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G.F. - 夢追娘編 -

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では…ピプレのメンバーに僕の女装姿《池川金魚》をご披露して、驚いたり喜んだり怖がられたりしたところで…。


『まずは…コレを見て』


海音さんが《バレンタインフェス》の当日の準備資料らしき用紙4枚を、詩織に手渡した。


『今年のバレンタインフェスの参加グループも、去年と同じ16組なんだけど…』


2月11日、日曜日の午後2時から午後5時までの3時間で、都内某所のライブ会場で開催されるイベント…歌って踊って…ステージパフォーマンスする参加アイドルグループが16組…なるほど。


『…とても大事な大役というか…そのきらびやかなフェスのスタートを飾るのが…私たちの大っ嫌いな《HoneyMaids》なの!それで…』


ピプレこと海音さんたちのグループ《Peace prayer》の出番は5番目…そして次の6番目が《Cue&Real》で、最終グループ…つまりフェスの大トリを務めるのが《T.S.S.D/Top Secret Sparkle Dolls》…なんだとか。



…っていうか、出場する16グループのうち《Kira♠︎m》所属のアイドルグループが7組って…露骨にも、ちょっと《きらむ》にかたより過ぎじゃない?
だってアイドルグループを抱えてる芸能事務所って、どれだけあるか知ってるよね?運営の人。いっぱいあるんだよ。それなのにその偏りって…。


『まず…信吾くんは、4組目のグループがステージパフォーマンスを始めた頃から、私たちもステージパフォーマンスしている時間もね、どこかでてきて』



…どこかで…?

そう海音さんから指示を受けて、僕が静かにウンと頷いたと同時に、詩織が…。


『海音ちゃん、それってってことよね?』

『えっ?あぁ…う、うん。そゆことかな』


あの…そういう、人の揚げ足を取るみたいな細かい指摘とかいいから…詩織。
『金魚は着替えじゃない!変身なの!』って言いたい詩織のこだわりは、僕は解るけど…。

詩織に代わって…コホン。
ご、ごめんなさい。海音さん…。



…それと海音さんから、金魚の服装についても指示があった。

服は可愛いらしい方がいい…と言っても、ゴスロリみたいなのじゃないよ?
普段着ぽいんだけど『あ…可愛い』って女の子が一目で感じちゃうような可愛い服で?



フード付きパーカーとロングスカート?それと黒系のブーツの組み合わせ?

なんか急に、服装の指示が具体的に…。

それと髪型…えっ?


『いや、あの…僕、後ろ髪…短いんですけど』

『うん。そうなんだけど…』


たぶん、海音さんは金魚に変身した僕を見て?もしくは見る前から?"こんな可愛い女の子の見た目になってほしい"っていうイメージがあるんだろう…というのは解った。

けど、ポニーテールはできないです…僕の髪では。
僕というか…金魚の髪型は、ショート寄りのウルフレイヤー。
髪の襟足は、肩と首の付け根のあたりまで伸びてるけど…アップして束ねるとかまでは無理。


『私さぁ、こんなに可愛い女の子の信吾くんを見てたら《あっ!》て可愛い女の子のイメージが、私の頭の中にフラッシュしたの』

『それは解りますけど…』


かなり無理…とは思ったけど、何度か強引な説得を受けて…僕は『わかりました』『なんとか準備してみます…』と、海音さんに返事してしまった…。

というか、『やります』と返事するしかなかった…。


『あぁ良かった!ありがとう信吾くん。私嬉しいなぁ』

『…。』


はぁ…仕方ない。
服のことは秋良さんと啓介さんに…それにアンナさんにポニーテールの付け髪とか、相談してみるかな…。
だったら早めに…いや今日中にでも、相談の連絡をしとかないと…だよね。


…なんて相談したところで、本当に何とかなるという保証もないんだけど…。







『それじゃあ、これで決まりだね!バレンタインフェスはパフォーマンスでも、メンバーイチ可愛い子勝負でも勝とう!ね!みんな!!』

『金魚ならきっと、絶対勝てるよー♪』
『頑張りましょう…可愛い信吾さん』
『私たちも可愛い信吾さんのこと応援してます…』
『勝っとーう♪』
『絶対に負っけなーい♪』




…あとの細かな打ち合わせは、まだ時間もあるんだし、追々おいおい話し合って決めていこう…ということになった。

ピプレのメンバー全員が、まるでお祭り騒ぎのように、今もわぁわぁと盛り上がっているところに…。


『じゃあ…あの、ここで…私からひとつ…』

『?』
『??』
『どうしたんですか?詩織さん…?』


…詩織が恐る恐る、ちょっと低めに右手を挙げた。


『うん。実はね、私から…メンバーのみんなに相談…っていうか、告白しなきゃな事があるの…』

『告白!?…ってなに?』
『深刻な相談…?』
『相談っていうか告白…?』
『えぇ何何…ドキドキする…』
『私も。ドキドキ…』


当然ながら、僕は知っている。
その告白の内容を。

頑張れ…詩織。
きっとみんなは、いい方向に理解してくれるはず…そう信じてる。


『私…ちょっと前から悩んでいて…』

『うんうん。悩んでたのね…で?』

『う…うん。それで…』


…海音さんの、良いのか悪いのかよく分からない合いの手の言葉を挟みながら、詩織は告白を続けた…。






『つまりは…詩織ちゃんが…?』

『…うん。私…女優を目指そ…』

『うそっ、女優を目指すの!?』


海音さんは、この告白の最後に詩織の両手を握り『絶対応援する!私たちメンバー全員で!』と、詩織に言ってくれた。


『うん…ありがとう海音ちゃん。そこで、私から一つお願いがあ…』

『だったら…私ね、詩織ちゃんに強く願いたいことがあるんだ…』

『…?』


詩織が、語ろうとしていた《一つのお願い》を言う前に、海音さんのその《強く願いたいこと?》の一言に、話すことを一旦止めてしまった。


『…強く願いたいことって?…海音ちゃん、何?』

『うん。私は詩織ちゃんが女優を目指すことを、心からほんとに応援するよ』

『うん』

『だから…これからは、詩織ちゃんはもう…っていうかあんまり、アイドル活動はできないのかな?って思うんだ』

『うん。ごめんなさい』


海音さんは、握っていた詩織の両手をそっと放し…詩織をじっと見た。


『けど…』

『…うん』

『これからも、ずっと…ずーっと…ピプレのメンバーでいてほしい…』

『!』


詩織は大きな目を円くして、海音さんのその言葉に驚いてた。


『なんて…無理だよね。こんなお願い…けど私、このまま詩織ちゃんと別れるなんて…』

『うぅん。私も、あの…同じことを言おうとしてたの…』

『えっ!?』


詩織が海音さんに、優しく笑って見せた。


『私は女優を目指したい…だけど、このままピプレのメンバーでいたい…って』

『えぇっ!!?そ…あの、詩織ちゃん?』

『だって私…メンバーのみんなのこと、大好きなんだもん』


詩織はそう一言言って、ニコリと優しく微笑んだ。


『私だって…詩織ちゃんのこと』
『私たちもです…』
『大好きです…』
『素敵な詩織お姉さまー好きー♪』
『これからも、私たちのお姉さまですよねー♪』

『うん。みんな…本当に、ありがとう…』

















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