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G.F. - 大逆転編 -

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『それで…』


藤川さんや荒井さんに、詩織は改めてもう一度訊いた。


『今日のこの《どちらが可愛いか勝負》というのは、《顔さえ可愛ければ勝ち》?それとも私たち、の考えるような《総合的に評価して可愛いほうがば勝ち》?どっちなの?』

『…。』
『……。』


そこまで、こと対決に関して詳しくは考えてなかったのか…藤川さんも荒井さんも、お互いを見合ったり…詩織の顔をちらりと見たりしながら…何も言い答えようとはしない様子…。

さっきまでは《可愛さってのは顔!》とかって言い切ってたけど。


『じゃあ私が言うね』


詩織が…言う?

敵味方なく、ここの控え室にいる全員が…それと廊下から野次馬している人たち全員も含めて…静かに、皆が詩織をじっと見て、黙って詩織の次の一言を待った…。


『《顔だけが可愛いければ勝ち》って言うのなら…私は今のところ、自分勝手に《金魚が一番可愛い!》って思っちゃってるから、私だったら金魚の勝ち!って言いたいところ…』


藤川さんも荒井さんも金魚ぼくをちらりと見た…けど、詩織に向かって「どう見たって日本一なんかじゃないわ!」なんていう…ツッコミの言葉は無かった。

それどころか、金魚の次に…比べるかのように西尾美優貴さんと伊方つぐみさんを見たけど…やっぱり黙ったまま、小さく頷いて視線は少し下を向いた…。


『…だけど、あのお二人もとても可愛いから、そちらが良ければこの勝負、引き分けドローってことにしてあげてもいいわ』


詩織は言いたいことを全て口から吐き出したように、とても心地良さそうな笑顔を見せた。

詩織があえて《総合的に評価して可愛いほうがば勝ち》のほうには全く触れず、提案しなかったのは…。

そんなのを提案したら…ていうか、向こうは言葉遣いは悪いし、優しくないし、性格悪いし、歩き方も酷いし…そんなばっかで僕らが1000%、圧勝すること間違いなしだから。

詩織はどうやら、この対決を引き分けにしたい…と考えてるらしい。

僕も今更だけど…詩織に同意。
お互いに引き分けでも良いように思う…。


『それで…そういうことでどうかしら?藤川さんと荒井さん』


藤川さんは一瞬《う、うん…じゃあそれで…》と小さく頷こうとした…んだけど、荒井さんがそれを慌てて阻止して、すさまじい形相で僕を指差した。


『待って舞莉!』

『えっ…?』


僕を睨み付ける荒井さん。


『あの子…金魚だっけ?私が舞莉の代わりに言うけど…』


…?


『今日、ここに真剣勝負に来たんじゃないの?だったら何…そのダサい普段着みたいな格好!?パーカーにロングスカート!?って…』


…あ…うん。
そう言われると思ってた。

この服装を送ってくれた、秋良さんでさえ《段ボールにそっと添え入れてた、メモ書きのような手紙》に記してあっ
たから…。

《本当に大丈夫か?そんな格好で。ガチの勝負なんだろ?…》って。

この《パーカーにロングスカート》は、《ピプレ》のリーダーの海音さんが考えて提案してくれた服装。
《普段ぽい様相で、ふらりとここに呼ばれて来た感じで…》だったかな。

秋良さんのメモ書きのような手紙には、他にもこんなことが書いてあった…。

《…だから、今までの金魚のオシャレ路線らしい衣装も入れておく。最終的にどっちにするのかは、お前に任せる》って…。


『…そんなナメた格好のやつに、うちら引き分けと負けるとか、屈辱過ぎんだよ!…えっ?なに急に…!!?』


僕は荒井さんの言うことを、途中から全く聞かず…あの手紙のことを思い出しながら、いきなりロングスカートを脱ぎだした…。




…つまり、そういうこと。
秋良さんの送ってくれた段ボールには…パーカーとロングスカートのほかに、とてもオシャレな衣服…というよりはが入っていたんだ…。


『えっ、待っ…真白いプリーツのミニスカート!?そんなの中に穿いてたのかよ!!?』


うん。下着がギリギリ見えないくらいの短さの。絹のプリーツミニスカート。
腰の細めのベルトは黒色で。
脚はノーストッキングの素足。ロングブーツもベルトと同じ黒色です。

安心してください。
ブーツの中は短い靴下を履いてますよ。



僕は今度は、パーカーを脱ぎ脱ぎ。
よいしょよいしょ。


『てか何!?あの金って子の…あの脚の細さと白さ!!?』


大きな襟付きノースリーブのホワイトシャツ。
シャツのボタンは左鎖骨のあたりに1つあるだけ。
服を着て…そのボタンを留めて終わり。

両方の襟には黒色で《金魚のリバイバル刺繍》。
首元には緩めに締めた、少し短かな黒のネクタイを下げてる。

両腕は手の甲から肘の少し上まで、ルーズな指抜きタイプの白いアームウォーマー…編み素材は細めの白ウールニット。





『あら?そんなカッコ可愛い衣装を中に隠し着てたの?きゃははは。やるじゃない金魚♪』


詩織はとてもご満悦。
それに続いて『金魚の白細美脚も健在だったことを確認できて、私良かったわー。きゃははははは』って。


『スタイル凄い…細っ…』


荒井さんは、もうさっきみたいな《品のない非礼な言い方》はしなかった。

…というか、もうすっかり黙り込んでしまった。




それより僕が気になったのは…廊下のほう。
野次馬のアイドルの子たちや関係者らがしてたから…。

「あの子見てよ!凄くない!?」
「えーっ!?今まで見たことがないぐらい可愛いんだけど!!」
「ってかスタイル細っ!凄い!!」
「始めダサッ!って思ったけど、脱いだあとのあの服!好きー!欲しーい!!」

「結局!あの金魚ちゃんって凄い子!誰なの!どういう超可愛い子なの!!?」


…。

自分から脱いでおいて、こんな言い方もアレだけど…。

なんか…急に恥ずかしくなってきた…。

だって、この場にいる全員の…突き刺さるような視線が…金魚である僕に…。


『…どう?本気モード発動させた金魚、もう我慢できないぐらい可愛い過ぎでしょ?ね?きゃはははははー♪』


詩織が気持ち良さそうに笑ってる。


『けど忘れないでねー。こんな可愛い金魚のパートナーは…私!誰でもないなの!羨ましい?うふふふーふふっ♪』

『…。』
『……。』


急に、荒井さんが詩織を睨みつけた…!?


『ねぇ、こんなやり方して…ただでは済まされないからね!覚えておきなよ!!!』

『…えっ?』


今まで高笑いしていた詩織も、急なこの展開に、すっかり驚きの表情へと変わってしまった。


『そうよ!詩織ちゃん…あなたも忘れないでよ!うちらは《Starlight-Office Kira♠︎m》所属のアイドルグループなんだってことを!!』


荒井さんに次いで、藤川さんもそう大きな声で詩織を牽制した。


『今、この芸能界を牛耳ぎゅうじってるのは!!うちらの事務所《Kira♠︎m》なんだから!あとで後悔してももう遅いよ!!!』
『あはは。芸能界か消されちゃうかもー?テレビや雑誌、アイドル活動の全部からー?あはははー』


さっきまで、余裕な笑みを見せていたのは詩織。
だけど今はそんな詩織が黙り込んでしまって、逆にさっきまで黙っていた荒井さんや藤川さんが、今は高笑いしてみせている。


『ねぇ、そんなやり方は違うんじゃない?』


…!!


『…はぁ?』
『ちょっと!あなたは黙ってなさいよ!…桃香!』


僕らは片山さんを見た…驚きと、ちょっと尊敬に似た気持ちで。
まるで僕らの思ったことを、代弁してくれたようなセリフだった。


『《可愛い》では勝てないからって、事務所の名前を出して優位マウントを取ろうだなんて、ちょっと卑きょ…』

『桃香。だから裏切り者は黙ってなって!!』
『《Kira♠︎m》を裏切るなんて…桃香もサイテーだよねー。あなたも後悔しながらシねば?』






















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