上 下
50 / 680

父と特上寿司!

しおりを挟む
 クリスマスから三日後の朝、いつもの様にマルグリットの部屋で起きた、千春は冬休みに入り午前中は門の部屋で、夜はマルグリットとユラ3人で過ごしていた。

「・・・ふぁぁ。」
 起きて横を見るとまだマルグリットとユラは寝ていた。
 (メグ様昨日飲んでたからなー、良く寝てるわー、ユラちゃんは相変わらず可愛い・・・)
 今日千春の父が帰って来る予定の日だ、半ば諦めてはいるがクローゼットの扉の事はどう言えば良いんだろうかとベッドで考えているとマルグリットが目を覚ます。

「おはようチハル、今日は寝顔を見れなかったわねぇ。」
「おはようございますお母様、今日は私が寝顔見てましたよ。」
 2人は目を合わせニッコリと微笑み合う、そして幸せそうに寝ているユラを見ながら小さな声で今日の予定を話した。

「んぅー・・・おはようございます。」
 ちょっと寝ぼけ気味ながら2人に挨拶をするユラ。

「「おはようユラ」」
「それじゃ私は連絡が入ってるかもしれないんで、一度向こうに行ってきますね。」
「分ったわ、時間に余裕が有るようだったら連絡を寄こして頂戴。」
「わかりました。」
 そう言って千春はベッドから出て着替える、ドアを開ければサフィーナとモリアンが挨拶をする。

「おはようございますチハル王女殿下。」
 サフィーナがいつもの挨拶をしモリアンは頭を下げる。

「スマホの通知確認したいから一回あっちに行くね。」
「はい、お供いたします。」
 3人は門の部屋に向かう。

「チハル様今日は御父上が帰って来られる日でしたよね?」
「うん、昨日のナイトフライトがなんちゃら言ってて昼前くらいって言ってたんだよねー。」
「昼食はどうされます?」
「んーお父さん食べて来るかなー、取りあえず連絡待ちかな?」
 3人は門の部屋に着き千春はスマホをチェック、まだ連絡は入ってなかった。

「あ、ヨリとミオからLIME入ってる、んーカラオケ好きだなぁでも久しぶりに歌いたいな。」
「お友達と遊ぶのも大切な事ですよ。」
 お茶を注ぎながらサフィーナは言う。

「そう言えばサフィーとモリーはいつ休み取ってんの?いつも居るよね?」
「休みですか?そうですね、家の事で何か有ったり社交シーズンですとお休みは取りますが決まって休むと言う事は無いですね。」
「えー!休み無いの?」
「えぇ、こちらでは普段休みは無いです、ある程度纏めて休むことは有りますけどね。」
「ブラックじゃん・・・王宮の侍女。」
「チハルさんは学生で7日に2日くらい休み取ってますよね、仕事してる人も休んでるんですか?」
「そりゃそうだよ、少なくとも7日に1日は取ってるよ!」
「いいなー!私も休みたーい!」
「モリアンは毎日休みみたいな物でしょう、チハルのお世話は本当に手が掛からないんですから。」
 サフィーナは呆れたようにモリアンを見る。

ピロン♪

「うぉ?あ、お父さんからLIME来たー。」
「もう帰って来られますか?」
「うん、今空港出たらしくてタクシーで帰って来るってさ、んじゃ私はあっちで待機してるから後よろしくね、もしかしたら数日来れないかもだから。」
「分りました、何か有りましたら声を掛けて下さい、聞こえてますから。」
「りょうかーい、モリー、メグ様に連絡しておいて貰える?」
「わかりましたー、ご武運を。」
「別に戦いに行くわけじゃないんだけど・・・まぁいいや、あとよろー。」
 千春はクローゼットを閉め父親を待つ、頼子と美桜、麗奈のグループLIMEで遊ぶ計画を組みながら。

「ただいまー!千春ー!かえったよー!」
「おかえりなさーい。」
「寂しかった!?ごめんね連絡もあんまり出来なくて、時差が有るからしょうがないけど!」
 スーツ姿の父はキャリーケースを運びながら千春に声を掛ける。

「お疲れさまー時差ぼけ大丈夫?」
「うん、大丈夫飛行機で無理やり寝たからね、せっかく千春と久しぶりに会えたのに朝から寝てたら申し訳ないじゃないか。」
 2人はリビングに移動し千春はソファーに座る、父はスーツを脱ぎながらお土産の話をする。

「ケースに色々買って来たから開けて良いよ。」
 父はそう言いながらクローゼットを開ける。

「あ!」
「ん?・・・・え?」
 クローゼットを開けると掃除をしているサフィーナと目が合う、サフィーナはニコリと笑いお辞儀をする。

「千春・・・?ナニコレ???」
「んっとねー異世界の扉。」
「はぁ?」
 すごい勢いで後ろの千春に向き直り事情を聞く、千春もまさか帰ってきて数分で開けられるとは思っていなかった。

「なんでこんな・・」
 父はそう言ってクローゼットの中に手を伸ばすが入れなかった。

「あ、お父さんも通れないんだ。」
「え?千春は通れるのか?」
「うん、なんか私だけみたいだね通れるの。」
「えっと整理しようか、これは異世界の扉なのか?」
「そう、そんで向こうからも私しか通れないの、まさか数分で開けるとは思わなかった。」
「そりゃぁコート掛けるだろ、しかし、これは、いや、向こうに行ってみたいな。」
 千春は魔導士団長ローレルと話をした内容を説明する、そして父は暫く考え事をしていた。

「うん、凡その見当は付いた、それで物は持っていけるんだよね?」
「持っていけるね、持って行けなかった物は無いし向こうからも持ってこれるよ。」
「ふむ。」
 そう言うと父はおもむろにティッシュを丸め扉に投げる。

「あ、跳ね返った。」
「うん、物を持って行けるけど、それは千春が持ってる場合だけみたいだね、それじゃぁ千春ティッシュの箱をクローゼットの扉にまたがる様に置いてみて。」
「ほい。」
 ティッシュを持ってクローゼットに行き扉の真ん中に置く。

「うん、手を放しても切れたりしないか。」
 そして父はティッシュを持ちまた扉に入れるが塞がれる。

「わかった、この扉は使用者登録みたいな感じで千春だけ通れるわけだ。」
「あーそんな感じなのかー、でもメグ様とかお父様がお父さんに会いたがってたのになー。」
「・・・ちょっと待って、お父様って何?」
「あ、えっとね、私向こうで王女様やってるの、国王陛下がお父様でメグ様が王妃様でお母様。」
「ええええ!!なに!?あっちで結婚しちゃったの!?」
「ちがうちがう!養女で生活させて貰ってるんだよ!」
「はぁぁぁぁ!今年一番びっくりしたよ!」
「異世界の扉より?」
「そりゃそうだよ!」
「そんなにか・・・・」
「そんなにだよ、あーびっくりした、それと多分お父さんあっち行けるよ。」
「え!?なんで?!」
「ちょっと千春こっち来て。」
 そう言って千春を呼ぶと手を繋ぐ。

「それじゃ千春向こう行こうか。」
「え?」
 背中を押され千春は扉をくぐる、そして父も付いて行くと何事も無く通れた。

「ええええ!!!どういう事!?」
「簡単な事だよ、お父さんは千春の『荷物』なんだ。」
「・・・・あぁ!そう言う事か!」
 そしてふと思っていた事を千春は実行する。

「サフィーちょっと来て!」
 そういってサフィーナの腕を取るとそのまま扉をくぐる。

「うわぁ!通れた!」
「・・・・通れましたね、まさかこんな簡単な事で通れるなんて思いませんでした。」
 そして2人はまた手を繋ぎ扉を通る。

「千春その子の言葉分かるの?」
「うん、あー!そうだった翻訳できる魔道具を借りてるんだよ。」
 そう言って千春はネックレスにしている指輪を取り出す。

「チハル、こちらを。」
 サフィーナがそう言って出したのは魔石の付いたブローチだった。

「これは?」
「同じく翻訳の魔道具です、御父上にお渡しください。」
 千春は取りあえず父にブローチを付けさせる。

「これでいいか?」
「うん、多分大丈夫。」
「初めまして、チハル様の付き人をさせて頂いてますサフィーナと申します。」
 サフィーナは挨拶をし綺麗なお辞儀をする。

「これはご丁寧に、千春の父、藤井大樹(たいき)と申します。」
「タイキ様私に敬語は不要で御座いますので。」
「いや、それは・・・どうなの?」
 不安になり千春に問いかける。

「大丈夫だよ、私も基本敬語使わないし。」
「それはダメなんじゃないの?」
「だって使うと皆が恐縮して逆に面倒なんだもん。」
「そっか、王女様やってるって言ってたね、冗談じゃ無かったんだね。」
 アハハハと乾いた笑いをしながら千春を見る大樹だった。

 コンコンコン
 ドアのノックが鳴り返事をする間もなくドアが開く。

「ただいま戻りましたぁ!・・・あれ?千春さんもうバレたんですか?」
「チハルおねえちゃんおかえりなさい!」
 呆れたように言うモリアン、ユラはいつもの様に千春を見ると抱き付いてくる。

「ケモミミ・・だと?」
「お父さんケモミミってわかんの?」
「そりゃお父さん海外で暇な時は漫画とか読んでるから、異世界転生とか大好きだし。」
「あー、だから扉の時も最初こそビックリしてたけど冷静だったのね、この子は私が事情が有って保護したユラちゃん、この子も私と一緒で王族の養女にしてもらった私の妹だよ。」
「妹ぉ!?」
「そ、可愛いでしょ。」
「うん、すっごく可愛い。」
「・・・チハルおねえちゃんのおとうさま?」
「うん、お父様だと国王陛下と同じ呼び方になるから『おとうさん』って言ってあげてね、ユラちゃんは私の妹だからユラちゃんのお父さんでもあるよ?」
「おとうさん?」
 大樹を見ながら首をコテンと横に倒し問いかける。

「うん!ユラちゃんのお父さんでいい!何も問題無い!」
「ですよねー、可愛いよねー。」
「まぁそれは置いといてだ、取りあえず今からの事を考えよう、先ずは王様と王妃様に挨拶か。」
「あ、そうだった、来たら連絡してってお母様言ってたね。」
「はい!連絡してきますね!」
 モリアンはドアを開けあっという間に消えた。

「あの子は?」
 元気に入って来て、元気に消えて行ったモリアンを不思議そうに大樹は見ていた。

「あの子も付き人残念侍女モリアンちゃんです。」
「うん、あの行動とその説明で把握出来た、でも憎めないって奴だな。」
「よく分かるねお父さんそれだけで。」
「そりゃぁ千春があの子を見る目を見てたらわかるよ、良い子そうだしな。」
 2人は笑いながら話す、それを聞いていたサフィーナもクスクス笑っていた。

「手土産も持って行くとするか、んー・・王様は酒飲むのか?」
「陛下も王妃も飲むよ、あと第一王子も飲むね。」
「ほう、それじゃぁお父さんのお酒と空港で買ったお酒持って行こう、千春向こうに連れてってくれ。」
「ほいほいー。」
 2人は手を繋ぎ扉を抜ける。

「お父さんお昼どうするー?」
「そうだなー、何か頼むか?」
「そだねー、あ!そうだ!サフィーとユラこっちに連れてきていい?」
「ああ、良いぞ。」
「サフィー、ユラちゃんこっちきてー。」
 扉を跨ぎ千春は手を出す。

「はい。」
 サフィーナはさっきも来たので普通に手を繋ぐ、そして真似してユラも手を繋ぎ扉を抜ける。

「うわぁこっちがチハルおねえちゃんのせかい?」
「そだよー、今からご飯頼むから一緒にこっちで食べよう!」
「千春何を頼む?寿司でも取るか?」
「寿司・・・いいの?」
「良いぞ、どうせなら特上取ろうか、それよりサフィーナちゃんとユラちゃんは生魚食えるのかな?」
「サフィー生の魚って食べれる?」
「食べた事無いですね。」
「ユラちゃんは?」
「ないよ?なまでたべたらおなかいたくなるって。」
「美味しくてお腹痛くならないって言ったら食べる?」
「食べます。」
「たべるー!」
「お父さんOK!それじゃUnya-Eatsで頼むねー。」
 千春はそう言うとスマホをぽちぽちとやりながら注文をする。

「何人前取る?」
「お父さんお腹すいてるから多めに取って、さっきのモリアンちゃんも帰って来るんじゃない?」
「あ、見せびらかしたら可哀そうだね、5人・・・お父さん2人分食べるから多めに8人分で注文するよー。」
「任せたー。」
 大樹は千春に丸投げしながら荷物を解き手土産の準備をしていた。

「ただいま戻りましたー!・・・あれ?誰も居ない。」
 扉の向こうでモリアンの声がした、そして扉の前に現れ千春と目があう。

「・・・えええええ!!!!!なんで皆そっちに居るんですか!?」
 そう言って扉にへばりつくが見えない壁が邪魔してモリアンが面白い事になっている。

「はいはい、ちょっと待ってね~。」
 千春は扉を跨ぎモリアンを掴むと日本へ引き寄せる。

「うぁぁ、通れるようになったんですね。」
「通れるようになったんじゃなく、方法が分かっただけなんだけどね。」
「千春、一応通れる事を教えるのは付き人と身内だけにしといた方が良いかもしれないな。」
「なんで?」
「こっちの世界に興味を持たれる事も有るかも知れない、通る条件が『千春と』だからだ、千春に何かあったらお父さん泣いちゃうからね?」
「わかった、ここに居る3人とあとは国王陛下、お母様、ハルト兄様、ローレルさんくらいかな?」
「そうですね、後は国王陛下や王妃殿下が必要と思われる人に教えるくらいだと思いますので。」
 そうこうしている間にUnya-Eatsが寿司を持ってきた。

「うっはー!久しぶりのお寿司!」
「うん、特上にして良かっただろ、お父さんも寿司食べたくて食べたくて・・夢にまで出たよ!」
 海外出張が長く、和食専門店に行っても美味しくない和食がクソ高いと大樹は千春に愚痴っていた。

「私の分もあるんですかー?」
「モリーのもあるよ、生魚食べれる?」
「食べた事無いですけどチハルさんのオススメ料理でハズレは有りませんから大丈夫です。」
「それじゃ食べよう、ユラちゃんはこの列だけサビ抜きだから取ってあげるね。」
 皆はテーブルを囲み寿司を食べ出す。

「米に酸味が有りますが脂の乗った魚と醤油が混ざってとても美味しいですね。」
 大トロを食べたサフィーナは料理番組かと言うくらいの説明をくれる。

「チハルおねえちゃんこれあまい!おいしい!」
 玉子の握りを食べたユラはニコニコしながらモグモグしている。

「うん、久しぶりの寿司は美味いな、もうお父さん涙出てきた。」
 うんうんと言いながら寿司を味わう大樹。

「サーモンうまー、もうサーモンしか勝たん。」
 大好物のサーモンの握りを味わいながら食べる千春。

「・・・・・・・美味ぁぁぁぁぁぁ。」
「あ、叫ばなかった。」
「成長しましたわね。」
「もぐもぐもぐもぐ。」
「叫ぶの?モリアンちゃん。」
 握りこぶしを作り体で美味しさを表現するモリアンを皆は見つめる、そして生魚もパクパク食べるユラを見ながら千春も久しぶりの寿司を味わった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

侯爵令嬢として婚約破棄を言い渡されたけど、実は私、他国の第2皇女ですよ!

みこと
恋愛
「オリヴィア!貴様はエマ・オルソン子爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺様の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄をここに宣言する!!」 王立貴族学園の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、エリアス・セデール。ここ、セデール王国の王太子殿下。 王太子の婚約者である私はカールソン侯爵家の長女である。今のところ はあ、これからどうなることやら。 ゆるゆる設定ですどうかご容赦くださいm(_ _)m

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

義理の妹が妊娠し私の婚約は破棄されました。

五月ふう
恋愛
「お兄ちゃんの子供を妊娠しちゃったんだ。」義理の妹ウルノは、そう言ってにっこり笑った。それが私とザックが結婚してから、ほんとの一ヶ月後のことだった。「だから、お義姉さんには、いなくなって欲しいんだ。」

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

処理中です...