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呼び出し!

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「チハル王女殿下、いらっしゃいますか?」
 扉の向こうから声が掛かる。

「はーい、サフィーついて来て。」
「はい。」
 2人は扉を抜けるとセバスさんが居た。

「どうしました?」
「国王陛下が王女殿下がお手隙でしたら来て頂けないかと。」
「うん、初詣も終わったし大丈夫ですよ、ちょっと待って下さいね。」
 扉を通り事情を話すと全員王国に入れる。

「私1人です?」
「同行する方はお伺いしておりませんので、どなたと行かれても大丈夫かと。」
「そっか、それじゃサフィーついて来て。」
「儂も行こう。」
「俺も行こう、挨拶くらいしといた方が良いだろ。」
「ユラもいくー!」
「んじゃお父さん待っててね、モリーお願いね。」
「了解です!」
「いってらっしゃい。」
 ユラはルプに跨り楽しそうに着いてくる、すれ違った者は皆ギョっとした顔をし頭を下げる。

「何か偉い人になったみたいだね。」
「王女殿下で噂の聖女様ですよ?偉いに決まってるじゃ無いですか。」
「千春はこっちでは王女様なのか。」
「ユラも王女様だよ。」
 ユラは気にせずルプの首に抱きついている。

「こちらで御座います。」
 セバスが連れて来たのはエイダン陛下の職務室だ。

「チハル忙しい所すまんな。」
「ごめんなさいね。」
 千春が部屋に入るとすぐにエイダン陛下とマルグリット王妃が謝る。

「大丈夫ですよ、今日の予定終わっちゃったんで。」
 初詣も夜中に行き暇だった千春は何でも無い様に答える。

「あ、そうだお父様、お母様、新しい家族です。」
 そう言うとユラを乗せたルプが入ってくる。

「なっ?!」
「なに?!」
「お初にお目に掛かる、千春の居た国から来たルプと言う、千春と契約を結んだんでな、挨拶に来た。」
「と、言うわけで、ペットが増えました。」
「ペットって言うなよ。」
「儂もペット扱いじゃ諦めろルプ。」
 2人は口を開けたまま固まっていた。

「それでお父様、どう言ったご用件で?」
「あ、あぁ、その前にルプと言ったか、大丈夫か?魔獣では無いのか?」
「はい、魔獣ではなく聖獣のフェンリルだそうですよ、アイトネが言ってたんで間違いないです。」
「女神様のお墨付きなら大丈夫ね。」
「はい、私の契約後はアイトネの眷属になりますから大丈夫です。」
「そんな者が・・・なら尚更大丈夫か。」
「はい、大丈夫です。」
「いや、違う意味の大丈夫なのだが。」
 やっと笑顔を見せたエイダンに千春が何かと聞く。

「思った以上に噂が広まっておってな、昨日1日で市井でも広がっておる、しかもチハルがドラゴンを使役してるともな。」
「クレア湖から帰って来た時も、ローレルの応援に行った時も乗って行ったでしょう、結構見られてた様なのよね、ただでさえドラゴンが飛んでたら見るものね。」
「でも遅かれ早かれ街の人にもバレますよね、良いんじゃないですか?」
「それは構わんのだが凝りもせず教会の者が来たのだ、メグに聞いたが女神様が直接話してくれると言うのは本当か?」
「はい、聖女が付いた時に文句言ったら言ってくれるって言質取ってます。」
「そうか、それでは返事を出して良いんだな。」
「はい、良いですけど面倒でしたら教国消し飛ばせますけど?」
「それもメグから聞いた、流石にそれはやり過ぎだろう。」
「まぁそう思って私も止めましたけどね。」
 ケラケラ笑いながら千春はエイダンに言う。

「ふむ、それでは返事を出すが時間は何時がいいかの?」
「今回は何時でもいいですよ、今回は私とドラゴンになったロイロ、ルプで話しますから。」
「チハル私は居なくて大丈夫?」
「はい、今回はゴネたら即アイトネ呼びますし、最悪その場で天罰ですよ。」
「うむ、想像したくないな、それでは正午の鐘の後と言う事で連絡を入れよう、また大司教が来るかもしれんが・・・チハル、穏便にな?」
「わかってますってお父様、お・ん・び・ん・に、済ませますよ?」
 千春とサフィーナが部屋を出、ロイロとユラの乗ったルプが続いて出る。

「さて、お昼までどうしようか?」
「腹は減っておらんしのう、二度寝でもするか?」
「なんで寝るのよ。」
「ほれ、ユラは寝とるぞ。」
 ルプの上で気持ちよさそうに抱き付いていたと思ったら寝ていた。

「器用に寝るねぇ。」
「あぁ、寝たままバランスを取ってるのが分かるな、木の上でも寝れる種族なんじゃないか?」
「取りあえずチハルの部屋に戻ろうか、儂も寛ぎたいぞ。」
「そだねー、お父さんとモリー置いてきてるし。」
 サフィーナが前を歩きゾロゾロと廊下を歩く、すれ違う貴族の様な者は皆頭を下げていた。

「たっだいまー。」
「おかえりー。」
「おかえりなさいチハルさん!」
「ルプ、隣の寝室にユラ寝かせよ。」
「こっちは寝室か。」
「昨日は遅かったんじゃー儂もひと眠りする。」
 ロイロがベッドに飛び乗りユラを受け取るとルプもベッドに乗る、そして丸くなり腹にユラを置く。

「なにそれ気持ちよさそう。」
「デカいベッドはいいな、俺でも寝れるじゃないか。」
「ちょっと、私も入れてよ。」
 千春もユラを起こさない様にルプのお腹に寄りかかる。

「あーこれは寝れるわ、モッフモフだぁ。」
 そして4人は昼までグッスリと睡眠を取った。


------------------------------

 エイダン陛下の職務室でエイダンとメグが千春を見送った後2人は話をしていた。
「メグ、どう思う?」
「何がです?」
「何ってあのフェンリルだ。」
「何も無いでしょう?女神様の眷属になるような聖獣ですわよ?」
「確かにそうだが、ドラゴンとフェンリルか、どちらか一匹でも国が亡ぼせるぞ?」
「そうですねぇ、私1人でも小国なら亡ぼせますけどね。」
「・・・・確かにお前なら出来るな。」
「えぇ、ホウラーク教国が懇意にしている隣国のファスケス国が仮に軍を連れて来ても追い返してあげますから心配しなくても大丈夫ですわよ。」
「仮にそうなったとしても儂らが出る幕も無さそうだがな。」
「そうですわね、その前に教国は女神様に神罰を食らい、ファスケスはロイロとルプに蹂躙されるでしょうねぇ。」
「心配するのも馬鹿らしくなるな。」
「あら、私は心配ですわよ、チハルに嫌な思いをさせたくないですもの。」
 エイダンは、「はぁ」とため息を吐き話題を変える。

「貴族はどうする?」
「近いうちにお披露目は必要でしょうね。」
「もうすぐ社交シーズンだからな、そのタイミングになるだろう、チハルの方はメグに任せるぞ。」
「はい、確かに承りましたわ、ドレス着てくれるかしら?」
 フフッと笑い以前着せ替え人形にした事を思い出す。

「嫌がるなら無理をさせるなよ、本来ならそう言う事には関わらせないつもりだったからな。」
「分かってますわ、でも一緒にお茶会とかしたいじゃない?可愛いわよ~チハルのドレス姿。」
「それは見てみたいが、万が一にも貴族に手出しさせるなよ。」
「そんな事する貴族が居たら一族郎党根絶やしですわよ。」
「やめろ、ほんっとにやめろ。」
「あ、ユラのドレスも新調しなくちゃ、それじゃ私は行きますわね、貴族の方ちゃんと釘刺しておいてくださいな。」
「あぁわかった。」
 マルグリットは部屋を出る、そして入れ替わりに宰相のルーカスが入ってくる。

「陛下、商業ギルドのメイソンが来ております。」
「うむ!よし!気を取り直して行こう!セバス!リバーシを持って来てくれ!」
「生産依頼でしたか。」
「あぁ、楽しい事でも考えんとやっとれん!」
 エイダンは現実逃避をするようにメイソンと商談をする事にした。

「まぁ胃に穴が開くよりは私も良いですけどねぇ。」
 ルーカスはこれから呼び出し釘を刺す貴族を頭の中で選んでいた。



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