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魔王様!

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『ごちそうさまでした♪』
 アイトネは最後のケーキを食べ終わると手を合わせる。

「さて、私達とサフィー達、あとはルプ達だね。」
「そうですね。」
「・・・お母様、護衛連れていけって言わないですね。」
「アイさんが見てるもの、これ以上に安全な条件って無いわよ。」
「そりゃそうだ。」
『チハルに何か有ったらあの国消滅させるわよ。』
「いや、それはダメでしょ、神様の力乱用じゃん?」
『私のチハルに手を出したらタダじゃ済まないわよ?』
「アイトネのじゃないしー。」
「チハル、聖女の称号はアイさんに貰ったのでしょう?特別なのよ。」
「そうなの?」
『そうよ?』
「・・・初耳なんだけど?」
『言って無いもの。』
「さようですか。」
 肩を上げ適当に返事を返す千春、そして準備万端で千春はアイトネに声を掛ける。

「準備おっけ~♪」
『それじゃ魔国の城で良い?』
「思ったんだけどさぁ、魔王様会わなくても良くない?」
「ウチも思った、街見られたら良いよね。」
「でもメグ様手紙書いてくれたよ?」
 頼子が千春の持つ手紙を見ながら言う。

「お母様会わなくても良いですよね?」
「別に構わないわよ、でも人間だけで動き回ると面倒だから魔王に会って魔族に道案内させた方が面倒事は無いわよ。」
「お母様は道案内させたんですか?」
「・・・えぇ!勿論よ!?」
 一瞬目を泳がせたマルグリット、千春は見逃さなかったが、敢えて言わなかった。

「それじゃ面倒だけど魔王城にお願いしまーす。」
『いきなり目の前に行ったら魔王もビックリするかしら♪』
「びっくりさせてどうするんさー、ちゃんと城の前で挨拶してから入ろうよ。」
『しょうがないわねぇ、それじゃ行くわよー?』
「アイトネ様、私も行くわ。」
 アルデアは立ち上がり声を掛ける。

「お姉さまが行くなら私も行きます!」
 ラミも手を上げ言う。

「私の顔を知ってる者も居るでしょうから面倒事は減ると思うわ。」
「マ?採用!」
 千春はサムズアップしアイトネを見るとアイトネは手を軽く振る、いつもの様に景色が一瞬で変わり、大きな城が目の前に現れた。

「おぉぉ!カッコいい!」
「ザ!城!って感じ!」
「魔王の城って感じだねぇ。」
 ジブラロールやブルーワグのような白亜の城ではなく、うっすらと黒に近い灰色の城を皆は見上げる。

「黒いねぇ。」
「魔王の城だからじゃん?」
「そうなの?アルデア。」
「別にそういう意図は無いわよ、ここらで採れる上質な石が黒味がかってるだけだもの。」
「アルデアの国の城もこんな感じ?」
「えぇ、こんな感じだったわ。」
「へぇ。」
 のんびりと城を見上げ話をしていると、魔族の兵士が槍を持ち近づいてくる、見た目は人と変わらないように見えるが耳が尖り肌は褐色と言うより黒に近い。

「・・・アルデア・ド・ルシー様で御座いますか?」
「あら?私を覚えてる兵士も居たのね。」
「何百年ぶりで御座いましょうか。」
「忘れたわ、友達を連れて来たの、入っても良いかしら?」
「確認致します、よろしければ応接室の方へ案内させて頂きます。」
「お願いするわ。」
 アルデアはそう言うと千春達に目配せし歩き出す。

「チハル、手紙を。」
「あ、はいコレ。」
 千春はアルデアに渡す、アルデアは兵士に手渡し兵士はお伺いを立てに行った。


-------------


「こちらで御座います。」
「ありがとう。」
 兵士は恭しく礼をすると扉を開ける、中にはセイレーン族と見た目の変わらない女性メイドが2人立っていた。

「あ、セイレーンさん?」
「鰭族の子ね。」
「え?セイレーンも魔族なの?」
「そうよ?知らなかったの?」
「・・・初耳だ、え?それじゃフリエンツ国って魔族の領土的な?」
「違うわよ、あそこはウンディーネと言う上位種族が水棲種族を纏めてるの、その中に水棲魔族がいるだけね。」
「へぇ、色々あるんだねぇ。」
 ペコリとお辞儀をするメイド2人。

「メイドさん居るけどどうする?サフィー。」
「勿論私が淹れますわ。」
 当たり前の様にアイテムボックスから紅茶セットを取り出しテーブルに置くと、慣れた手つきでお茶を淹れる、メイドは目を見開きサフィーナを見る。

「アイトネ珍しく帰らないね。」
『一応魔王に念押しくらいしておいた方が良いでしょ?』
「そだね、消滅したらヤだもんね。」
「アルデアちゃんって偉い人だったの?すっごい丁寧に対応してたよね兵士さん。」
「そうね、女王だった頃何度か来てるから覚えてたんでしょ。」
「女王!?」
「そうよ?言って無かったかしら。」
「初耳が多すぎる!」
「知らなかったよ、ラミちゃん逆になんで気付かれないんだろうって思ったわ。」
「あ、私はお城に入った事無いもの。」
「へ?王女様じゃないの?」
「違うわよ?一応貴族ではあるけれど。」
 ラミは平然と言いお茶を啜る。

「魔王様と会った事は?」
「小さな頃に会った事はあるらしいわ、覚えてないけれど。」
「何年前なの?それ。」
「200年くらい前かしら?」
「・・・魔族長生きし過ぎじゃない?」
 話をしているとドアの外がバタバタと煩くなる、そしていきなりドアが開かれる。

「アルデア!今まで何処にいたんだ!」
 大きな声を出しながら部屋に入って来たのは筋肉質のダンディなおっさんだ、頭には立派な角が二本横から生えている。

「相変わらず煩いわね、だから人間の娘に負けるのよ。」
「くっ・・・あの女がおかしいのだ、魔力に長ける魔族を凌駕する魔力量にあの若さで魔法の威力、魔族でもあのレベルにまで行くのに200年は掛かるぞ。」
「センスが良いのね。」
「それは良い、アルデアお前今まで何処に居たんだ?」
「ちょっとダンジョンマスターしてたわ、今もやってるけれど。」
「それで?このお嬢さん方は?」
「手紙見てないの?」
 アルデアは面倒そうに呟く。

「あぁ・・・これか。」
 未開封の手紙の封を剥すと手紙を読む、そして顔色が悪くなり手が震える。

「・・・アルデアぁ!なんだこの手紙は!?」
「そのままよ、貴方の負けた娘の子がこの子。」
 そう言うとアルデアは千春の背中を押す。

「あ、間違っても手を出さないようにね、氷の魔女が何かする前に私があなたを消滅させるわよ?」
「そんな事・・・可愛い娘じゃないか、氷の魔女と似ても似つかないな。」
「血は繋がってないもの。」
「それで他の子は?」
「この子はあなたの娘のラミ・レイジィよ。」
「・・・レイジィ家の娘か、あぁルミの面影があるな、大きくなったな、お父さんだよ?」
「あ、はい、ラミです。」
「それからこの方がこの世界の女神、アイトネ様よ、不敬な事を言わないようにね。」
「はっはっは!冗談もそこまで言うと滑稽だぞ、女神が顕現する事など・・・え?本当なのか?」
 魔王の笑いにイラっとしたアルデアは殺気全快で睨みつける。

『初めまして、魔族の王、アレット・ド・フィンテ、2000年前の名前の方が良いかしら?ビアレッド。』
 アイトネは笑みを浮かべているが目は笑っていない。

「はっ!失礼致しました!」
 膝を突く魔王、周りの側近は驚き同じく膝を突く。

「後はチハルのお友達の子と侍女だけれど、この侍女も普通じゃないから手出したらダメよ?」
「・・・アルデア。」
「なに?」
「あとで話がある。」
「やーよ、面倒事持ってくるなとか言うんでしょ?」
「・・・分かってやってるのかよ。」
「あら、昔の話し方になったわね、別にそう言うわけじゃ無いわよ、観光よか・ん・こ・う。」
「・・・本当か?魔国を滅ぼしに来たとかじゃ無いんだよな?」
「当たり前でしょう?一応ラミの父親だし?私のもう一つの故郷みたいな物だし?」
 アルデアが言うと魔王は立ち上がる。

「失礼した、紹介がまだだったな、俺はアレット・ド・フィンテ、女神が言われたビアレッドでも構わん、あと俺を魔王と思わなくて良い、いや思わないでくれ。」
「え?魔王様ですよね?」
「・・・いや、魔王辞めたい、アルデア恨むからな。」
「恨んで良いわよ~♪」
 アルデアは楽しそうに返事をする、そして魔都と呼ばれる街へ行く話を始めた。






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