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村で焼きおにぎり!

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「辛ぁぁぁい!!」
「唐辛子だからねぇ。」
「ひどいですぅ!」
「ヨリ特製だからヨリに言ってー。」
 千春はクスクス笑いながらアイテムボックスからご飯を取り出しおにぎりを握ると、煎餅を焼き終わった網の上に置く。

「お?焼きおにぎり作んの?」
「炭まだあるからねー。」
 明太子とバターを取り出すと、菜箸で器用に塗りバターを置く。

「千春私醤油で。」
「おっけー。」
 頼子は横でおにぎりを握り網の上に置く。

「握り飯を焼くのかい?」
 アエネは子供達に煎餅を渡しながら覗き込む。

「うん、焼きおにぎりって言うの。」
 頼子のおにぎりに軽く醤油を垂らすと香ばしい匂いが漂う。

「こりゃ美味しそうだね、私もやってみて良いかい?」
「良いですよ。」
 バーベキューコンロを挟んでアエネもおにぎりを焼き始める。

「タレは醤油で、他にも色々作れますよ。」
 明太子にマヨネーズを混ぜ、おにぎりに塗り軽く焼くと、千春はモリアンに渡す。

「はい、モリー。」
「わーい!」
 モリアンは皿に乗せたおにぎりをパクリと齧り付く。

「あふっ!あふっっ!!!」
「熱いから気を付けてね。」
「おほいれふぅ!!!」
 溶けたマヨネーズが熱かったのか、モリアンはフガフガ言いながら文句を言うが、すぐにまた食べ始める。

「チハル王女殿下、私が焼きますので皆さんと食べられて下さいな。」
 メーリルは千春と代わりおにぎりを焼き始める。

「チハル、エビ煎餅も焼きあがりましたよ。」
「はーい、サフィーそれは冷やしてから食べるから一緒に焼きおにぎり食べない?」
「頂きますね。」
 微笑み返事をするとサフィーナは天板をオーブンから出し冷やす、そして子供達も焼きおにぎりを堪能した。


---------------------


「この付近に居ると言ってたのぅ。」
 ロイロはキョロキョロと見まわしながら探索魔法を掛けつつ魔力探知で探る。

「・・・ん~殺気だってんな。」
「なんかおるね。」
 ルプとビェリーは風上の方を向くとロイロはその方向に意識を向ける。

「大猪ではないのぅ、人か?」
「複数人居るな、村人ではなさそうだが、冒険者でもなさそうだ。」
「気配もけしちょらんばい、盗賊かいな?」
「ふむ、森の中を走っておるな、ん?誰かを追っておるな。」
 ロイロはそう言うと翼を広げる。

「儂は空から見て来るぞ。」
「俺はこのまま向かおう。」
 ロイロとルプはそう言うと二手に分かれる、ビェリーはルプの頭にトグロを巻き座るとルプは走り出した。


-------------------


「はぁはぁはぁはぁ。」
 女性は小さな子供を連れ森を走る、その耳は笹の葉の様に尖り周囲を警戒していた。

「おねえちゃん。」
「大丈夫、もうすぐジブラロールの王都に・・・。」
 女性はそう言うと立ち止まる、前から来る獣の気配、しかもかなりの力を持つ獣に気付いたのだ、直ぐに上を見る、空にも気配を感じる、そして後ろには複数人の追手の気配が迫っていた。

「もう少しなのにっ・・・。」
「おねえちゃん。」
 女性は葉の生い茂る木を見つめる、そして少女を抱えるとフワリと浮き上がり大振りの枝に飛び乗り気配を隠す。

「大丈夫、イヤン、静かにしてね。」
「うん、エニアおねえちゃん。」
 2人は息を殺す、すると向かっていた方向から大きな狼が現れる。

「綺麗・・・はっ!」
 ルプを見たエニアは思わず呟いてしまった、するとルプはチラリと目を木の上を向けるがまた前を見る。

「ビェリー、何人だ?」
「5人やね。」
「ふむ、この森をこの速度で移動出来るってのは中々じゃねぇか?」
「そやね、森の民、エルフやない?」
 ビェリーもチラッと上に目をやる。

「ロイロは後ろから行くつもりだな。」
「そやね、攪乱させるよりサクッと捕まえる方がいいっちゃないかな。」
「俺は正面から行く、ビェリー残りを頼んで良いか?」
「まかせりー。」
 ルプはそう言うと狼男のスタイルになり歩き出す、ビェリーはチョロチョロと蛇の姿で森の中へ消えて行った。

「・・・なに?狼が蛇と話しをしてた?」
「どうしたの?エニアおねえちゃん。」
「・・・あの狼と蛇、私に気付いてた、それに捕まえるって。」
 エニアは自分達が走って来た方に意識を集中し気配を探る、そして大きな咆哮が聞こえた。


-------------------


「なんだ!」
「ドラゴンだ!!!!」
「何故こんな森にドラゴンが!?」
「チッ、あいつ等の気配も消えたぞ。」
「気配を消して移動は出来ないだろう、何処かに隠れているはずだ。」
 男達はロイロの方を見る、ロイロは楽しそうに成竜姿でドスドスと木をなぎ倒しながら男達に近づく。

「ヤバい、狙われてるぞ!」
「一旦逃げるぞ。」
「・・・・・・・。」
「おい!逃げる・・・ぞ・・・え?」
「よう、お前ら何もんだぁ?」
 ルプは両手に男達を鷲掴みにしたまま残った3人に話しかける。

「に・・にげr。」
「逃がす訳ねぇだろ。」
 ルプが掴んだ男に話しかけると3人は一斉にその場を離れる。

「さてと、お前ら何もんだぁ?」
 ルプは男達に声を掛ける、男達が被るフードを捲ると尖った耳が現れる。

「へぇ、おまえ達もエルフ・・・いやエルフじゃねぇな。」
 エルフよりも長く細い耳を見ながら呟く、男2人は逃げようともがくがルプから逃げる事は出来なかった。


------------------


「おい!どこだ!」
 男は声を上げる、先頭を走っていた男は後ろを見ると2人が消えていた。

「どうしたんじゃ?」
「なっ!?お前何処から!」
 後ろから声が聞こえ、直ぐに飛び距離を開ける。

「中々の身のこなしじゃなぁ。」
 笑みを浮かべ一歩近寄ると男は下がる。

「ロイロ~こっちは捕まえたば~い♪」
 ビェリーは大蛇の姿で2人を巻き付けたままぬるりと現れる。

「あとはコヤツだけじゃな。」
「そやね~♪」
「お主らは何者じゃ?」
「・・・。」
「まぁ持って帰れば良いかのぅ。」
「何もんでもいいやん?」
「何を・・・。」
 男は言葉を最後まで言えず意識を無くす、ロイロは腹に腕をめり込ませたままヒョイっと肩に乗せるとテクテク歩きだす、少し歩くとルプが女性達の隠れている木の真下で男達を転がす所だった。

「ビェリー、ロイロ、おつかれさん。」
「疲れもせんわ、何者じゃこいつらは。」
 ロイロは木の上を見上げると、女性はギョッとした顔をしている。

「まぁ降りて来い、敵ではないぞ?」
 ルプは声を掛ける、少女がルプとエニアを交互に見る。

「・・・はい。」
 エニアは諦めた様に返事をするとイヤンをギュっと抱きしめ飛び降りる、魔法を掛けているのかフワリと地面で一度浮き上がり地面に降り立つ。

「有難うございます。」
「おう、恩に着てくれ。」
「さて、大猪はどうするかのぅ。」
「ここら辺にはおらんばい?気配せんもん。」
 エニアを放置し、既に3人は狩りの続きの話を始める。

「あのぉ・・・。」
「なんじゃ?」
「えっと、何も聞かれないのですか?」
「追われておったんじゃろ?」
「はい。」
「その子を守ってたんだろう?」
「はい。」
「どう考えてもコイツら悪者やん?」
「はい。」
「儂らもチハルの事は言えんのぅ。」
「トラブルメーカーってか?」
「あはははは、わっちらもトラブル拾っとるやんねぇ。」
 ゲラゲラと3人は笑う、エニアは良く分からず呆けたまま、イヤンはキョトンとしてルプ達を見つめていた。





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