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G.F. - 再始動編 -

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『あ…あの。ごめんね、信吾くん…』


ダイニングルームにて。
テーブルに向かい合って座った僕と小林愛美先生。
少し気まずそうに、俯きながら僕を見た。


『可愛い女の子を連れ込んで…なんて悪いこと言っちゃって…』

『あ…いえ。僕は全然気にしてないんで』

『高校の教員として失格ね。さっきの汚い言葉』

『うーん…』


僕は僕で、それに対して出来るだけ柔らかく、ニコッと作り笑顔で先生に返した。


「それにしても可愛いでしょ。まるで昔からウチに娘がいたみたい」


カウンター向こうのキッチンで、3人分のケーキと紅茶を準備してくれている母さん。
このケーキはあの超高層ビル《アンプリエ》の、あのカフェスイーツ店《フィユタージュ》のケーキらしい。


『ねー。本当にメイクした男の子だなんて信じられないくらい。可愛い』


覗くように僕の顔をよく見る小林先生。
僕はスーッと…よそ見した。


『それよ!その横顔!女子大で初めて会った、若かったあの頃の美穂みたい』

『やっぱり、そうなの?お父さんもそんなこと言ってたんだけど』


母さんが四角いお盆にケーキを3つ、紅茶も3つ運んできてくれた。
それらを小林先生の目の前に一つ、僕の前に一つ、僕の隣にも一つ置いて、僕の隣に座った。

目の前に美味しそうなケーキと紅茶。僕はまた正面へと顔を戻してそれらを見た。


『へぇ…信吾くんのこの女の子顔、お父さんも見てるんだぁ』

『ぼっ僕、あっちでケーキ食べてくるから!』


そう言って、座った母さんの膝の上のお盆をさっと取って、僕はケーキと紅茶を乗せて隣のリビングへと駆け出した。
恥ずかしい…ってより、あんまり僕の《金魚顔》をジロジロと見られたくなかった。




リビングのテーブルにお盆を置き、ケーキの乗った皿を手に取ってテーブルに置こうとしたとき…。

…あ。
サイレントにしてポケットに入れてたスマホが、ブルブルと震えてる…長い…ってことは、これはLINEとかメールとかじゃなくて、電話の着信だ。
誰から…?

ポケットからスマホを出し、画面を見た…アンナさんからだ。


『もしもし…』

「もしもし。信吾くん?それとも今は金魚だったり?」

『冗談はやめてください。今は…顔だけ金魚です』

「あははは。やっぱりね」


この電話の、アンナさんからの用件は何なんだろう…そう思っていたら、衝撃の一言。


「さっきね、お店に信吾くんのお母さんが来てくれたの。お連れの方とご一緒に」

『…。』


か、母さん…。
あれだけ念押ししてまで《信吾の母であることは内緒に!》って言っておいたのに…あぁ。


「とても若く見えて、可愛らしいお母さんだったわ。挨拶もご丁寧にしていただいて」

『けど、確か…僕はアンナさんのお店の話を母さんにしてないはずなんです。なのに何で母さんは…』

「《うちの信ちゃんが実家に帰ってきたとき、連れてきたとても可愛いくてお上品な女の子から聞いて》って言ってたから、その子って詩織のことよね?」


…あぁ。は詩織だったか…。
たぶん詩織が母さんに、詩織と僕が出会った頃の、そのきっかけの話をしたときに…アンナさんの美容院《クローシュ・ドレ》の名前を出してたんだ…。

アンナさんとの電話が済んで、美味しいケーキも半分食べ終えたころ…。


『ねぇ、女の子の信吾くん!』

『!!』


突然、リビングに小林先生が突入してきた!!?


『私にも紹介してくれないの?ねぇ。高校時代のこの恩師に!』

『…えっ?だっ誰のこと…ですか?』

『誰のこと?って…またまたぁ。実家に連れてきて、ご両親に紹介したそうじゃないのぉ♪』

『???』


僕が頭の中の意識と記憶を、ぐるぐる引っ掻き回していると…。


『ほらほらぁ。凄く可愛い彼女ちゃん…っていうか、分かるでしょ?信吾くんの将来のお嫁さんよ』

『ええっ!!?おっお嫁さ…ん??』

『詩織ちゃんとかっていう…』

『せっ、先生!それ違う!ごっ誤解だから!!』


母さぁぁぁぁーん!!

……。




小林先生は、帰ってきた父さんと挨拶を交わすと…父さんと入れ代わるように帰っていった。


『じゃあまたね。特異趣味持ちの可愛い信吾くん♪』

『…。』


この金魚メイクは…特異な趣味でやってるんじゃない…。
なんて、小林先生に説明したところで…。


それと僕は父さんに、この《金魚メイク顔》はもう見られたくなかったから、そのままタダッと慌てて2階の自分の部屋へと…避難した。

























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