鬼畜先輩と俺

猫山亭 灰色

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アレにジャムを塗ることについて

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  最寄駅から、うちのアパートまでの15分。
 トコトコと歩きながら作品の構想を練る。

 基本的な構成としては、本日、仕入れたばかりの鈴木君の体験談をベースとしよう。
ちょうど学生と教師の話っていう依頼だったし。
 ネタはフレッシュなほうが(しかしハードな体験談だった。菅田先生は鬼だ。聞いているうちにちょっと鼻血が出たくらい)。

 しかしながら作品のことを考えると、にやけ顔が直らない。
 やっぱり、創作活動って楽しいな。
 たとえそれが、限りなく鬼畜な所業の描写であってもだ!

 道ですれ違った大学生風の女の子が、思いっきり不審者を見る目をしている。
 さぞかし不気味だろう。
  うん。自分でもそう思うよ。
 男だったら、たぶん通報されてたんだろうな。。。
 
 帰り道のコンビニでミックスサラダのちょっと高いやつと、いかの一夜干し、
 それとウィスキーのミニボトルを購入する。

 以前から、コンビニのサラダの値付けには納得がいかない(少しパプリカが入っているだけなのに、高すぎないだろうか?)
 でも自分で各種の生野菜を全種類、買うことを考えたり、ビタミンの事を考えると買うしかない。
 そんな脅迫観念にかられる。実にうまいやり口だ。

 ワタシの生活において、お酒はほぼ必需品、っていうか毎日飲んでいる。
 たとえ、翌日に健康診断があっても(良い子は真似しないように)。

 アルコール類で一番好きなのはビール。
 それもプレミアムタイプじゃない普通のやつ。

 ただし30歳を過ぎて代謝が悪くなってきているので、極力、冷たいビールは飲まずに、できるだけ蒸留酒を飲むようにしている(だからといって、ぬるいビールも飲まないけど)。
 それでも体調が悪いと、朝方、見栄でつけている、薬指のリングが外れなくなる時があるから要注意。
 寝ている間に、一切の汗をかいていないのだろうか。。。
 
 アパートにたどり着くと、まずエレベーターを待つ間に、ウィスキーをミニボトルからそのまま、ラッパ飲みする。
 女子として正しくないのはわかっているが、我慢できなかった。
 液体が通ると同時に、食道が熱く焼ける。その感じがすごくいい。
 このとき、ふと『あんまり値段が変わらないならミニボトルではなく、普通のボトルを買えばよかった』という後悔が早速にじんでくる。

 そう思いながらも、もう一口、二口とウィスキーを含んでいると、下りのエレベーターに乗ってきた五歳くらいの女の子と目が合ってしまった。

『こんな女に、あなたは育ってはだめよ。』

 なぜか乳母のような気持ちになり、外へ遊びに行こうとしているであろう、女の子の背中をじっと見つめる。
 ただ、じっと見る。
 女の子がいなくなってからもしばらくは遠い目をしていたが、とりあえずエレベーターに乗り込み、六階のボタンを押す。

 このアパートに越してきた六年前は、ダイエットのつもりもあって、六階まで地道に階段を使っていたが、今ではそんな体力も気力もない。
 下手すると、二階のあたりで呼吸が乱れ、あらためてエレベーターに乗ってしまうくらいだ。

 玄関口で靴を脱ぐのと同時に、ウィスキーを流し込む。
 ふと気付けば、この時点でミニボトルは約半分に!

 誰だ、勝手に飲んだやつは! と犯人捜しをしそうになるが、当然、飲んだのはワタシだ。
 
 今からでもコンビニに戻って、ウィスキーを追加購入するべきかとちょっと迷うが、まあいいや。
 確か、3ヶ月くらい前に、ふと思いつきで、牛タンシチューの作成用に買った安い赤ワインが残っているはずだ。
 牛タンシチューは結局、作らなかったけど。。。
 でもそのおかげで今日、ワインが飲める。
 3ヶ月前の自分、グッジョブ!
 ワインがお酢になってたら、ダメだけど。

 リビングのテーブルに、買ってきた惣菜類を並べながら、さらにウィスキーをあおる。

『おつまみ、いらなかったな』

 そう、感じたため、机に置いた惣菜類を冷蔵庫へ。
 明日の朝、トーストと一緒に食べよう。イカの一夜干しは、イチゴジャムとはあんまり相性がよくなさそうだけど。
 うちにはトーストに付けられる、スプレッド類がイチゴジャムしかないから仕方ない。

 それからスケッチブックをテーブルいっぱいに広げ、作品について、思いついたまま、色々な設定を書いていく。
 気付くと、ウィスキーは空になっていたので、見つけ出した赤ワインをまたしてもボトルごとラッパ飲みしようとしたところ、異常な酸味を感じたので中止。
 ワインに詳しくないので、元々の味なのか、悪くなっているのかが判断できない。
しかたなく、お酒はなしで、創作作業に耽る。
ただただ、耽る。

 ふと、正気に戻ると、すでに21時だった。
 確か、家に戻ってきたのは15時くらいだから、あっという間に6時間も。。。
 その間、いっさい居眠りもしていないはずなのに、ほぼ記憶が残っていない。

 ただしスケッチブックには物凄い量の情報が書き込まれていた。
 これはもう、神が降臨してきたとしか思えない。
 ただし、たぶん、それは邪神。 

 それからノートパソコンを立ち上げると、物凄い勢いでタイピングを始めた。
 指が自分のものと思えないくらいの速さで動くのが、止められなかった・・・。
 
 そして作品の中では、みるみるうちに、鈴木少年が蹂躙されていく。
 蹂躙というか、むしろ破壊か。。。
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