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序章:私は今も生きている

序章:私は今も生きている

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 生きていたければ、戦い続けなければならない。組織で自分の世話をしていた者の一人がそんなことを言っていたことがある。
 そんな彼はいつか任務でしくじって死んだ。
 それもよかったのかもしれない。果てしない諦観の中で私はそう思ったものだ。彼は夢の中で死ねたのだから。楽になれたのだから。

 世界を変えるために生み出された『白き救世主』。即物的な奇跡を起こすために作られたモノ。
 自分の身体を流れる血の故国にあった、過去の亡霊に取り憑かれた組織は、悪魔に一人の少女を売ってそれを得た。売られた少女は私。得られたモノも私。

 私は生きて戦い続けた。闇の中で這いずり回った。白き救世主などとんでもない。私はただの殺し屋であった。一体何人の人間を殺したのか、数え切れもしない。

 それでも私は戦い続けた。組織の為などではない。自分が戦わなければ自分の可哀想な弟や妹達が増え、そして苦しむだけなのだ。

 そんな生活に終わりが来た。計画遂行の日が来たのだ。これで誰も苦しまなくて済む。私は喜び勇んで使命の遂行に向かった。自分が犠牲になることはどうでもよかった。

 運命の一週間。私はその中で数多くの友と出会い、彼らと共に生きようとした。だが、結局運命に抗うことはできず、仲間のほぼ全ては死に、私は大切な仲間と戦う道を選び、そして討たれた。

 私の今までの人生は何だったのだろう。何度も繰り返した自問自答を私は飽きもせずに繰り返す。答えはいつも一つ。無意味だった、それだけだ。使命を果たすこともできず、大切な人を一人も守れなかった私の生は無意味だったのだ。

 だが、今も私は生きている。裏山の陰から顔を出した朝日を眺めて、私は改めて確認する。私は生きている。そして、これからも生き続ける。生きる意味を見つけたからだ。もう一度使命を思い出したからだ。

 雨の中出会った白い少女。自分を助けてくれた少女は、誰かに似た目をしていた。私はそれをはっきり覚えている。私の弟だ。この世の全てを恐れていて、それでもこの世界で生きる意味を求めて抗い続ける目だ。
 私の使命。それは世界を変えること。理由は組織のためではない。ただ、これ以上私や弟達のような悲しい存在を生み出さないためだ。
 もう一度、使命を果たそう。私はそう誓った。この少女を守り、彼女を怯えさせる世界を変えてしまうために。

 遠くで声がする。それは風の音だったのかもしれない。しかし、私には何故だか弟達の声のように聞こえた。
 ごめん、私はまだ逝けない。そう言って、私は歩き始める。私が守るべき少女の下へ。今度こそ、使命を果たして見せる。そう胸の誓いを新たにして。
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