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G.F. - 夢追娘編 -
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今日は…えぇと。ん?何日だっけ?
脚の低いテーブルの上のスマホを見る。
1月24日。水曜日。時刻は午前8時19分。
『さて…と。ファンデーションが終わったから、次は…』
テーブルの前に正座で座っている僕は、テーブルの正面に置かれた鏡を覗き込む…そして左に右に首を振って顔を確認…。
ファンデの塗り斑は、ないな…と。よし。薄塗りが均等丁寧で綺麗綺麗。今日もなかなかの上出来…うん。
そして僕の右横に置いた《金魚専用赤色メイクボックス》にファンデーションを戻し、次にペンシルアイライナーを取り出す。
アイラインを引くときって…鼻の下が伸びたり、自然に口が半開きになっちゃったりするよね?
それと皆さんは左目から始める?それとも右目から?
僕は左目から…なんて、どうでもいい話は置いといて。
今日は池田さんと、堀内芸能事務所に行く予定。
ピプレのメンバーの皆さん…それと、インストラクターの和田先生に『詩織はアイドル活動だけでなく、女優活動も今後は目指していく』ことを説明するため。
それと…あの《バレンタインフェスの"幻のメンバー、池川金魚"ご披露計画》の計画ミニ会議をするため。
そして僕はその計画ミニ会議のため、今《池川金魚》に変身中。
金魚の姿をまだ一度も見せたことがない…あ、詩織が送った初詣の写真は見てたけど。
実際の金魚を見たこともないのに、メンバーは計画を進められない?と思って。
午前8時42分…メイクが終わったので、着替えを始めます。
僕は最近は、メイクをした後に着替えるときに、気を付けることで服にメイクを付けなくなった…というか、慣れてメイクの後でも着替えられるようになりました。
本来なら《メイク前に着替えることを推奨します》なんだけどね。
僕は『…よいしょ』と立ち上がり、振り向いて洋服箪笥の真ん中の引き出しを開ける…うーん。どれもちょっと季節感が違うかなぁ。
じゃあ、その下の引き出しも確認…あー、あった。
エメラルドグリーンでVネックの長袖プルオーバーセーター…の1着だけ。
じゃあこれと、中に白のカーディガンシャツを着よう。
それと下は…あぁ。
あるのは、ミニスカート系とハーフスカート系が多いのと…あと、ショートパンツ系。
じゃあ、この…明るめ灰色のこのミニスカートをチョイスして、ベルトはシルバーの装飾のある、白の綺麗なこれ。
寒いから黒ストも新品履いて…靴は灰色とミントグリーンの、デザインシンプルでお洒落なスニーカー。
…いいんじゃない?これで。どう?
あと頭に…ちょこんとニット帽も被って…どうどう?いいよね?うん。
あ!忘れそうだった!最後に《赤姫と黒助くん》の金魚ピアス…装着。
でも全然足りない。金魚用の冬服が…。
今度…秋良さんにLINEで相談しとこう。
『冬用の女の子洋服の余ってる使用済みサンプル、もしあれば僕のアパートへ送ってもらえませんか?お願いします』って…。
午前9時20分。着替えはバッチリ。誰が見ても《可愛い!》と思ってくれるはず…たぶん。
《…ヴーン、ヴーン、ヴーン》
あ…これは池田さんから『アパート前に到着したよ』の電話着信。
すぐに電話に出て『あ、今出ます』と伝え、電話を切る。
電気よし…ガスよし…水道よし。窓の施錠も全部よし…ゴミなし。
あとは玄関を出て、ちゃんと施錠をし…?
『えっ?』
『…えぇっ!!?』
うわぁぁぁー!!
アパートのお隣に住む、32歳ご夫婦の奥さんのほうと…げ、玄関前で遭遇したーぁ!!
『望美ー、幼稚園の時間てなん…えっ!?』
『…ぁ』
こ、今度は旦那さんのほうと…!!
…ひぃぃぃ!!!
金魚をじーっと見るご夫婦…!!
『あ、の…私は、ここに住む…岩塚信吾くんの…ぉ、お友…』
『…彼女?』
『いえ!ち、違うんです!…けど』
あぁ…ヤバい…!
前にも、これに似たことがあったような…。
『ごめんなさい!私、今急いでますので…!』
『えっ?ちょ…』
僕はご夫婦に深々とお辞儀をすると、階段へ向かって小走りで駆け出した…。
「い、今の子凄い可愛かったぽくない?」
「俺も思った。芸能人のアイドルとかやってる子か?」
「てか脚っ細っ!」
「俺も見た」
「ママーぁ」
うわゎゎゎ…めちゃくちゃ超ヤバーい!!遂にお隣さんに見られたー!!!
背中越しに聞こえた、ご夫婦の会話に足を止めることなく、僕は階段を…下り続けた…。
『お!おはよう。岩塚くん』
アパート前に停車し、車から降りて僕を待ってくれていた池田さん。
『おはようございます!あと《池川金魚》と言ってください!』
『あーそっか』
そう池田さんに言うと、僕はサッと後部座席に乗り込み、バンッ!とドアを閉めた。
そして池田さんも、続いて運転席に乗る。
『ごめんごめん。金魚ちゃん。それと…助手席、乗らない?』
運転席から振り返って、僕にそう言う池田さん。
『いえ、後ろでいいです』
『おいおい、どうしたんだい?何か朝からあった?』
『いえ、何もありません…けど』
『そっか…ごめんごめん。これ以上は追求しないことにしておくよ』
『…ありがとうございます』
そして池田さんの車は、堀内芸能事務所のビルを目指して発進した。
『やっぱ凄いなぁ…今日も。もの凄く可愛いよ。君の女装姿…とは思えないぐらい、本当に…スタイルも細くて綺麗だし…それに…』
『…。』
あ…ありがとうございます。けどちょっと、今のそのまどろっこしい言い方が気持ち悪い…と思ってしまいました…すみません。
助手席に乗らなくて、本当に良かった…。
詩織は…詩織らしく先に来ていて、都内目黒区某所の堀内芸能事務所ビルの前で待ってくれていた。
『おはよう。詩織』
『おはよう金魚。今日もバッチリ可愛いね♪』
『うん。ありがとう』
『おはよう!詩織ちゃん』
『あ、おはようございます。池田さん』
池田さん…詩織みたいに、こんなふうに爽やかに短く言ってください。
あんなキモチワルい言い方しないで…。
そんなこんなで…三人揃ったところで、僕らは堀内芸能事務所ビルの中へと入っていった…。
脚の低いテーブルの上のスマホを見る。
1月24日。水曜日。時刻は午前8時19分。
『さて…と。ファンデーションが終わったから、次は…』
テーブルの前に正座で座っている僕は、テーブルの正面に置かれた鏡を覗き込む…そして左に右に首を振って顔を確認…。
ファンデの塗り斑は、ないな…と。よし。薄塗りが均等丁寧で綺麗綺麗。今日もなかなかの上出来…うん。
そして僕の右横に置いた《金魚専用赤色メイクボックス》にファンデーションを戻し、次にペンシルアイライナーを取り出す。
アイラインを引くときって…鼻の下が伸びたり、自然に口が半開きになっちゃったりするよね?
それと皆さんは左目から始める?それとも右目から?
僕は左目から…なんて、どうでもいい話は置いといて。
今日は池田さんと、堀内芸能事務所に行く予定。
ピプレのメンバーの皆さん…それと、インストラクターの和田先生に『詩織はアイドル活動だけでなく、女優活動も今後は目指していく』ことを説明するため。
それと…あの《バレンタインフェスの"幻のメンバー、池川金魚"ご披露計画》の計画ミニ会議をするため。
そして僕はその計画ミニ会議のため、今《池川金魚》に変身中。
金魚の姿をまだ一度も見せたことがない…あ、詩織が送った初詣の写真は見てたけど。
実際の金魚を見たこともないのに、メンバーは計画を進められない?と思って。
午前8時42分…メイクが終わったので、着替えを始めます。
僕は最近は、メイクをした後に着替えるときに、気を付けることで服にメイクを付けなくなった…というか、慣れてメイクの後でも着替えられるようになりました。
本来なら《メイク前に着替えることを推奨します》なんだけどね。
僕は『…よいしょ』と立ち上がり、振り向いて洋服箪笥の真ん中の引き出しを開ける…うーん。どれもちょっと季節感が違うかなぁ。
じゃあ、その下の引き出しも確認…あー、あった。
エメラルドグリーンでVネックの長袖プルオーバーセーター…の1着だけ。
じゃあこれと、中に白のカーディガンシャツを着よう。
それと下は…あぁ。
あるのは、ミニスカート系とハーフスカート系が多いのと…あと、ショートパンツ系。
じゃあ、この…明るめ灰色のこのミニスカートをチョイスして、ベルトはシルバーの装飾のある、白の綺麗なこれ。
寒いから黒ストも新品履いて…靴は灰色とミントグリーンの、デザインシンプルでお洒落なスニーカー。
…いいんじゃない?これで。どう?
あと頭に…ちょこんとニット帽も被って…どうどう?いいよね?うん。
あ!忘れそうだった!最後に《赤姫と黒助くん》の金魚ピアス…装着。
でも全然足りない。金魚用の冬服が…。
今度…秋良さんにLINEで相談しとこう。
『冬用の女の子洋服の余ってる使用済みサンプル、もしあれば僕のアパートへ送ってもらえませんか?お願いします』って…。
午前9時20分。着替えはバッチリ。誰が見ても《可愛い!》と思ってくれるはず…たぶん。
《…ヴーン、ヴーン、ヴーン》
あ…これは池田さんから『アパート前に到着したよ』の電話着信。
すぐに電話に出て『あ、今出ます』と伝え、電話を切る。
電気よし…ガスよし…水道よし。窓の施錠も全部よし…ゴミなし。
あとは玄関を出て、ちゃんと施錠をし…?
『えっ?』
『…えぇっ!!?』
うわぁぁぁー!!
アパートのお隣に住む、32歳ご夫婦の奥さんのほうと…げ、玄関前で遭遇したーぁ!!
『望美ー、幼稚園の時間てなん…えっ!?』
『…ぁ』
こ、今度は旦那さんのほうと…!!
…ひぃぃぃ!!!
金魚をじーっと見るご夫婦…!!
『あ、の…私は、ここに住む…岩塚信吾くんの…ぉ、お友…』
『…彼女?』
『いえ!ち、違うんです!…けど』
あぁ…ヤバい…!
前にも、これに似たことがあったような…。
『ごめんなさい!私、今急いでますので…!』
『えっ?ちょ…』
僕はご夫婦に深々とお辞儀をすると、階段へ向かって小走りで駆け出した…。
「い、今の子凄い可愛かったぽくない?」
「俺も思った。芸能人のアイドルとかやってる子か?」
「てか脚っ細っ!」
「俺も見た」
「ママーぁ」
うわゎゎゎ…めちゃくちゃ超ヤバーい!!遂にお隣さんに見られたー!!!
背中越しに聞こえた、ご夫婦の会話に足を止めることなく、僕は階段を…下り続けた…。
『お!おはよう。岩塚くん』
アパート前に停車し、車から降りて僕を待ってくれていた池田さん。
『おはようございます!あと《池川金魚》と言ってください!』
『あーそっか』
そう池田さんに言うと、僕はサッと後部座席に乗り込み、バンッ!とドアを閉めた。
そして池田さんも、続いて運転席に乗る。
『ごめんごめん。金魚ちゃん。それと…助手席、乗らない?』
運転席から振り返って、僕にそう言う池田さん。
『いえ、後ろでいいです』
『おいおい、どうしたんだい?何か朝からあった?』
『いえ、何もありません…けど』
『そっか…ごめんごめん。これ以上は追求しないことにしておくよ』
『…ありがとうございます』
そして池田さんの車は、堀内芸能事務所のビルを目指して発進した。
『やっぱ凄いなぁ…今日も。もの凄く可愛いよ。君の女装姿…とは思えないぐらい、本当に…スタイルも細くて綺麗だし…それに…』
『…。』
あ…ありがとうございます。けどちょっと、今のそのまどろっこしい言い方が気持ち悪い…と思ってしまいました…すみません。
助手席に乗らなくて、本当に良かった…。
詩織は…詩織らしく先に来ていて、都内目黒区某所の堀内芸能事務所ビルの前で待ってくれていた。
『おはよう。詩織』
『おはよう金魚。今日もバッチリ可愛いね♪』
『うん。ありがとう』
『おはよう!詩織ちゃん』
『あ、おはようございます。池田さん』
池田さん…詩織みたいに、こんなふうに爽やかに短く言ってください。
あんなキモチワルい言い方しないで…。
そんなこんなで…三人揃ったところで、僕らは堀内芸能事務所ビルの中へと入っていった…。
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