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ドワーフにお願い!

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「準備おっけ~で~す!」
 千春はお酒を受け取り異世界へ戻ると声を掛ける。

「それじゃ行きましょうか、アイさんお願いしても?」
『良いわよー何処に移動する?』
「そうねぇ、直接ゲルダムの所でも良いんだけれど、一応国王だし王城の前にしましょうか。」
 顎に指を当て考えるマルグリットとルクレツィア、千春と頼子、そしてマルグリットの侍女エリーナとアルベル、千春の侍女サフィーナ、サリナ、モリアンとラルカが並ぶ。

『それじゃ行くわよ~♪』
 軽く手を振ると景色は無骨だが立派な王城の前になる。

「おぉぉ・・・暖かい・・・お?お城?コレ、お城っぽくない。」
「砦って感じだね。」
 千春と頼子はドワーフの城を見上げながら呟く。

『それじゃチハル、移動する時は呼んでね♪』
「了解!ありがとー♪」
 アイトネに手を振る千春、アイトネも手を振り返し帰って行った。

「何者じゃい!」
「ドワーフ王ゲルダムにメグが来たと伝えてもらえるかしら?」
 急に現れたマルグリット達にドワーフの兵士が声を掛ける。

「王を呼び捨てにするとは肝がすわっとるのぅ、待っとれ。」
 兵士はそう言うと城の中へ入っていく。

「兵士さん・・・兵士っぽくないですね。」
「ドワーフは皆あんな感じよ、ココでは貴族の礼なんて気にしなくて良いから滞在するなら気楽よ。」
「へぇー楽しそうですね。」
「この件が片付いたら遊びに来たら良いわ。」
 千春とマルグリットが話をしているとブラウニーの執事コルラットが城から出て来る。

「マルグリット王妃殿下いらっしゃいませ。」
 右手を胸に当てお辞儀をするコルラットは笑顔で挨拶をする。

「ゲルダムは居るかしら?」
「はい、ご案内致します。」
 コルラットはマルグリットの後ろに立つ千春達をチラリと見る。

「この子は私の娘とお友達よ、問題無いわ。」
「はっ、それではこちらに。」
 そう言うと城の中へ案内するコルラット、いくらか歩くと扉の前に辿り着く。

「陛下、マルグリット王妃殿下がお越しになりました。」
「おう!入って来い!」
「・・・どうぞお入り下さい。」
 マルグリットはフフッと笑みをこぼすと、コルラットが開けた扉に入る。

「おう、メグと・・・ルクレツィアじゃないか!久しぶりだな!」
「久しぶり、相変わらず声が大きいわねぇあなた。」
 ルクレツィアは笑みを浮かべながら旧友に挨拶をする。

「今日はどうした?エイダンは連れてこなかったのか!?」
「私達だけよ。」
「ほぉ~若い娘っ子ばかりだが、今日はどうした?」
「ちょっと面倒な魔物が居てね、手伝って欲しいのよ。」
「ふむ・・・どんなヤツだ?」
「妖精喰いって知ってる?」
「あぁ、勿論知っとる、どれくらい居るんだ?」
「クゥクゥどれくらい魔物は居るの?」
「ちらばってるからわからないですぅ、いっぱいいるですぅ!」
「ほう?妖精か、ジブラロールに出たわけじゃないのか。」
「えぇ、妖精にはお世話になってるのよ、勿論タダでとは言わないわよ。」
 マルグリットは千春を見ると、千春はアイテムボックスから酒を取り出す。

「ほおおおおおおお、こりゃぁこの前持ってきた酒か!?」
「えぇ、仕事が終わればジブラロールで作りだした蒸留酒も持ってくるわ、お手伝いしてもらえる?」
「メグの頼みだ、酒が無くても手伝うが、魔物の数が分からん事にはどれだけ人を出すか考えられんぞ?」
「そうね、クゥクゥこの城にフェアリーリングは出せる?」
「出せるのですぅ!」
「ゲルダム、フェアリーリングを作る場所借りて良いかしら。」
「うむ、中庭の隅にでも作るか、付いて来い。」
 ゲルダムは立ち上がると皆を連れ部屋を出る、少し歩いた所で開けた庭が現れる。

「マルグリット!ルクレツィアまで!今日はどうしたの!?」
「カラーシャ、久しぶり、ちょっと用事があってね。」
「久しぶり~♪相変わらず可愛いわねぇ。」
 ゲルダムの妻カラーシャ王妃は満面の笑みでマルグリットとルクレツィアの手をとり喜ぶ。

「ほれ、そこあたりに作ればいい。」
 庭の隅を指差すゲルダム、クゥクゥは精霊魔法を唱えるとキノコがポコポコと生える。

「それじゃ行きましょうか。」
「何処にじゃ?」
「妖精の里、エルフの村ね。」
「ふむ、エルフか。」
「そ、あなたの苦手なエルフよ。」
「苦手な訳じゃないぞ、気が合わないだけだ。」
 クゥクゥは皆がフェアリーリングに入ると魔法を唱え移動した。


---------------


「ドライアド様を呼ぶのですぅ。」
 クゥクゥはそう言うと目を瞑る、ほんの少し間を置きドライアドがクゥクゥの前に現れた。

「マルグリットさん、ごめんなさいね。」
「話は聞きました、それで詳細を聞きたいのですけれど。」
「魔物は西側山沿いから現れてます、数は100以上いるわ。」
「ふむ、そのくらいなら小隊1つで殲滅出来そうだな。」
「ゲルダム、100以上だからもっと居るんじゃ無いの?」
「妖精喰いはスライムの亜種だ、厄介な魔物には変わらんが俺達には関係ない。」
 ゲルダムはそう言いうと、城へ兵士を準備する為戻ると言う。

「・・・寒いっ!!!!」
「うん、クッソ寒い。」
 千春と頼子はブルブルと震え腕を擦る。

「そうですね、そろそろ雪が降りそうです。」
 ドライアドが空を見上げながら呟く。

「こんなに寒くても魔物居るんですね、冬眠とかしないんですか?」
「魔獣の中には冬眠するのも居ますが、食べ物が減り狂暴になる魔物も多いです、妖精喰いもその魔物の一つです。」
「妖精以外も食べるんです?」
「えぇ、魔物や魔獣に寄生し魔力を吸いながら育っていきます。」
「ひぇ~きもちわるっ。」
 ドライアドの説明を聞いていると、マルグリットも寒かったのか、ドワーフ国へ戻ると千春に声をかけ、皆は一度ドワーフ国へ戻る事にした。

「それでは俺は使えそうな奴を揃えて来る、メグは部屋でまってろ。」
 ゲルダムはそう言うと城に戻る。

「あったけぇ。」
「うん、暖かいね。」
「この国は火山も近いし地面が暖かいのよ。」
「へぇ・・・って事は温泉もあるんですか?」
「勿論よ、温泉に行きましょうか。」
 にっこり微笑み答えるマルグリット。

「でも王様が今色々準備してますよね?」
「私達が出来る事なんて無いわよ、人員の編成を組んで準備をするの、まだ時間は掛かるわ。」
「あっちに行くのいつになりそうですか?」
「さぁ?今日は無理だと思うわよ、早くても明日の朝ね、夜にあの寒い森を進軍なんて無理ですもの。」
「・・・そりゃそうですよねぇ。」
 話をしながら城へ戻ると、コルラットに客間へ案内された。

「こちらでお寛ぎ下さいませ。」
「ありがとうコルラット、ゲルダムが落ち着いたら教えて頂戴。」
「了解致しました。」

ピロン♪

「あ、レナ来た。」
「ミオは?」
「まだ連絡無いね。」
「どうする?迎えに行く?」
「取り敢えずこっちには連れてこないと、玄関前で干からびるよ。」
「日本あっついもんねぇ。」
「クゥクゥ、ジブラロール往復お願い出来る?」
「うぅ、ちょっとむりですぅ、疲れたですぅ。」
「ありゃ、そっか、何度も往復してるもんね。」
「どうする?」
「そりゃぁ残りの選択肢は一つしかないよ、アイトネさま~♪」
『は~い、レナを迎えに行けば良いのね~♪』
「見てたの?」
『だって暇だもの。』
「そっか、ちょっとお泊りになりそうだから私も一回帰るよ。」
「買い出しもしたいから私も付いて行く!」
「エイダンに説明が必要だから私も一度戻るわ。」
 千春が言うと、頼子とマルグリットも声を掛けて来る、マルグリットは部屋付きのメイドに声を掛けると、コルラットに伝言を残す。

「さ、一度戻りましょう。」
「はい、アイトネ、コレでお願いしまーす!」
『りょ~♪いっくわね~♪』
 そう言うとアイトネは軽く手を振る、その手には千春に貰ったエクレアがぶら下がっていた。






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