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G.F. - 大逆転編 -

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あんなに虎のように吠えてた藤川さんが、今は急に猫のように大人しくなった…。


『桃香ちゃんだったら、勝てるの?』

『うん…分からない。けど善戦はするつもり。だから話させて』


《T.S.S.D/Top Secret Sparkle Dolls》のサブリーダー、片山桃香さん。
本当のグループリーダーの石田美希さんより、片山さんの素質はリーダーっぽく優れてるんだって、詩織が言ってたのを覚えてる。

静穏な様子で、ゆっくりと体ごと振り向き、真正面に僕らを見る片山さん。


『あなたは、名前は何ていうの?』

『えっ…私?』

『うん。あなたの』


急な論戦テンポの変化に、少し拍子抜けたように驚いてる様子の雫ちゃん。


『私は…五十峯雫といいます』

『じゃあ、雫ちゃん。一目見たかったんでしょう?見せてあげるね』

『?』


片山さんは、後ろを振り向いて手招きをした。


『美優貴、つぐみちゃん、こっちへ来て』


…僕も見てて解る。
この片山さんは、こういう状況に慣れてる…!

藤川さんや荒井さんのような《言葉攻め》では優位には立てない。
それどころか、ごり押し戦法では絶対に勝てないんだって、それを理解してる。

彼女の《勝つための方法》の考え方は…もしかしたら、僕に近いかもしれない…!


片山さんの左隣に並んで立った、西尾美優貴さんと伊方つぐみさん。

うん…やっぱり凄く可愛い!
彼女らが並んで、早瀬ヶ池の街を歩いてても…凄く目立つと思う。

瀬ヶ池を歩く幾千のお洒落な女の子たちから注目され、またはライバル視され…すぐに有名になると思う…。

それぐらい、本当に可愛い…!


『美優貴は今、大学2年生。去年のミスキャンパスで、圧倒的票を得て1位に選ばれた子よ…』


片山さんと同じ《T.S.S.D》に所属する西尾美優貴さん。
操り人形マリオネットが着るような、フリルたっぷりのミニワンピース衣装を着ている。

短い裾から見える《か細くて白い太もも》が凄く綺麗…。
髪は優しくカールしててロングヘアー。

鼻もツンとしてて目も大きくてぱっちり。
やっぱり少し薄めの唇で、《パーフェクトに可愛い!》と言われる顔パーツの要素は全て揃ってる。

雫ちゃんと美優貴さん…どちらが可愛いか?と訊かれたら…。
返答に困るぐらい、どちらも負けず劣らず凄く可愛い。


『…(荒井)美里ちゃんのグループに所属するつぐみちゃんは、小学五年生の頃から読者モデルをしてて、その頃から凄く可愛いって有名だった子。ずーっと他事務所のスカウトの人たちに追っかけられてて、ご両親からも《芸能界には入れさせない》って言われてたらしいんだけど、うちの事務所も何度も何度も何度も誘い続けてて、一昨年ようやく仲間入りしてくれた子なの。見た感じどう?可愛いでしょ?』


《Peace prayer》と入れ替わるように、次にステージパフォーマンスをした《Cue&Real》に所属する伊方つぐみさん。
まだ今も可愛らしいマーチングガールズバンドの衣装を着たまま。

伊方さんもロングヘアーで、髪を左方に纏めてアップして結んでいる。
顔も当然可愛いし、スタイルは健康的な細さで、立ち姿がとても綺麗。

ヤバい…。
当然知ってたんだけど…伊方さんもまた凄く可愛いんだけど!

いや待て…落ち着け…僕。

ってか、この半径1.5m空間の《めちゃカワ女子密度》…凄すぎでしょ!





『じゃあ…今度は雫ちゃん。聞かせて?』

『えっ?…と…?』

『うん。あなたの過去のエピソードとか、プロフィールとか』


片山さんにそう訊かれ、急に口をきゅっと閉じてやや下を向き、黙ってしまった雫ちゃん。

僕も詩織たちも、突然のことに心配になったけど、じっと耐えて雫ちゃんを見守った…。


『うーん。じゃあ順番に訊こっか。どこから来たの?家は都内?それとも関東圏内?圏外?』


雫ちゃんは、今も少し不安そうに片山さんを見…てない!

あの雫ちゃんの表情。
僕はそれを見て、少し安心した。

《勝つんだ!負けたくない!》と語るような、とても力強い視線…まだ大丈夫!

あの雫ちゃんの表情は…ちゃんと考えてるんだと思う。
何をどう話そう…そんなふうに戦況の有利な流れを作ろうと、一瞬黙ってよく考えてたんだ。


…って、僕は思ったんだけど…違ったりする?


『まず…私のエピソードをお話しする前に教えてください』


片山さんも、黙ったまま小さく頷いて見せた。


『何よ!?早く言いなさいって!』

『ちょっと止めて。美里ちゃん』





一瞬、目を閉じてた雫ちゃんは、覚悟を決めたかのように『はぁぁ…』と息を払って…前を見た。


『早瀬ヶ池…という街を知ってますか?』

『うん。知ってるよ』


片山さんは、そう即答したけど…藤川さんや荒井さんは《はや…何?街?》って、理解できていなさそうな表情がそれを語ってた。


『私は…その街の女の子たち《瀬ヶ池女子》の代表だと思って、ここに来ました』

『そうなんだぁ。じゃあ…その街で有名なの?雫ちゃんは』

『はい。まぁ…確かに有名かもしれません』

『…なるほどね』


片山さんは、雫ちゃんのその答えに、まだ少し納得できてない様子。


『じゃあ雫ちゃんは、自分自身がその早瀬ヶ池の女の子の代表だと思えて、有名かもしれませんって言う、その根拠は?何かあるの?』





優しく、雫ちゃんに語りかけるように訊いてる片山さん。

あれは雫ちゃんに気を遣って、優しく話し掛けてるんじゃない…!
僕らの考えと一緒なんだ!

雫ちゃんの出方を見ながら今、彼女の頭の中では雫ちゃんを《できるだけ容易く攻められるポイント》を考えて探してる…。

つまり今、戦略を考え組み立ててるところなんだ…!



だとしたら…片山さんはたぶん、聞き逃すことなく《そのポイント》に、絶対気付いてる…。

雫ちゃんの言葉に表れている自信の揺らぎを…。
言い切れてない『…だと思います』『…かもしれません』から解る、言葉に隠れているその不安感を…。

西尾美優貴さんと伊方つぐみさんの姿を初めて?見て…予想してた以上のその可愛さに、驚いて少し自信を失いかけてるんだ…。
私より可愛い…勝てないかもしれない…負けちゃうかもしれない…って…。



どうする…金魚ぼく
早くも、もう雫ちゃんの救援に出なきゃいけない?

待ってよ。さすがに早過ぎないか…金魚は雫ちゃんを信じてないのか…?

うぅん。
金魚はまだ、雫ちゃんを信じてる!
任せたんだから!大丈夫!

彼女は負けてない。ちゃんとじっくりと考えて、言葉を選んでる。
ただ感情的に任せて言い攻める、脳筋リーダーの藤川さんや荒井さんとは違う。

金魚は見守ってるから。雫ちゃん頑張れ!




『私は…去年の《G.F.アワード》に選抜されました…』

『アワード…あー。あの年末に開かれる《街の可愛い女の子のお祭り》みたいなののことよね』

『はい…それです…』


雫ちゃんのはまだ生きてる!戦おうとしてる!
だけど…言葉はまだ少し、自身の不安感を隠せないほど、弱く感じる…。


『…で?じゃあそのアワードってやつに選ばれたってことー?』


荒井さんが雫ちゃんに、加減のない酷い言い方でそう訊いた。


『私は…選ばれず2番目でした…』


本来《G.F.アワード》は、選ばれるか選ばれないかしか無い。
だから1位や2位といった順位は無い。

選ばれるのは1人だけ。他は皆一緒。
選ばれなかった他のエントリーされた子たち…ってだけ。

でも去年は違う。
確かに…雫ちゃんは一度はアワードに選ばれたんだ。
雫ちゃん自身が提案したことで、2度目の再選が行われ…金魚が去年のアワードに選ばれたってだけ。

雫ちゃんの得票数は間違いなく2番目だった。
だから『私は2番目でした』の言葉は、間違いじゃないかもしれない。

ただ、間違ってはいないんだけど…。


『2番目?はぁ?1番じゃないの?って何それ、本気でナメてるよね?うちらのこと。マジで…』


…やっぱり。

















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