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夏休み!

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「・・・さむっ。」
「おはよう千春、今日は雪が降ってるぞ。」
「マジで?!どうりでクッソ寒いと思った!」
「王女様がクッソとか言うもんじゃねーだろ。」
 ルプを枕にしていた千春はもそもそと起き上がる。

「おはようチハル。」
「サフィーおはよー、今日寒いね。」
「ココはまだ暖かいですよ、魔法が効いてますから。」
 サフィーナは窓の外を見ながら答える。

「うっわ、一晩でこんなに積もるの?」
「大雪ですね、チハルの所は夏ですものね。」
「うん、もうすぐ夏休み、ながーーーい休みが取れるんだよ。」
 ウキウキ顔で言うと、制服に着替え応接間に移動する。

「チハルさんおはようございます!」
「おはよーモリー。」
「はい!朝食とお弁当です!」
「あざーす。」
 ササッと朝食を済ませて、弁当を持つと、千春は立ち上がる。

「それじゃ行って来ます!」
「「「「行ってらっしゃいませ」」」」
 モリアン、サリナ、ラルカ、サフィーナは笑顔で見送る、千春はクローゼットの門を抜け、そのまま玄関を開ける。

「・・・あっつぅ、朝から何度あんのコレ。」
 遠くに見える入道雲、そして体を刺す様な日差しを受け、千春は学校へ向かった。


-----------------


「よっしゃぁ!補講回避!」
 青空と大愛が教室で叫ぶ。

「おめっとー、今回赤点なし?」
「無し!って言うか苦手教科平均超えたわ、やったね!」
「頑張ったもんねー。」
「そりゃ頑張るよ、赤点取ったらあっちでお泊まり禁止とか、耐えれない!」
 期末試験の結果を喜び、青空は拳を握り締めながら天を仰ぐ。

「婚約してもう2ヶ月くらい経つのかー、早いなぁ。」
「あっち行っても貴族令嬢のマナーとかお勉強してたもんね、夏休み入ったら遊ぶんでしょ?」
「色々計画中だけど受験勉強もするよ?それに今日はめっちゃ雪降ってたし出掛けれないかもね。」
 婚約騒動から一変し、皆は貴族のマナー講師からの指導や、ダンスレッスン、更には令嬢とのお茶会等、真面目に取り組んでいた。

「スキーとかスノボ出来るかな。」
「どうやって山登るんよ、ゴンドラ無いじゃん。」
「ゴンドラ・・・あるよ、ドラゴンに連れて行ってもらう?」
「その手があったか!」
「私は滑れないからむーりー、ボードもスキー板も無いし。」
 青空と大愛が言うと、日葵は嫌そうに言う。

「あんたはブルーワグでイチャコラしてくりゃ良いじゃん。」
「いちゃ!?ソラだってイチャコラしてんじゃん!」
「してませーん!お勉強してましたー!」
「私もそうだもーん!」
 言い合いしながらも笑顔の2人を呆れながら見る千春、そして夏休みまでの日数が終わり、待望の夏休みが始まった。


-----------------


「寒いけど夏休みだぁ!」
「おかえりなさいチハル、学校終わったのね。」
「あ、ただいまサフィー。」
 終業式が終わり千春は真っ直ぐ家に帰る。

「ヨリ達はいつ来るの?」
「ヨリは今日から、ミオとレナは来れたら今日来るって、ソラ達は明日。」
「お昼は食べたの?」
「まだ!」
 千春は学校のカバンをアイテムボックスに投げ込みながら答える。

「そう言えば、宰相様が来てましたよ。」
「なんて?」
「飛空挺の飛行テストをしたいそうです。」
「おー、お父さんが送って来た設計図の新型出来たのか。」
 飛行魔道具で動力が変更され、大樹に相談した宰相のクラークは新型の設計図を貰い、新たな飛空挺を作っていた。

「それじゃ食堂で何か食べてからクラークさんの所行こっか。」
「チハル、その格好で行くの?」
 制服姿の千春にサフィーナは着替えを進める、千春はリボンカラーブラウスにボウタイボールガウン、ワンピースとカジュアルな服に着替え、サフィーナとサリナを連れ扉を開ける。

「うぉっと!」
「おっと、チハルおかえり。」
「ハルトただいま、なに?用事あった?」
 扉の前で鉢合わせしたエンハルトに千春は声を掛ける。

「今日は昼に帰ってくると聞いていたからな、今から昼食か?」
「そ、ハルトは食べた?」
「いや、まだだ。」
「一緒にいく?食堂だけど。」
「あぁ付き合おう。」
 エンハルトと並んで食堂に向かう千春、千春の棟から王宮に入ると貴族達がすれ違う、貴族は道を空け頭を下げる。

「流石王子殿下、道が割れてるよ。」
「いや、チハルだろ。」
 2人の話を聞きながらサフィーナはクスクスと笑いながらついていく、食堂に着くとハンバーガーを頼み、2人は食べながら会話をする。

「これから何かするのか?」
「クラークさんの所にいくよてー。」
「あー、アレか。」
「多分ソレ。」
「ふむ、一緒に行くか。」
「ハルトひまなの?」
「今の所急ぎの仕事はないな、ヒマでは無いが。」
「そう言えば、試運転はお父さんが帰って来るまで待つ予定だったよねー、初飛行見れなくて悔しがりそう。」
「エンジンではなく飛行魔道具にしたからな、だが安全マージンは何重にもしてるらしいぞ。」
「うん、それは設計図翻訳する時に見たよ、ガチガチに安全設計だったよねー。」
 最後の一口を頬張る千春、2人は食べ終わると、宰相の職務室に向かった。


-----------------


「宰相は居るか?」
「はい、お入りください。」
 従事は扉を開け、エンハルトと千春、サフィーナとサリナが部屋に入る。

「チハル王女殿下、御足労頂き申し訳ありません。」
「大丈夫ですよー、実際に飛ばすんですか?」
「はい、可動テストと浮遊テストは終了しています、タイキ殿より、飛行テストを10日以上する様にと書かれておりましたので、その準備です。」
「どこまで飛ばすんです?」
「リヴィルの予定です、予定では片道1日、稼働状況を確認しながら速度を上げて行く予定です。」
「おぉー、ステルさんの所かー、ステルさんも乗るんです?」
「いえ、必要最小限の乗務員と竜騎士団が護衛で行くだけですね。」
「それじゃ私は何するの?」
「翻訳前の設計図の・・・。」
 クラークは必要な部分を丸で囲むと、チェックする場所を教える、そして飛空艇まで移動する。


---------------


「うひょ~♪」
 千春は飛空艇を見上げ声を上げる。

「これが新しい設計図で作られた中型飛空艇です。」
「これで中型なの!?」
「はい、場所によっては1週間~2週間は移動出来る様に部屋がいくつか作られております。」
「そっかぁ・・・いやデカいなぁ。」
 千春は大型のバスくらいと思っていたが、飛空艇はその数倍はあった、形はアーモンドの様な物に小さな羽が複数付いているような形だ、飛空艇から作業員が降りて来ると、クラークが指示をし千春は指示の場所をチェックする。

「次・・・ふらっぷ?」
「フラップはあの部分です。」
 作業員が指差すのは後部の小さな翼の所だ。

「あれが動くかチェック・・・動かせます?」
「はい。」
 作業員は壁の通信機を使うと、フラップがゆっくり動きだす。

「何に使うんです?これ。」
「風の抵抗を受け浮き上がる時の補助と速度を下げる時に使います。」
「・・・へぇ。」
「チハル。」
「なに?」
「わかってないだろ。」
「・・・てへっ♪」
「チェックは以上になります、有難うございました。」
「いえいえ~。」
 紙をアイテムボックスに入れると千春は飛空艇から降りる。

「あ、ヨリ来たっぽい。」
「迎えに行くか。」
「迎えにいこ~♪」
 作業員とクラークにお礼を言われると、千春とエンハルトは部屋に戻った。


---------------


「こんちわー!」
「よっ!さっきぶりっ!」
 千春は頼子を迎えに行くと部屋に戻る。

「チハル可愛いなその恰好。」
「そう?ヨリのもあるよ。」
「マ?着替えるわ。」
 頼子は寝室に入ると着替えを始める。

「何かしてたの?」
「飛空艇のチェックしてたよ、テスト飛行するんだってさ。」
「おー!やっとかぁ、乗ってどっか行くの?」
「いや~、10日くらいテスト飛行してからだってさ。」
「残念、あ、でも夏休み中旬には乗ってどっか行けるかな。」
「行けるかもね。」
 頼子が着替え終わり応接間に戻るとエンハルトとアリンハンドがソファーで寛いでいた。

「アリンさんただいまー。」
「ヨリさんお帰りなさい、もう休みに入ったんですね。」
「うん、今日終業式おわったからね。」
「何か予定してるんですか?」
「チハル何か考えた?」
「いやー?クッソ寒いし温泉入ってのんびりしてたらよくない?」
「夏休みの間ずっと温泉入るのかお前は・・・。」
「あ!そうだよ!日本でお出かけすりゃ良いじゃん!」
「・・・あ、そうだよ、異世界だからって大雪の中出かける必要ないじゃん!」
 千春と頼子はそう言うと目を合わせゲラゲラ笑う。

「まぁお出かけするのでしたらロイロ殿にゴンドラで運んでもらえば良いのでは?」
 アリンハンドはいつもの移動方法を提案する。

「フェアリーリングで移動しても良いし、寒くない国に行くのもありかなぁ。」
 千春はそう言って庭を見る、庭は真っ白でフェアリーリングも雪に埋まっている、そのフェアリーリングがうっすら光り妖精が飛び出て来た。

「チハルさまー!」
「ありゃ?妖精来たよ。」
「何ちゃんかな?」
「クゥクゥといいますぅ!」
「どうしたの?そんなに慌てて。」
「お助け下さい!妖精喰いが出たんですぅ!」
 クゥクゥはバタバタと部屋を飛び回りながら叫んだ。






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