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G.F. - 大逆転編 -

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…今日は…というか、今夜は2月15日の木曜日。時刻は午後8時32分。
外の気温は凄く寒いけど…車内はあったか。


『信吾、あとどれぐらいで着く?』

『うん…あと30分ぐらいかな』


首都高速道をひた走り、地方都市高速道へと入って…向かうはアンナさんの住む高層マンション。
今夜はアンナさんのマンションで一泊の予定。



車の運転は…僕。
その車は…

先日、陽凪さんに探してもらっていた中古の軽自動車が納車でき、ようやく乗れることに。

屋根ルーフは白色。ボディーは茶色。
詩織が命名…《池川ショコラ》。

池川ショコラ…。
軽自動車に名前…本当に必要だったのかな…。
でも詩織は満足そうだし…。

んまぁ、それは良いとして。


あの《バレンタインフェス》と《どちらが可愛いか勝負》のあった11日の日曜日。
その次の日…12日の月曜日から今夜…15日の木曜日までに、僕らに何があったのか…。

それを端折って簡単に話すと…。




…まずは12日の月曜日。
朝はまた一泊した雫ちゃんを、駅までお見送り。
また週末に会おうね。雫ちゃん。

詩織はそのあと午前から、冴嶋プロダクションビルの4階で、公貴くんと演技のレッスン。
《バレンタインフェス》を最後に、詩織は一旦アイドル活動から離れて、新人女優を目指すことに。

午後はレッスンが済んで…藤浦市で待つ《アンナファミリー》の皆んなへのお土産の買い物。

そんな買い物の途中…ん、僕のスマホに電話着信?
見てみると、知らない番号…。


『詩織…』

『…うん。用心しながら電話に出てみて…』

『も…もしもし…だ、誰…』

「あはは。もしもーし。石田美希でーす!」


…えぇ!?石田さんだった…!
あのサイト《カラフル》の管理人を頼りに?電話番号ゲットまで辿り着いたらしいけど…。

それって!樋口絵里佳じゃん!!
…樋口め…勝手に…。


そして…石田さんの隣にいた片山桃香さんとも電話を通じて話し…。
僕も詩織も…このお二人とLINEで繋がることに。

まぁ…いいけど。






…そんなこんなで、更に13日の火曜日。
そう。この日…陽凪さんからの連絡。

待ってた….やっと。
冴嶋プロダクションの契約する専用駐車場にて、お互いの確認あって納車完了。

5年のローンかぁ…頑張ろう。


『バレンタインデーの1日前倒しでゴメンね』


いいえ。陽凪さん。
ご心配なく。僕はとても嬉しいです。






….2月14日の水曜日と言うと…そう。
もちろん《バレンタインデー》。

午前の演技レッスンの休憩時間に…詩織から僕へのバレンタインチョコ。


『ハッピーバレンタイン!あと《池川ショコラ》納車おめでとうね♪』


…その時、初めて《軽自動車の命名》を知った僕。
あ…ありがとう。詩織…。

お昼休み…詩織がアンナさんに電話して『16日の朝、藤浦に帰るの!』と言うと…アンナさんから「15日の夜に帰ってこれば?…それはできないの」との提案。






…それで、今(15日木曜日の今夜)に至る…。


『可愛いショコラ、元気に走ってくれてるね!』

『そうだね』


当然ながら、何度も言ってるけど《ショコラ》というのは僕の軽自動車。


そういえば…『詩織ちゃん、春華ちゃんに会いに藤浦に戻るんだよね?何日?私も一緒に行きたいな』って話をしてた鈴ちゃんだけど…僕らとは一緒には帰らず、鈴ちゃんは先に藤浦市に帰ることに。

もうご実家で暖かくして、ゆっくりと過ごしてるはず。






『お帰り。詩織、信吾くん』

『ただいまぁ。アンナさん』

『駐車場…ありがとうございます。アンナさん』


アンナさんは、普段停めていたアンナさんの車を美容院《クローシュ・ドレ》の駐車場に停めて、このショコラのためにマンションの駐車場を空けてくれていた。

久しぶりに、運転しながら見た藤浦市の高層ビル群の夜景…とても綺麗だった。
東京の夜景も好きだけど、本当に…この夜景もまるで宝石箱のようだった….キラキラ。

…ということで、今夜はアンナさんのマンションで一泊して、明日の午前…春華さんが務める病院に行く予定。

その病院の駐車場で、鈴ちゃんとも合流することになってる…。






そして…朝。
16日の金曜日。時刻は午後1時7分。
春華さんは天藤浦市黒羽区…あの天郷大通りにある藤浦市立総合病院に、前いた病院から転院して勤めていた。

予定どおり、病院の駐車場で鈴ちゃんと合流。
そして軽いステップで、2階のナースステーションへ。


『こんにちはー。小森春華さーん』


女性の多いナースステーションは、目の前にいる本物の伊藤鈴ちゃんを見てザワザワ。
「えっ?あれ鈴ちゃんじゃない!?」「本物の鈴ちゃんだぁ!」そんな看護師さん達の声も聞こえた。


『詩織ちゃん、信吾くん、鈴ちゃん。今日は来てくれてありがとう!』


さっきまで忙しそうだった春華さん。
僕らを見て、わざわざナースステーションから出てきてくれた。

お腹は…うん。
スッキリしてる…?


『…見た目は普通ね』

『あははは。詩織ちゃん。ぽっこりお腹が目立ってくるのは、まだまだ先よぉ』


…そうなんだ。

そして僕ら3人。少し遅めの《赤ちゃん、おめでとう!》を言って伝えた。

「男の子?それとも女の子?」「名前は?もう考えてる?」そう訊いた僕らを、《気が早すぎ》と春華さんは笑ってたし。


『あ、そうそう!付いて来て!』


突然、歩き出した春華さん。


『えっ?どこに?』

『入院棟の8階よ!』


入院棟の…8階!?

春華さんは『菊江さん、ここの入院棟に入院してるの』と教えてくれた。
…そうなんだ!






入院棟、8階。
そこは入院個室が並んでいるフロアだった。

確か…入院室って、個室が一番値段が高かったはずだよね…?

そんなとこに…菊江さんが?



春華さんは、手前から二つ奥の入院室の扉をコンコンコンと、3回ノックした。


『失礼します。菊江さーん』


入院個室は奥まって、とても広かった。
菊江さんが横になっているベッドは一番奥にあって、窓がとても大きかった。

その手前には接客用のようなソファーとテーブルが置いてあっ…!?


ソファーに、スーツ姿の高潔そうな老紳士と、菊江さんよりは少し若い、背の高い男性が座っているのが見えた。


『詩織ちゃんと信吾くん。それに鈴ちゃんがお見舞いに来てくれましたよ』

『あらっ!ありがとう。春華ちゃん!』


上体を起こし、ベッドに横になっている菊江さんが、手招きで僕らを呼んでる。

詩織も僕らと、ソファーに座る2人の紳士たちを少し気にしながら、菊江さんの方へと歩み寄った。


『よく来てくれたわね。ありがとう。私の可愛い子どもたち』

『菊江さーん、心配してたー。会いたかったー』


菊江さんはベッドに横になったまま、詩織…僕と順番に、挨拶代わりのハグを交わした。


『あのー…』


詩織が不安そうに振り返って、あの紳士たちを見る。


『あー。あのご年配の紳士さんは《佐々木不動産グループ》の会長であり、不動産会社社長でもある《佐々木天清(ササキアマキヨ)》さんよ!』


佐々木天清さん…78歳のご紳士さん。
藤浦市では《藤浦の不動産王》と呼ばれる、とても有名なお方らしい。


『あの大きな超高層ビル【la satif emplieレセティ・アンプリエ】の所有者さんでもあるの!凄いでしょ!』


…えっ!?
あの《アンプリエ》の所有者さん!?

それは…凄い。本当に。



















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