜ける所は抜く、美味しければ良いのよ。」
「千春はそう言う所も凄いよね。」
「お湯沸かして玉子入れたらコンロが一つ空くじゃん?待ってる間に一品作れるからね。」
「それが凄いんだわ。」
 頼子も関心しながら調理を手伝う。

「ゴマダレ出来ましたー!」
 ゴリゴリとゴマを擂っていたモリアンが手を上げる。

「さんきゅーモリー、こっちに作ったタレにそのゴマ入れて混ぜておいて。」
「はーい。」
「カエル肉ほぐしましたニャ!」
「ありがとうマクリ、それを綺麗にさらに並べてモリーのタレをかけてもらってね。」
「はいニャ!」
 マクリはほぐした肉を綺麗にさらに揃えていく。

「さて、最後にルプ達用のツマミだね。」
「これで良くね?」
「味が濃い方が喜ぶからねー。」
 千春は短冊切りにしたカエル肉に塩と胡椒で味付けをし、片栗粉をまぶすと油を入れたフライパンに入れる。

ジュゥゥゥゥ!

「火が通ったらココに醤油とみりん、砂糖とニンニク、蜂蜜入れてー。」

ジュワァァァァ!

「んー!良い匂い!」
 醤油と甘い匂いが厨房に広がる、頼子は思わず声が出る。

「はい、火が通ったらゴマを振りかけて終わりー。」
「早いな。」
「まぁね、さーて出来たのどんどんテーブルに並べてねー。」
 千春がそう言うと、サリナとラルカが運び始める。


------------------


「おぉー!美味そうじゃ!」
「良い匂いだな。」
「んー!たまらんばい!」
「美味しそうです!」
 ペット達は並べられた料理を見て今にも涎が落ちそうだ。

「本当に美味そうだな。」
「凄いですね、コレが全部カエルですか。」
 エンハルトとアリンハンドはゴクリと喉を鳴らす。

「本当に美味しそうですな。」
「カエルですよねコレ全部。」
 エーデルとホーキンは警備するはずが、美桜と麗奈に強制的に連れて来られ座っていた。

「はい、エーデルさん。」
「ホーキンさんもどうぞー。」
「有難うございますミオさん。」
「すみませんレナさん。」
 2人は自分達が作った料理を2人の前に置く。

「はい、これがカエルの唐揚げ丼だよ。」
 千春はエンハルトの前に器を置く、器にはご飯、その上にキャベツが敷かれ甘酢の掛かった唐揚げ、そして上に温泉卵を乗せ、色味に海苔を振りかけている。

「アリンさんもどうぞー、こっちはサラダチキン・・・いやカエルだったわ。」
 皿にスライスした肉が綺麗に並べられている、レモンのような香りが漂う。

「コレは?」
「これは棒棒鶏、ゴマダレに絡めて食べてね。」
「バンバンジー?」
「あ、カエルだからバンバンカエル?」
「どっちでもよくね?」
「んだね。」
 説明しながら千春と頼子は笑う。

「ロイロ達には特製甘辛炒めも作ったからね。」
「おぉ、美味しそうじゃな!」
「あとお酒は何が良い?」
「日本酒かのう?」
「焼酎も良いんじゃねぇか?」
「わっちは日本酒やね!」
「僕も日本酒が良いです!」
「へいへい、それじゃ日本酒置いとくよ。」
 アイテムボックスからドン!と一升瓶を取り出しテーブルに置く。

「パトリス、宿に帰って良いよ。」
「ユーリン・・・それはねぇだろ。」
「姫様が良いって言ったんだから良いだろうよ!」
「そうだ!俺達も食いたい!」
「うんうん。」
 唐揚げに釣られ晩御飯までお呼ばれした野郎三人もテーブルに座り料理を見る。

「あっちの宿どうすんのよ。」
「・・・今日くらい良いだろ、金は払ってんだから。」
 ユーリンとパトリスが言い合う間もガーランとトリスは皿に目が行き突っ込みすらしない。

「はい!それじゃ皆食べて良いよー!」
 千春が声を掛けると皆いただきますと挨拶をし食べ始める。

「カエルだらけの夕食だね。」
「まぁ色々味変えたし。」
 頼子が言うと千春が答える。

「カエル丼美味しいわ。」
「唐揚げ丼ね。」
 美桜と麗奈は丼から食べ始める。

「チハルちゃん他にも食べ方あるの?」
「鶏料理ならほぼ合うねぇ。」
 ユーリンから聞かれ千春は色々味見しながら答える。

「このレシピ広めて良いの?」
「いいよ、しばらくカエル獲りまくるんでしょ?」
「しばらくかかるだろうねぇ。」
 遠い目をしながらユーリンが答える。

「しっかりレシピは書き留めました。」
 シャルルは嬉しそうにメモを見せる。

「この料理を作って商業ギルドに試食させれば絶対買い取るでしょ。」
「うん、ノビリスちゃんに教えたら商談成功間違いなしでしょ。」
 2人はニヤリと笑いメモをアイテムボックスに入れると食事を再開する。

「チハルさん!バンバンカエル美味しいです!」
 モリアンは器用に箸で掴み千春に言う。

「バンバンジーね。」
「チハルさんがバンバンカエルって言ったんですけど?」
 そう言うとモリアンはパクリと口に入れる。

「どっちでも良いけど・・・なんかヤダなぁバンバンカエル。」
「モリーちゃんは好きだろうね、ソースがマヨベースだもん。」
「ほうなんれふ!おいひいれふ!!痛だぁぁぁぁい!!」
「口に入れたまま叫ばない!」
 サフィーナは片手にハリセンを持って注意する。

「ユラやルペタ様の前で行儀の悪い事しない。」
「ふぁぁい・・・。」
 ユラとルペタは行儀よく唐揚げ丼を食べながらニコっと笑う。

「アイトネってカエル食べるかなぁ。」
『食べてみたいわ!』
「あ、食べるんだ。」
『美味しそうですもの。』
「ま、美味しく出来たけどね。」
 アイトネにも食事を準備し始めたころ外が騒がしくなる。

「・・・鳴きだしたね。」
 ユーリンが呟く。

「えぇ!こんなにうるさいの!?」
 外から重低音な唸り声のような音が鳴り響きだす。

「うん、言ったでしょ?寝れないよって。」
「・・・ロイロ、結界出来る?」
「うむ、ちと結界を張って来るか。」
 ロイロはそう言うと部屋を出て行く、暫くすると音がピタリと止まった。

『流石ねぇ、魔物の侵入が出来ない結界と遮音結界ね。』
「凄いの?」
『えぇ、この世界の魔法ではないわ、前世の魔法ね。』
「ロイロ凄いな。」
 静かになった事を確認すると皆はカエルまみれの夕食を再開した。






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