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G.F. - 再始動編 -

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『歩美ちゃん』

『えっ?あ、はい!』


啓介さんに呼ばれた歩美さん。
何故か急に驚いたような感じに、勢いよく振り向いて啓介さんを見た。


『ありがとう。俺がこんな無理を頼んだから、あんな深夜に独り出掛けて、金魚を迎えに行ってきてくれて…ごめんな』

『え、あ…あの…。私の…妹だから…そ、そんなのは当然で…』


恥ずかしそうに顔を赤らめて両手をギュッと握って、体をカチコチに固くして…急に緊張したように背筋をピンと伸ばして立っている歩美さん。


『んん…?』


そんな啓介さんと歩美さんの様子を、怪しい視線で眺めていた詩織。


『なんか変じゃない?鮎美ちゃん…?』

『変…って?』

『だって、大晦日の昨夜までは啓介くんと鮎美ちゃん、普通に打ち解けあって話してたのよ。だけど今は…なんか…』


ちょっと首を傾げて、今度は僕を見た詩織。


『金魚…何か知ってる?何かあったの?早朝に…?』

『いやぁ…それ、僕のせいかも…』

『??』




僕はこの岸鉾神社の駐車場へと向かう車内で《歩美さんのアパート探しの件》から、《引っ越しの予定なし》《2人分のお弁当とか2人でお買い物に行ってる》って話をして、《とっても仲の良い素敵な新婚カップルみたいですね!》って言ったことを、詩織に話した。


『…あれからたぶん、歩美さんはに気付いて…それで、あんなギクシャクに…』

『ふぅん…なるほどぉ。でも、私はちょっと違うって思うなぁ』

『えっ?どう…?』


歩美さんと啓介さんの様子を、ちょっと不安そうに眺めていた詩織の表情が、少し和らいで微笑んだ…ように見えた。


『だって《2人が素敵な新婚カップルみたい》って言ったのは、それはただの金魚からそう見えたって感想…ってだけでしょ?』

『うん…まぁ』

『金魚のその感想の一言から鮎美ちゃんが《啓介くんが私のこと好き!って気持ちに気付いた!》ってなる?』


うーん。確かに…?


『ちょっとその流れは、こじつけ理由みたいで変じゃない?』

『ってか、もう詩織の考える結論から教えてよ!』


詩織は小さく「きゃはははは」と笑った。


『鮎美ちゃんは啓介くんとの新婚カップルの姿を一瞬、想像したんだと思う。それで気付いたんだと思うの…』


あー!だから!結論は!


『《啓介くんが鮎美ちゃんのことが好き》じゃなくって、鮎美ちゃんが《いつからか私、啓介くんのことが好きになってた…!?》ってことに…』


…えっ、あ…。
そういうことかぁ!

なんか、凄く腑に落ちたというか…これが本当の答えだと思っていた僕の勘違いが綺麗に溶けて、しっくり来たって…スッキリした!って感じ。

やっぱり、この《恋愛思考と感覚の差》が、男子女子の思考回路の違いというものなのか、しくはただの《信吾と詩織との違い》なのか…とにかく、詩織の繊細で的確な恋愛思考やその感覚を、ちょっと垣間見たような気がした。


『金魚、さっきはなんか《余計なことをした…》みたいな言い方だったけど、その逆かもよ』


なんか…結果オーライだったみたい…?
それと詩織の今のこの笑顔が、何だか凄く愛らしく、キラキラと輝いて見えて、ちょっとドキドキした…って僕、変?


『恋愛音痴で堅物だった啓介くんだもん。もしかしたら鮎美ちゃんがの方から積極的になって、2人の関係を恋…うぅん、ダメダメ!告白は男子から。男らしく!』



…うん。そう言われると…。
啓介さんと少し恥ずかしそうな歩美さんとのあの雰囲気が、純粋で清潔感ある片想い同士の高校生みたいに、とても初々しくてキラキラと輝いて見えた。

いいな。二人が羨ましい。




急に爆弾が爆破したかのように、きゃあきゃあと周りの女の子たちがまた騒ぎだした。


『おっ、ようやく到着したぞ。鈴ちゃんが』


そう言って、向こうを指差す秋良さん。

白と桜色のようなピンクのツートンの軽自動車…静かにゆっくりと駐車場へと入ってきた。
運転席には確かに鈴ちゃんの姿。ここからでもハッキリと確認できる。






















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