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G.F. - 夢追娘編 -
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夕紀さんは顔を上げると、弱々しく立ち上がり…一歩下がって自身の胸元で両手を握り合わせ、頭を下げた。
『ごめんなさい。私たちのせいで…お願いします』
お願いします…は分かった。
《金魚の姿で、バレンタインフェスに出てほしい…?》
…私たちのせいで…?
『えぇと、まず…顔を上げてください。夕紀さん』
『…?』
夕紀さんは恐る恐る、ゆっくりと顔を上げて僕を見た…不安そうな表情。
『じゃあ…出てもらえるんですか?』
『っていうか、なぜそうなったのか?その経緯を説明してくれませんか』
『…あ、ですね…』
…夕紀さんから、そこに至った経緯を聞いた。
なるほど。
そういうことか…。
自動車学校の仮免許試験、そして免許取得がそろそろ見え始めて…僕は堀内芸能事務所への《詩織のリハトレのサブマネージャーとしての付き添い》を、南野夕紀さんに代わってもらっていた。
そして、何日…何度か詩織に付き添いリハトレに顔を出すようになって、夕紀さんはアイドルグループ《Peace prayer》のリーダー、浅倉海音さんと知り合い、"同い歳"であることが判ってから急接近…とても仲良くなった。
更に先日のこと…リハトレが終わって『今日の練習は終了。それぞれ解散』となったときに、海音さんから『上野に行きつけの美味しいラーメン屋さんがあるんだけど、一緒にどう?私と行かない?』とのお誘いがあり、夕紀さんは海音さんと二人で夜の繁華街…上野へと出掛けることに…。
『ラーメンでお腹いっぱいになったら、もう一軒だけ付き合って…お願い。この近くに超カッコいいお兄さんが働く、凄くお洒落なカクテルバーがあるんだけど…』
海音さんはそう言って夕紀さんに提案し、夕紀さんもそれを承諾した。
…とても美味しかったラーメン屋を出て、二人ワイワイと笑いお喋りしながら、海音さんの言う《次のお洒落なカクテルバー》に向かう途中…ネオン看板輝く、とあるビルから…。
『…で、その《ビルから出てきたアイドルの女の子たち》って、誰だったんですか…?』
『はい。あの時は私も海音ちゃんも本当にビックリしました。その子たちというのは…』
…はぁ。また出た…。
《Kira♠︎m》所属のアイドルグループ"HoneyMaids"のリーダー、藤川舞莉ちゃんと…同事務所所属のアイドルグループ" Cue&Real"のリーダー…名前は《荒井里美》というらしい…と、更にアイドルグループ"T.S.S.D/Top Secret Sparkle Dolls"のサブリーダー…《片山桃香?》…がビルから出てきて、そのあとに続くように、それぞれのグループのメンバーらしい女の子たちが出てきて…合わせて10人くらいと、そのビルの前で鉢合わせになったらしい。
…説明すらややこしい…。
何だこの3つのグループ名…。
『…そして、そのビルの前で…海音ちゃんと、それぞれのリーダーたちが言い争いになったんです…』
夕紀さんはそう言って、怒るとも悲しむとも言えない、複雑な表情を僕らに見せた…。
どんな言い争いを?って夕紀さんに訊くと…。
『あら?見て。二流アイドルさんが歩いてらっしゃるじゃなーい。道を堂々と…二流のくせに。恥ずかしくないの?』という、藤川さんの言い罵りから始まり…。
『この人、《ピプレ》ってグループのリーダーらしいよ』
『でもそのグループってさぁ、全然可愛い子がいないって言うじゃない?可哀そ。あはは』
『うちら《Kira♠︎m》所属のアイドルグループなんて、みんな粒揃いの可愛い子ばっかなのにー』
『だーからこの子たちって、二流って言われる…ってか、二流アイドルグループなんだって』
『悔しい?だったらうちらよりも可愛い子、探してきたら?』
『でも嫌って言うでしょうね。こーんな二流グループに入るんなら《きらむ》所属の人気グループに入りたーい!って』
『あははー当たり過ぎててヤバーい可哀想ー』
『あはははははー♪』
『それぐらいでやめてあげなよー。この子ら泣いちゃうよ?あはははー』
『…私たち2人を寄って囲んで…彼女らは酷いことを、ずーっと言い続けてました…』
海音さんと夕紀さんは、しばらく…黙ってそれに耐えてたらしい…。
藤川さん…海音さんと1対1での言い争いなら、怖くて萎縮してたかもしれない…けど、同じ事務所所属のアイドル集団だからって、強気になって海音さんを言い攻めまくっていたんだろうな…なんて卑劣な。
『でもその時、海音ちゃんが《けどね!うちの新人メンバーの岡本詩織ちゃんは、顔も性格も可愛いし!スタイルだって細くて綺麗だし!それにこのグループが好きって、凄く喜んでくれたんだけど!》って反論したんです。《岡本詩織ちゃんは凄く可愛い!うちの他のメンバーもね!ってか…まだ他に文句あんの!?》って…』
夕紀さんのその一言を聞いた詩織は『うん。《入ったのがピプレで良かった》って、今でも思ってるよ』と言って、少し寂し気に微笑んで見せた。
藤川さんは、詩織とは実際に会っている。
だから海音さんの『詩織ちゃんは可愛い!文句ある!?』の一言に、顔を引き攣らせて、黙ってしまってたらしい。
詩織を直接見たことのない荒井さんと片山さんは、そんな藤川さんの引き攣った表情を見て…「えっ?マジ?」「可愛いの?その子!?」って、小さく聞こえる程度に呟いていたとか。
あーだこーだと、言い争いが続いた最後に、藤川さんが一言…。
『浅倉リーダーさん。じゃあ勝負しない?そっちの岡本詩織って子がグループで一番可愛いって言うのなら、《伊方つぐみ》と比べてどっちが可愛いか?で。勝負の日は《バレンタインフェス》でいいでしょ?』
そして藤川さんは、荒井さんに『里美ちゃん、そっちの《西尾美優貴》ちゃん出してよ!美優貴ちゃんもめちゃ可愛いから!』と頼み込んだ。
すると荒井さんは『うん…聞いといてみる』と返事をしていた…。
『海音ちゃんはあの時…「こりゃ分が悪いかな…」「つぐみちゃんも美優貴ちゃんも凄く可愛いよ…」「詩織ちゃんも可愛いんだけど…マズいかな」って、私にこそっと話してくれました…』
…それで、負けず嫌いな海音さんは『ふふっ。うちのグループに"まだデビューさせてない、幻のめちゃ可愛メンバー"がいるのを知らないで…そんな勝負持ち掛けて大丈夫?やる前からそっちの負け確定だよ?』と、強気で言い切ってしまったらしい…。
それを聞いた《Kira♠︎m》所属グループのリーダーたちも、ブチギレお怒り心頭で…。
『へぇ…初耳。そんな幻のメンバーなんていたんだぁ…ピプレに?』
詩織が、不思議そうにそう夕紀さんに訊くと…夕紀さんは恐る恐る、首を横に振ったあと…。
『…えっ?』
ゆっくりと…ぼっ、僕を指差した…!?
えっ…ちょっ?
そういうこと!!?
『ごめんなさい。私たちのせいで…お願いします』
お願いします…は分かった。
《金魚の姿で、バレンタインフェスに出てほしい…?》
…私たちのせいで…?
『えぇと、まず…顔を上げてください。夕紀さん』
『…?』
夕紀さんは恐る恐る、ゆっくりと顔を上げて僕を見た…不安そうな表情。
『じゃあ…出てもらえるんですか?』
『っていうか、なぜそうなったのか?その経緯を説明してくれませんか』
『…あ、ですね…』
…夕紀さんから、そこに至った経緯を聞いた。
なるほど。
そういうことか…。
自動車学校の仮免許試験、そして免許取得がそろそろ見え始めて…僕は堀内芸能事務所への《詩織のリハトレのサブマネージャーとしての付き添い》を、南野夕紀さんに代わってもらっていた。
そして、何日…何度か詩織に付き添いリハトレに顔を出すようになって、夕紀さんはアイドルグループ《Peace prayer》のリーダー、浅倉海音さんと知り合い、"同い歳"であることが判ってから急接近…とても仲良くなった。
更に先日のこと…リハトレが終わって『今日の練習は終了。それぞれ解散』となったときに、海音さんから『上野に行きつけの美味しいラーメン屋さんがあるんだけど、一緒にどう?私と行かない?』とのお誘いがあり、夕紀さんは海音さんと二人で夜の繁華街…上野へと出掛けることに…。
『ラーメンでお腹いっぱいになったら、もう一軒だけ付き合って…お願い。この近くに超カッコいいお兄さんが働く、凄くお洒落なカクテルバーがあるんだけど…』
海音さんはそう言って夕紀さんに提案し、夕紀さんもそれを承諾した。
…とても美味しかったラーメン屋を出て、二人ワイワイと笑いお喋りしながら、海音さんの言う《次のお洒落なカクテルバー》に向かう途中…ネオン看板輝く、とあるビルから…。
『…で、その《ビルから出てきたアイドルの女の子たち》って、誰だったんですか…?』
『はい。あの時は私も海音ちゃんも本当にビックリしました。その子たちというのは…』
…はぁ。また出た…。
《Kira♠︎m》所属のアイドルグループ"HoneyMaids"のリーダー、藤川舞莉ちゃんと…同事務所所属のアイドルグループ" Cue&Real"のリーダー…名前は《荒井里美》というらしい…と、更にアイドルグループ"T.S.S.D/Top Secret Sparkle Dolls"のサブリーダー…《片山桃香?》…がビルから出てきて、そのあとに続くように、それぞれのグループのメンバーらしい女の子たちが出てきて…合わせて10人くらいと、そのビルの前で鉢合わせになったらしい。
…説明すらややこしい…。
何だこの3つのグループ名…。
『…そして、そのビルの前で…海音ちゃんと、それぞれのリーダーたちが言い争いになったんです…』
夕紀さんはそう言って、怒るとも悲しむとも言えない、複雑な表情を僕らに見せた…。
どんな言い争いを?って夕紀さんに訊くと…。
『あら?見て。二流アイドルさんが歩いてらっしゃるじゃなーい。道を堂々と…二流のくせに。恥ずかしくないの?』という、藤川さんの言い罵りから始まり…。
『この人、《ピプレ》ってグループのリーダーらしいよ』
『でもそのグループってさぁ、全然可愛い子がいないって言うじゃない?可哀そ。あはは』
『うちら《Kira♠︎m》所属のアイドルグループなんて、みんな粒揃いの可愛い子ばっかなのにー』
『だーからこの子たちって、二流って言われる…ってか、二流アイドルグループなんだって』
『悔しい?だったらうちらよりも可愛い子、探してきたら?』
『でも嫌って言うでしょうね。こーんな二流グループに入るんなら《きらむ》所属の人気グループに入りたーい!って』
『あははー当たり過ぎててヤバーい可哀想ー』
『あはははははー♪』
『それぐらいでやめてあげなよー。この子ら泣いちゃうよ?あはははー』
『…私たち2人を寄って囲んで…彼女らは酷いことを、ずーっと言い続けてました…』
海音さんと夕紀さんは、しばらく…黙ってそれに耐えてたらしい…。
藤川さん…海音さんと1対1での言い争いなら、怖くて萎縮してたかもしれない…けど、同じ事務所所属のアイドル集団だからって、強気になって海音さんを言い攻めまくっていたんだろうな…なんて卑劣な。
『でもその時、海音ちゃんが《けどね!うちの新人メンバーの岡本詩織ちゃんは、顔も性格も可愛いし!スタイルだって細くて綺麗だし!それにこのグループが好きって、凄く喜んでくれたんだけど!》って反論したんです。《岡本詩織ちゃんは凄く可愛い!うちの他のメンバーもね!ってか…まだ他に文句あんの!?》って…』
夕紀さんのその一言を聞いた詩織は『うん。《入ったのがピプレで良かった》って、今でも思ってるよ』と言って、少し寂し気に微笑んで見せた。
藤川さんは、詩織とは実際に会っている。
だから海音さんの『詩織ちゃんは可愛い!文句ある!?』の一言に、顔を引き攣らせて、黙ってしまってたらしい。
詩織を直接見たことのない荒井さんと片山さんは、そんな藤川さんの引き攣った表情を見て…「えっ?マジ?」「可愛いの?その子!?」って、小さく聞こえる程度に呟いていたとか。
あーだこーだと、言い争いが続いた最後に、藤川さんが一言…。
『浅倉リーダーさん。じゃあ勝負しない?そっちの岡本詩織って子がグループで一番可愛いって言うのなら、《伊方つぐみ》と比べてどっちが可愛いか?で。勝負の日は《バレンタインフェス》でいいでしょ?』
そして藤川さんは、荒井さんに『里美ちゃん、そっちの《西尾美優貴》ちゃん出してよ!美優貴ちゃんもめちゃ可愛いから!』と頼み込んだ。
すると荒井さんは『うん…聞いといてみる』と返事をしていた…。
『海音ちゃんはあの時…「こりゃ分が悪いかな…」「つぐみちゃんも美優貴ちゃんも凄く可愛いよ…」「詩織ちゃんも可愛いんだけど…マズいかな」って、私にこそっと話してくれました…』
…それで、負けず嫌いな海音さんは『ふふっ。うちのグループに"まだデビューさせてない、幻のめちゃ可愛メンバー"がいるのを知らないで…そんな勝負持ち掛けて大丈夫?やる前からそっちの負け確定だよ?』と、強気で言い切ってしまったらしい…。
それを聞いた《Kira♠︎m》所属グループのリーダーたちも、ブチギレお怒り心頭で…。
『へぇ…初耳。そんな幻のメンバーなんていたんだぁ…ピプレに?』
詩織が、不思議そうにそう夕紀さんに訊くと…夕紀さんは恐る恐る、首を横に振ったあと…。
『…えっ?』
ゆっくりと…ぼっ、僕を指差した…!?
えっ…ちょっ?
そういうこと!!?
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