G.F. -ゴールドフイッシュ-

木乃伊(元 ISAM-t)

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G.F. - 大逆転編 -

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僕の口から出た意外な言葉に、大基さんは一瞬驚いてた。


『あ、あったなぁ。そんなことが』

『ですよね』

『去年の…えぇと、夏だったかな』

『8月ですよね。前あったお店に』

『そうそう』


確かに…《Kira♠︎m》所属のアイドルグループ《T.S.S.D/Top Secret Sparkle Dolls》のリーダー、石田美希さんは大基さんのお店に来ていた。
そして、大基さんに『金魚ちゃんの大ファンなんです!』『東京から来ました!』『でも…会えてないんですよね…』って会話を交わしていたらしい。


『…でさ、金魚のことを色々と訊かれるなかで、俺が作った金魚のピアスの話もしたんだよ。それと俺も金魚も《アンナファミリー》の一人だってことも』


あぁ…なるほど。
それで金魚ピアスには《本物》と《レプリカ》があることも話して、石田さんは金魚ピアスのレプリカを購入したんだ。


『それで…その金魚ピアスのレプリカは…』

『あぁ。そこに置いてあるよ』


大基さんの指差した先…そこには腰の高さほどの木製棚が置いてあって、その上に白色のピアススタンドが3つ置いてあり、その一つが《金魚ピアスのレプリカ専用》になっていた。


『結構売れてるんだぜ。レプリカの金魚ピアス』

『そうなんですね』


僕はそのピアススタンドの方へと向かい、自分の左耳にぶら下がる金魚ピアス《赤姫と黒助くん》を外し、ピアススタンドへと近づけた。
そして小声で語りかける…。


「赤姫。黒助くん…良かったね。こんなに仲間がいっぱい居るよ…」


確かに…並べてみると良く分かる。
僕の金魚ピアスのほうが、とても丁寧に繊細で可愛くできてる…あっ。


『すいません。ちょっと…』


僕の左後ろから、女の子の腕が僕の前にそっと現れた。


『あの、金魚ちゃんのピアスを買いた…きゃっ!』


振り返った僕と目が合って、その女の子は凄く驚いてた。


『ほっ、本物の金魚ちゃん…!』

『あ…こんにちは…』


その女の子の表情は、驚きから喜びに変わってた。


『あの!私、金魚ちゃん大好きです!応援してます!』

『あ…うん。ありがとう』

『えっと…金魚ちゃんピアス、買ってもいいですか…?』

『もちろん。どうぞ…』


僕はその場所を、その女の子に譲って退いた。

女の子は「失礼します…」と小声で言って僕の前に立ち、レプリカの金魚ピアスを選んで一つ手に取って、美弥ちゃんの待つレジカウンターへと小走りで駆けていった。

そして、購入を済ませてお店を出ていく女の子…とても可愛い子だった。


そういえば詩織は?というと…。

詩織はレジを済ませた美弥ちゃんと、大基さんと会話の続きをしてた。


『あ、金魚!』

『うん』

『そろそろ1階したに戻ろう!お店のお手伝いしないと!』

『うん。じゃあ…大基さん、そういうことで…』

『あぁ。頑張れよ。今日は顔出ししてくれてありがとうな!』

『はぁーい。美弥ちゃん、大基くん。またねー』


詩織が先に、僕がその後に…。

僕らは1階の秋良さんのお店へとまた戻った…。





『では…開店日セール初日、みんなお疲れー!かんぱーい!』

『かんぱぁーい♪』
『乾杯…』

『歩美ちゃん!お疲れ様』
『啓介さんも…お疲れ様でした…♪』

『店長もお疲れ様ー!』
『皆さんお疲れ様でーす』


…藤浦市内の某お寿司屋さんにて。

秋良さんと詩織と僕、それに従業員のお姉さんたち。
みんなにこにこ笑顔でグラスを掲げた。

歩美さんと啓介さんも、笑顔で乾杯を交わしてた。


『あれ?秋良くん。大基くんと美弥ちゃんは?』


詩織がそう訊くと、秋良さんは『あぁ。今日はお先ーって帰ってったぜ』と一言。


『店長、今日の売り上げは目標に対してどうだったんですか?』


黒髪ロングのお姉さんからの質問に、秋良さんは…。


『経理担当の歩美ちゃん、そこんとこどうだったっけ?』

『はい。今日の売り上げは…目標の2倍近くまで売れてくれました』

『そうなんですね!やったー』


秋良さんは『これも、金魚や詩織が手伝いに来てくれたおかげだな!』『明日は二人の応援は無いけど、明日も売り上げ頑張ろうぜ!』と、みんなに語った。


『じゃあ…詩織、お前まず何食うよ?』

『うぅん…そうね。いきなり初めから中トロいい?…ダメ?』


真顔で詩織を見る秋良さん。
対して、凄い笑顔で秋良さんにそう答える詩織。


『お前はほんとに…変わらんなぁ。でもいいぜ!行け!中トロ!』

『きゃはははーやったー♪』






『…俺は、お前らの所属する芸能事務所に挨拶に行かなきゃイカンかな?って思ってる…』


冬の生ビールに少し酔い、秋良さんはポロリとそう話した。


『うーん…なんで?』


詩織が不思議そうに、秋良さんの表情を覗き込んだ。


『モデルだよ。ウチの店の専属モデル!』


…専属モデル…?


『《Girls File》の?』

ちげぇーよ。あんな地方冊子じゃねーよ。全国区のファッション誌だよ!』

『えぇっ!ファッション誌!?』


秋良さんはこの新しいお店をオープンしたことで、今度は通販事業の拡大も含め、今までよりも更に全国各地のアパレルショップに、多く商品を置かせてもらう…つまり委託販売を進めていくんだという。


『その為には…要るんだよ。専属のモデルが…』


その専属モデルに詩織を起用するため『《冴嶋プロダクション》に挨拶に行かなきゃイカン』ってことらしい。


『…で?どうなんだ?詩織。今忙しいのか?芸能の仕事』

『うん…』


詩織が、少し複雑そうな表情を秋良さんに見せる。


『あぁ?やっぱ無理そうか?』

『うぅん。違うの…』


詩織は《アイドルを目指すのを一旦やめて、女優を目指すことにした》ことと、《まだそれも始めたばかりで、今後どうなるのか分からない》ことを、秋良さんに答えた。


『そうか…じゃあ、ウチのモデルをやってくれるっていう個人的な意思は…』

『うん。私もやりたい。秋良くんのお店の専属モデル。できるのなら』

『…わかった。待っててくれ。事務所と上手く交渉してやるから』


秋良さんのその一言を聞いて、詩織はとても明るい笑顔を見せてくれた。


『わぁ…楽しみ…♪』


僕も、楽しみに期待して待ってる。
詩織が女優だけじゃなく、秋良さんのお店の専属モデルとしても活躍できることを。


『それと…秋良くん』

『あぁ?なんだ?』

『今日、春香さんの勤める病院に行ってきたよ。』

『あぁ。知ってる』

『赤ちゃん…おめでとう』

『おぉ。サンキューな!』


秋良さんに、2つのおめでとう。
《新しいお店の開店》と《パパになる》こと…。


『それで…結婚式はするの?するんだったらいつ?あと、春華さんのご両親への挨拶は…?』


詩織の的確な質問に、秋良さんは少し顔を引き攣らせた…。


『あぁ…この店の運営が一旦落ち着いたら…考えてる』


…ということらしい。
頑張ってください。秋良さん…。







『じゃあ…ここでみんな解散な!お疲れ!』


藤浦市浅見区の《JR浅見駅》。

僕は一人…駅前の前に立つ、雑居ビルの2階を見上げていた…懐かしい。

《園原社交ダンス教室》。僕が金魚になる前に…金魚になるために、園原先生から《女の子らしい、正しい歩き方》を教わっていた教室。
その2階は暗くなっていて、看板も灯りが着いてない…今夜はお休みだったのかな?それとも営業後?


『園原先生の教室…懐かしいね。金魚』

『あ…うん』


詩織も僕の傍に立ち、一緒に見上げてくれた。


『金魚…うぅん。信吾は今夜もアンナさん家でお泊まりでしょ?私は私のお家に帰るけど…宜しくね』

『うん。そうだったね』


アンナさんの家には僕の着替えもあるし、メイクを落とさせてもらわないと…だし。
僕の車《池川ショコラ》も停めさせてもらってるし…。

詩織は藤浦市岩嶋区新田…今夜は実家で一泊らしい。


『じゃあ…地下鉄の改札口まで、一緒に行こっ』

『うん』

『藤浦最後の明日はどうする?また瀬ヶ池に遊びに来る?去年みたいに』

『うん…考えとく』





















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