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10年と1分!

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ピロン♪

「ヨリ来たね。」
 スマホを見ながら千春が呟く。

「迎えに行きます?」
「うん、ちょっと行って来るね。」
 そう言うと日本に戻り玄関を開ける。

「いらっしゃーい。」
「さっきぶりー、って料理でもしてたの?」
 頼子は千春のエプロン姿を見て言う。

「うん、ルノアーさん達に料理教えてたんだよ。」
「へぇ~。」
 頼子を連れて戻ると、続けて麗奈から連絡が来る。

「コンビニだって、何かいるものあるかって。」
「大丈夫だよ、買ってきたし。」
「りょ~。」
 千春が返事をすると頼子がエプロンを付ける。

「ん?ヨリ何か作るの?」
「うん、今日は何作ってる?」
「今タコ飯作ってる、あとは炊くだけ、ルプが肉が良いって言うから肉切ってた所だよ。」
「ほーん、肉かー牛肉?」
「そ、ブラブル。」
「ブラブルね、ビェリー、アレ出してー。」
「あれかぁ?ほいよ。」
 頼子がそう言うとビェリーは大きめの鍋を影から出す。

「お!圧力鍋!」
「うん、すじ肉大量にあったじゃん、お母さんに言ったら貸してくれたんだよ。」
「イイね。」
 千春は厨房に戻るとすじ肉を取り出す。

「ヨリ何作るの?」
「トマト煮作ろうかと思ったけど、タコ飯ならどて煮にするかな。」
 千春と頼子が肉を切り、下ごしらえをする。

「レナ来たから迎え行って来るよ。」
「いてら~い。」
 トタトタと小走りに千春は移動する。

「いらっしゃーい!」
「やほー!」
「美桜達も一緒だったの?」
「みんな考える事は一緒、コンビニで会ったから一緒に来たよ。」
「まぁ入ってー。」
「チハル料理中?」
「うん、ヨリも作ってるよー。」
「私も手伝うよー。」
「うちもー!」
 5人で手を繋ぎ扉を抜け迎え入れる。

「チハル何作ってるの?」
「タコ飯。」
「タコ飯好き!」
 麗奈が聞くと千春は答え、美桜が嬉しそうに言う。

「今ヨリがすじ肉煮込んでるよ。」
「ほほー、すじ肉いっぱいある?」
「大量にあるよ。」
「私もすじ肉で作ろうかな。」
「何作るん?」
「すじ肉で肉じゃが。」
「へぇ、美味しいの?」
「肉がトロットロで激うま。」
「手伝うわ!」
 美桜はそう言うと麗奈と2人で頼子の手伝いを始めた。

「うちら何する?」
「・・・焼くくらいなら。」
「焼くのも危うい。」
 青空、大愛、日葵は千春達を見ながら呟く。

「ソラ、ルプ達のステーキお願いしていい?」
「焼くだけ?」
「んー、大丈夫教えるから。」
「わかった!頑張る!」
「それじゃ肉切ってもらおうかな、肉切った事は?」
「ない!」
「無い!」
「ある!」
「はい、切った事がある日葵が肉切り係ね、これがサーロイン、あとタンも切ってもらおうかな。」
「はーい!」
「まずはタンなんだけど、皮を切ります、こうやって根元の部分を少し切れ目入れて、包丁をす~っとスライドしながら皮を引っ張ると・・・。」
 するすると皮を切り取る千春。

「・・・出来る?ヒマリ。」
「・・・いゃぁ・・・無理じゃないかなぁ。」
「いきなり難易度高いんじゃん?チハル先生。」
「大丈夫!やればなれるよ、タンいっぱい出しておくから!」
 そう言うと大きなタンを6本出す。

「みんなやってみてね。」
「がんばるぞー!」
「「おー!」」
 青空達は包丁を持ち、肉の皮を切り取る。

「チハルー難易度高くない?」
「ちょっとね、でも包丁の使い方覚えるには良いと思うけどね。」
 ステーキ肉を切りながら美桜に答える千春、しばらくすると青空が嬉しそうに声を上げる。

「出来た!」
「どれどれー?おー、がんばったねー。」
「でもちょっと皮に肉がいっぱいついちゃった。」
「うん、大丈夫だよ、こうやって~・・・・」
 千春は皮を下にし、皮に付いた肉をスルスル切り取る。

「この切り取った肉は炒め物にするから気にせず皮とって大丈夫だよ。」
「すげぇチハル。」
「私のコレも大丈夫?」
 大愛の切り取った皮にもたっぶり肉が付いている。

「うん、全然問題ないよ。」
 千春はその皮も手に取ると、同じように切り取る。

「それじゃ残りのタンもお願いしていい?」
「わかりました!チハル先生!」
 そういうと青空達は続けて皮を切り取る。

「うん、一品増えそうだなぁ。」
「牛タンで?」
「うん、この端切れで作ろうかなって。」
「何作んの?」
「そうだねぇ、ルプ達のお酒のツマミかな、アヒージョ作るよ。」
「なにそれ食べたい。」
「ウチも!」
「おっけー、いっぱい端切れでるから大量に作るよ。」
 青空達は真剣に肉と格闘し皮を切り取っている、その姿を千春達は見守りつつ料理を続ける。

「美味そうな匂いがするのぅ。」
「ロイロ、おかえりー、どっか行ってたの?」
「うむ、ちょいとレフ達と警備しておったら、山2つ先にワイバーンがおっての、狩って来た。」
「ワイバーン!?・・・・食べれる?」
「どうじゃろうか。」
「ルノアーさん、ワイバーンって食べれるの?」
「食べれるが・・・美味くはないよ。」
「美味しくないならいらないな、ワイバーンはどうしたの?」
「冒険者ギルドに寄付してきたぞ、ギルマスが泣いて喜んでおったわ。」
「ロイロ・・・それ多分喜んでない。」
「そうか?素材としては高価だぞ?」
「そうなの?サフィー。」
「防具としてはかなり高級な素材になりますよ、初級の冒険者には手が出ないくらいには。」
「へぇ、そりゃギルマスも喜ぶわ。」
 話ししながらも手を動かし料理をする千春。

「チハル酒あるか?」
「ロイロもう飲むの?」
「うむ、結構飛んだからのぅ、休憩じゃ。」
「そっか、なにげに警備とかしてくれてたんだもんね、ちょっと待ってね。」
 千春はそう言うと、切り取ったタンを細く切り、お湯に通す、それをさっと上げると醤油、ごま油、砂糖、唐辛子をまぶし、さっと混ぜる。

「ほい、おつまみ。」
「ほほぉ、こりゃ美味そうじゃ!」
 ロイロは酒とツマミを受け取り応接間に消えて行った。

「ルノアー様、チハル様凄すぎませんか?」
「まぁそう見えるよな。」
「はい、今の料理も1分かからず作りましたが。」
「まぁ作った時間はそうだろうが、今まで料理に費やした時間を考えればなぁ、チハルさん、何年くらい料理してるんだ?」
「ん~8歳くらいの時には料理してたから10年くらい?」
「って事だ、この10年があるから作れるんだよ、1分で作った料理は10年と1分の料理って事だ。」
「ルノアーさん言い過ぎー。」
 千春は笑いながらルノアーに言う。

「千春こっちはもう煮込むだけだよ、何かする事ある?」
「んー私もあと焼くだけ。」
「ミオ、レナどう?」
「うん、あとは煮込むだけ。」
「よし、ソラ達手伝うか。」
 千春達は青空を手伝い、肉を切り分けていった。


--------------------------


「ギルマス・・・どうします?コレ。」
 冒険者ギルドの解体主任は、冒険者ギルドマスターのレオに問いかける。

「・・・解体するしかないんだが、氷魔法を使える冒険者は居るか?」
 5頭のワイバーンを見ながらレオは呟く。

「ワイバーンをですか・・・厳しいですね。」
「ワイバーンの解体が出来る人も願いします。」
「そうだな、コイツを出荷するまで解体となると1日仕事だからなぁ。」
「ギルマス!!!狼の牙が戻ってきました!!!」
「なに!?ユーリンは居るか!?」
「はい!居ました!」
「すぐに行く!」
 レオはすぐに受付まで行くと、狼の牙が受付と話しをしていた。

「どうしたんっすか?ギルマス。」
「そうっすよー、仕事はやめてくださいよー、俺たち帰って来たばっかですぜ?」
「すまん、ユーリンに用事があってな。」
「へ!?私?」
「あぁちょっとついて来てくれ。」
 レオはそう言うと中庭に連れて行く。

「ユーリン、コイツを収納出来るか?」
「げぇ!?ワイバーン!?」
「あぁ、何頭でも構わんのだが。」
「ん~今入ってる魔物を出せば3頭入るかなぁ。」
「それで構わん、今入ってるのは優先で解体させて色付けるから頼む。」
「りょ~かい、パトリス良いんだよね?」
「もちろん、それで、コイツはいつまでユーリンが預かるんで?」
「解体が終わればすぐに出してもらう、2~3日頼む。」
「あー、その間仕事できねぇなぁ。」
 パトリスは含みの有る言い方をする。

「・・・わかっとるわ、ワイバーンの売却1割をお前らに渡す。」
「へ!?良いんですかい?!」
「構わん、もともとタダだからな。」
「えー!ギルマスこのワイバーンもらったの!?」
「ロイロ殿が好きにしろって置いてったんだよ。」
「おぉーふとっぱら~♪」
「了解!それじゃ出しますねー。」
 ユーリンは自分達が狩った魔物や魔獣を出すと、シャルルが氷魔法で冷凍する、そしてそのままユーリンはアイテムボックスにワイバーンを収納する。

「助かった、受付に行って報酬を受け取ってくれ、ワイバーンの保管はギルド依頼として別報酬を出しておくからな。」
「おっしゃ!確定依頼じゃん!やったね!」
「パトリス飲みに行こう!」
「そうだな、予定外の収入だし、良い物食べに行こうぜ!」
 ロイロのお陰で思わぬ報酬が手に入る事になった狼の牙は、ウキウキで街に繰り出した。




 



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