上 下
431 / 680

魔国にいくぞい!

しおりを挟む
「ラミちゃんうどん出来たよー。」
「・・・どうやって食べるの?これ。」
「はい、お母様、アルデアもどうぞ。」
「ありがとう、美味しそう。」
「へぇ、昨日食べてた物より麺が太そうね。」
「あれ?アルデア知ってるの?」
「見てたもの。」
 アルデアはそう言うとシャンデリアの上を指差す、よく見ると小さな蝙蝠が乗っていた。

「覗きだ。」
「失礼ね、一応護衛よ?」
「ありがとうごさいますー、イーナは?」
「ユラと部屋で遊んでるわね。」
 あらぬ方を見ながら笑みを浮かべる。

「イーナも食べるか聞いてみて。」
「・・・食べるって、ユラも来るわよ?」
「オッケー。」
 返事を聞き追加を作りに行く千春、ルプ達もテーブルに座り食べ始めていた。

「千春、初めて作ったんだよな?」
 ルプは狼男の姿で麺を啜る。

「そだよー、ヨリ達も初めてだよね?」
「うん、初めてだよーん。」
「コン、はいきつねうどんだよー。」
 ミオは甘く味付けしたおあげを乗せたうどんをコンの前に置く。

「ありがとうミオ!ミオ大好き!」
 満面の笑みで答えるコンは箸を持つと、いただきますと元気に言い麺を啜る。

「お母様どうですか?」
「ラーメンとは全く別物の料理ね、あっさりしててお腹が温まるわ。」
「消化も良いので食欲がない時オススメなんですよ。」
「これも作れる様にするの?」
「はい、ルノアーさん達に教えますから。」
「それは嬉しいわ。」
 マルグリットはうどんが気に入ったのか、ツルツルと麺を啜る。

「・・・食べ難いわ。」
 ラミは使い慣れていない箸と、上手く麺を吸う事が出来ず苦戦している。

「ラミにゃんコレ使ってみー?」
 麗奈が厨房からレンゲを持ってくる。

「スプーン?」
「レンゲだよ、えーっとコンこれ使ってみて。」
 麗奈はコンに渡すと、コンはレンゲに麺を乗せちゅるりと口に入れる。

「ああやって使うんだよ。」
「やってみるわ。」
 ラミはそう言うと、早速レンゲを使い食べ始める、そして美味しかったのか黙々とうどんを食べ始めた。

「寒い時はうどん美味しいよね。」
「日本はまだ暑いけどねぇ。」
「残暑きっついよねぇ。」
 まだ冷え込むジブラロールで皆は暖かいうどんを啜る。

「アルデア、魔国ってどんな所?」
「食事以外は人間の街と変わらないわよ、ただ種族間の争いは多いからどこかしら戦争してるわね。」
「おっかないな。」
「軍の者だけよ、一般市民は普通に生活してるわ。」
「お母様行った事あるんですよね?」
「えぇ、普通の街だったわよ。」
「遠いんですか?」
「馬車で行くならあっちこっちで乗り継ぐから2~3大月掛かるわね。」
「うわぁ遠いなぁ。」
「アイさんに連れて行って貰えば?」
「アイトネかぁ。」
『呼んだ?』
「呼んでない。」
『あー!うどん食べてる!』
「食べる?」
『食べるわ♪』
 千春が聞くと即答し、侍女達が準備をする。

『で?何を話してたのかしら・・・あら魔国?』
「さらっと記憶読まないでくださーい。」
『行きたいの?』
「見てみたいなーくらいかな。」
『なーーーーーんにもないわよ?』
「何もない事は無いっしょ。』
 千春はそう言うとアルデアを見る。

「何も無いわよ?」
 そしてラミを見る。

「なーーーーーーーんにもないわよ。」
 うどんを食べ終わり満足そうに言うラミ。

「逆に見たくなるよね、千春。」
 頼子は面白そうにつぶやく。

「確かに、アイトネちょっと行ってみたい。」
『うどん食べてからで良い?』
「もちろん、急いでるわけじゃ無いもん、ゆっくり食べて。」
「何も無いって何?」
 美桜が考える。

「何も無いがあるんだよ。」
 麗奈はどこかで聞いた事を言う。

「魔国の王都って事だよね?」
「一応王都ね。」
「アルデア、特産品とか無いの?」
「そうねぇ、チーズは種類が多いわね。」
「そう言えばチーズは無駄に種類あるわ。」
 アルデアとラミは思い出し呟く。

「チーズって事は畜産かな。」
「チハル、チーズフォンデュしたい。」
「ウチもー。」
「チーズフォンデュやった事ないわ。」
「私も無いな。」
「チハルやったことある?」
「ないよー。」
「チーズなんて美味しい物じゃないでしょ。」
 ラミは嫌いなのか嫌そうに言う。

「ワインには合うわよ?」
「乳臭いし塩辛いし美味しくないわ。」
「塩辛い?」
「どんなチーズなんだろ。」
「色々有るって言ってたし塩辛いのもあるんだろうね。」
「ラミちゃんちょっとこれ食べてみて。」
 千春はそう言うとアイテムボックスからコンビニチーズケーキを取り出す。

「はい、めっちゃチーズなケーキだよ。」
「・・・えぇぇ。」
 嫌そうな顔をするラミ、しかし甘酸っぱい香りに負けフォークで一口分刺すと口に入れる。

「!?」
「どう?」
 コクコクと頷くラミ、思わず皆も笑みがこぼれる。

「色々あるならこれも作れそうかな?」
「作って!是非作って!チハル様!」
「お、食いついたねぇ、それじゃ準備して行こうかな。」
「チハルちょっと待って。」
 マルグリットは待ったを掛けるとエリーナから紙を受け取る。

「魔王に会うなら手紙を書いておくわね。」
 そう言うとサラサラと書いて行く。

「サフィー、何て書いてるか分かる?(ボソッ)」
「知らない方が良いですよ。(ボソっ)」
 心配そうに見つめる千春、勿論読めない。

「はい、これを渡しなさい、もし何か理不尽な事を言うなら・・・サフィーナ容赦しなくて良いわ。」
「はい、了解しました。」
「え?サフィーでどうにかなる物なの?」
「サフィーナが容赦しないなら身動き出来ないくらいには出来るでしょ?」
「魔王ですよ?」
「えぇ、私が戦った時よりも強くなってなければサフィーナでも対応出来るわよ。」
「・・・魔王に容赦なしですか?不敬になりません?」
「大丈夫、あいつ死なないから。」
「へ?」
「あの魔王不死身なのよ、殺しても死なないから容赦しなくてい良いわよ。」
「ラミちゃん知ってた?」
「はい、あの人死なないんです。」
「アイトネ!どういう事?アンデッドとか!?」
『不死では無いわよ、限りなく死なないだけ。』
「詳しく!」
『人のスキルを言うのはルール違反なのよ?』
「はい、チーズケーキあげる。」
『自己蘇生と高速回復スキルがついてるのよー♪』
 アイトネはそう言うとチーズケーキを受け取りパクパク食べだす。

『チハルでも初見殺しなスキルあるでしょ~♪』
「え?何?」
『アイテムボックスに入れちゃったら何もできないわ~♪』
「・・・チートだなぁ、あははは。」
 そしてアイトネがのんびりケーキをお代わりするまで、千春達はお出かけの準備をする事にした。


-------------


「サフィーちゃん、手紙何て書いてあった?」
「・・・『チハルに手を出したら〇す』です。」
 頼子にこっそり聞かれサフィーナは苦笑いで教えた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

【完結】限界離婚

仲 奈華 (nakanaka)
大衆娯楽
もう限界だ。 「離婚してください」 丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。 丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。 丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。 広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。 出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。 平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。 信じていた家族の形が崩れていく。 倒されたのは誰のせい? 倒れた達磨は再び起き上がる。 丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。 丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。 丸田 京香…66歳。半年前に退職した。 丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。 丸田 鈴奈…33歳。 丸田 勇太…3歳。 丸田 文…82歳。専業主婦。 麗奈…広一が定期的に会っている女。 ※7月13日初回完結 ※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。 ※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。 ※7月22日第2章完結。 ※カクヨムにも投稿しています。

魔法の盟約~深愛なるつがいに愛されて~

南方まいこ
BL
西の大陸は魔法使いだけが住むことを許された魔法大陸であり、王国ベルヴィルを中心とした五属性によって成り立っていた。 風魔法の使い手であるイリラノス家では、男でも子が宿せる受巣(じゅそう)持ちが稀に生まれることがあり、その場合、王家との長きに渡る盟約で国王陛下の側妻として王宮入りが義務付けられていた。 ただ、子が生める体とはいえ、滅多に受胎すことはなく、歴代の祖先の中でも片手で数える程度しか記録が無かった。 しかも、受巣持ちは体内に魔力が封印されており、子を生まない限り魔法を唱えても発動せず、当人にしてみれば厄介な物だった。 数百年ぶりに生まれた受巣持ちのリュシアは、陛下への贈り物として大切に育てられ、ようやく側妻として宮入りをする時がやって来たが、宮入前に王妃の専属侍女に『懐妊』、つまり妊娠することだけは避けて欲しいと念を押されてしまう。 元々、滅多なことがない限り妊娠は難しいと聞かされているだけに、リュシアも大丈夫だと安心していた。けれど――。

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

処理中です...