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G.F. - 再始動編 -
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メンバーのみんなのことが大好き…そう言ったあと何も話さず、詩織は5秒ほど固まったように動かなかった。
何?どうしたの?あの子固まってるけど…。
観衆も、池田さんも僕も海音さんたちピプレのメンバーも、そう思って心配し掛けたころ…まるで詩織がハッと意識を取り戻したかのように、恥ずかしそうに笑いながらまた話し始めた。
『あの、ごめんなさい…えっと。このアイドルグループ《Peace prayer》のメンバーは、何度か入れ替わりながらもこうやって、結成当時からずっと、皆さんの幸せや笑顔や夢ある未来を願いながら、歌やダンスや言葉で繋ぎながら、今日まで続いてきました…』
『はーぁ。何だよ。ちょっと心配になってビビりかけたよ…なぁ!』
『ですね。でも僕は詩織なら大丈夫だと信じてました』
『ははは。本当かよぉ』
そう言って笑いながら、僕と池田さんは互いを見合った。
たぶん一瞬、何かの理由で頭の中が真っ白になって、自己紹介の言葉が飛んでしまったんだけど…その言葉をふと思い出せたんだと思う。
『私たち《Peace prayer》はファンの皆さんを、そして日本や世界中の人たちの未来の夢や幸せを、これからも願い祈りながら活動を続けていきます。だから…皆さんも私…岡本詩織とメンバーたち《Peace prayer》のことを、ぜひ応援してください!宜しくお願いします!』
ぜひ応援してください。宜しくお願いします…今までで一番大きな声で詩織はそう言って、深々と頭を下げた。
観衆のあちこちから拍手が湧き起こった。
『ありがとうございます!』
そう言った詩織の左隣と右隣へと、明日佳ちゃんと心夏ちゃんが2歩前に出て並んだ。
『どうか、ぜひ私たちを応援してください。次の曲が私たちの最後の曲になります。今年のクリスマスを想って作った新曲です』
『この曲を思い浮かべながら、夢の中で詩織ちゃんとクリスマスデートしてみてはいかがですか?聴いてください。《Merry sweet love story》』
心夏ちゃんが《詩織ちゃん》って…初めて聞いた。
言うんだ。心夏ちゃんも詩織ちゃんって。
詩織は自己紹介のほうは、ちょっと不安もあったけど…歌や振り付けのほうは完璧だった。
表情も明るく笑顔で、可愛らしく楽しそうだったし、与えられたソロパートもとても良かった。
色々あったけど、今日の1回目の《Peace》ステージパフォーマンスが終わった。
『ありがとうございましたー!』と大きく元気に言って、観衆に向かって両手を振って頭を下げて…詩織たちピプレのメンバーは、特設ステージを下りて控え室へと戻ってゆく。
『よし。ありがとう。ちゃんと見届けられた。じゃあ僕はこのまま事務所に帰るよ』
池田さんが満足気な表情で、僕にそう言った。
『えっ?最後に寄らないんですか?控え室に』
『あぁ。僕の代わりを全部君に任せる。ってことで…頼んだよ』
池田さんは小さく手を振って、そのまま振り返らず離れていった…。
僕も振り返らず、控え室へと急いで向かう。
『皆さん。お疲れさま』
『あー。お疲れさまでーす』
『岩塚さんも観てくれてたんですよね!』
『応援さんきゅでーす♪』
『どうでしたか?』
『私たちのステージは…?』
控え室では6脚のパイプ椅子で円を描いて、ピプレのメンバーたちは座っていた。
『詩織…』
『…うん』
パイプ椅子に座ったまま詩織が俯き加減に、少し恥ずかしそうに後ろに立つ僕を振り返って見上げた。
『…ごめんね。お客さんの中に、私を指差して何か話してた様子の女の子たちがいて…』
…あ。
僕らの近くにいた、あの女の子たちのことだろう。
『それを見ちゃったら一瞬、頭ん中の何もかもが飛んじゃって…』
僕は詩織のその言葉に、ニコッと笑って返した。
『ねぇねぇ詩織ちゃん。《メンバーのみんなが大好きですー》ってあの言葉は、その場で考えたの?』
海音さんが、突っ込むように詩織に訊いた。
『うぅん。即興の言葉ってより…本当に飛んじゃって何も言葉が思い浮かばなかったから…ちょっと焦っちゃって…自分の今の本心を話して、なんとかこの場を繋ごうって思っ…』
『好きー!私も詩織さんのこと!』
詩織の隣に座っていた優羽ちゃんが、いきなり詩織の手をぎゅっと掴んでそう言った。
『えっ、え…あ、ありがとう…』
『わっ私も大好きです!優しい詩織さんが』
千景ちゃんも、目をキラキラさせてそう言った。
『私たちも、心から詩織さんのことを尊敬しています』
『本当に素敵です…あ、あと…ステージでは生意気にも《ちゃん付け》で呼んでしまって。すみませんでした…』
『きゃははは。なに?急に』
詩織は心夏ちゃんに『そんなことで謝らないで』って、笑ってた。
何?どうしたの?あの子固まってるけど…。
観衆も、池田さんも僕も海音さんたちピプレのメンバーも、そう思って心配し掛けたころ…まるで詩織がハッと意識を取り戻したかのように、恥ずかしそうに笑いながらまた話し始めた。
『あの、ごめんなさい…えっと。このアイドルグループ《Peace prayer》のメンバーは、何度か入れ替わりながらもこうやって、結成当時からずっと、皆さんの幸せや笑顔や夢ある未来を願いながら、歌やダンスや言葉で繋ぎながら、今日まで続いてきました…』
『はーぁ。何だよ。ちょっと心配になってビビりかけたよ…なぁ!』
『ですね。でも僕は詩織なら大丈夫だと信じてました』
『ははは。本当かよぉ』
そう言って笑いながら、僕と池田さんは互いを見合った。
たぶん一瞬、何かの理由で頭の中が真っ白になって、自己紹介の言葉が飛んでしまったんだけど…その言葉をふと思い出せたんだと思う。
『私たち《Peace prayer》はファンの皆さんを、そして日本や世界中の人たちの未来の夢や幸せを、これからも願い祈りながら活動を続けていきます。だから…皆さんも私…岡本詩織とメンバーたち《Peace prayer》のことを、ぜひ応援してください!宜しくお願いします!』
ぜひ応援してください。宜しくお願いします…今までで一番大きな声で詩織はそう言って、深々と頭を下げた。
観衆のあちこちから拍手が湧き起こった。
『ありがとうございます!』
そう言った詩織の左隣と右隣へと、明日佳ちゃんと心夏ちゃんが2歩前に出て並んだ。
『どうか、ぜひ私たちを応援してください。次の曲が私たちの最後の曲になります。今年のクリスマスを想って作った新曲です』
『この曲を思い浮かべながら、夢の中で詩織ちゃんとクリスマスデートしてみてはいかがですか?聴いてください。《Merry sweet love story》』
心夏ちゃんが《詩織ちゃん》って…初めて聞いた。
言うんだ。心夏ちゃんも詩織ちゃんって。
詩織は自己紹介のほうは、ちょっと不安もあったけど…歌や振り付けのほうは完璧だった。
表情も明るく笑顔で、可愛らしく楽しそうだったし、与えられたソロパートもとても良かった。
色々あったけど、今日の1回目の《Peace》ステージパフォーマンスが終わった。
『ありがとうございましたー!』と大きく元気に言って、観衆に向かって両手を振って頭を下げて…詩織たちピプレのメンバーは、特設ステージを下りて控え室へと戻ってゆく。
『よし。ありがとう。ちゃんと見届けられた。じゃあ僕はこのまま事務所に帰るよ』
池田さんが満足気な表情で、僕にそう言った。
『えっ?最後に寄らないんですか?控え室に』
『あぁ。僕の代わりを全部君に任せる。ってことで…頼んだよ』
池田さんは小さく手を振って、そのまま振り返らず離れていった…。
僕も振り返らず、控え室へと急いで向かう。
『皆さん。お疲れさま』
『あー。お疲れさまでーす』
『岩塚さんも観てくれてたんですよね!』
『応援さんきゅでーす♪』
『どうでしたか?』
『私たちのステージは…?』
控え室では6脚のパイプ椅子で円を描いて、ピプレのメンバーたちは座っていた。
『詩織…』
『…うん』
パイプ椅子に座ったまま詩織が俯き加減に、少し恥ずかしそうに後ろに立つ僕を振り返って見上げた。
『…ごめんね。お客さんの中に、私を指差して何か話してた様子の女の子たちがいて…』
…あ。
僕らの近くにいた、あの女の子たちのことだろう。
『それを見ちゃったら一瞬、頭ん中の何もかもが飛んじゃって…』
僕は詩織のその言葉に、ニコッと笑って返した。
『ねぇねぇ詩織ちゃん。《メンバーのみんなが大好きですー》ってあの言葉は、その場で考えたの?』
海音さんが、突っ込むように詩織に訊いた。
『うぅん。即興の言葉ってより…本当に飛んじゃって何も言葉が思い浮かばなかったから…ちょっと焦っちゃって…自分の今の本心を話して、なんとかこの場を繋ごうって思っ…』
『好きー!私も詩織さんのこと!』
詩織の隣に座っていた優羽ちゃんが、いきなり詩織の手をぎゅっと掴んでそう言った。
『えっ、え…あ、ありがとう…』
『わっ私も大好きです!優しい詩織さんが』
千景ちゃんも、目をキラキラさせてそう言った。
『私たちも、心から詩織さんのことを尊敬しています』
『本当に素敵です…あ、あと…ステージでは生意気にも《ちゃん付け》で呼んでしまって。すみませんでした…』
『きゃははは。なに?急に』
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