Ｇ.Ｆ. -ｺﾞｰﾙﾄﾞﾌｲｯｼｭ-

G.F. - 再始動編 -

page.498

『あ、次は私たちですね』


双子が息を合わせたように、テンポよく名前を言った。


『私は氷上明日佳あすかです。18歳です』
『私は氷上心夏ここなです。私も18歳です』


二人とも、身長は揃って中原優羽ちゃんよりは少し低かった。
明日佳ちゃんは後ろ髪を束ねてポニーテールにしてた。
心夏ちゃんは髪を下ろしたまま。後ろ髪は肩に掛かるくらいの長さだった。

二人の名前を聞いた詩織はウンと頷いたあと、羨ましそうに微笑みながら言った。


『いいなぁ…でも、なんか神秘的よね。双子って』

『…えっ？』
『ち、違います…』


…えっ？ってなったのは、この二人だけじゃない。
詩織も僕も、顔は『ど、どういうこと？？』って語っていた。


『私のお父さんと心夏のお父さんが兄弟なんです』
『私のお父さんが兄で、明日佳のお父さんは弟です』


…待って。
一旦頭の中を整理させて…。


『双子じゃない…？つまり…《双子ほど似てる従姉妹》って…こと！？』

『はい』
『そうです』


突然、西村さんが『ごめん、ちょっと聞いて』と、自己紹介中に割って入ってきた。


『僕と山本さんと和田先生は、隣の部屋で話してくるから。君らはここで自己紹介の続き、やってて』


和田先生…あ、このダンスの女性の先生のことかぁ。


『あと、一通り全て済んだら、みんなでランチ行きましょう』


プロデューサーの西村さんと、詩織のマネージャーの山本さん、それとダンスの和田先生が部屋を出て行こうとした時…。


『待ってください！西村プロデューサー！』


リーダーの浅倉海音さんが、西村さんに声を掛けた。


『この男の子は誰なんです？』


この男の子…というのは…僕のこと。
西村さんが山本さんの顔を見た。山本さんも西村さんの顔を見る。


『あ、ごめんなさいね。この子は岩塚信吾くんって言って、詩織ちゃんのサブマネージャーを務めることになる子なの』

『サブ…マネージャー…？』


僕も…そんな話初めて聞いた…！
サブマネージャーって、どういうこと？？


『詩織ちゃんのマネージャーは私だけど、私は他に伊藤鈴ちゃんとか、永野公貴きみたかくんとか、マネジメントの担当数が多いから』


…だから僕が、山本さんをサポーして、山本さんから指示を貰いながらこれから詩織の付き人をするんだ、って山本さんは説明してくれた。

これ…本当なの？？それとも今だけの即興話？？
それでも、メンバーの子たちは『あー』『なるほどですー』って、僕を見ながら納得してくれた。


『それとね、彼はこう見えてメイクの天才なのよ。詩織ちゃんの専属メイク担当くん』


その山本さんの一言を最後に、西村さんたちは部屋を出て行った。


ポカーンと、僕を見ているメンバーの子たち。


『じゃ、僕も自己紹介要るのかなぁ…岩塚信吾です…宜しくお願いします…』







リーダーの浅倉海音さんが『あっ！ごめん！千景』って、最後の子に謝ると…。


『小林千景ちかげです。この中では一番歳下の16歳です…』


中原優羽ちゃんと同じくらいの背丈。後ろ髪は長くて、それを半分に分けてヘアゴムで束ねて《おさげ》にしている。



メンバーを纏まとめると…。

リーダーは浅倉海音さん。21歳。
氷上明日佳ちゃんと氷上心夏ちゃんは18歳。
中原優羽ちゃんは17歳。
小林千景ちゃんは16歳。

そこに新たに加入するのが、この岡本詩織。20歳。







…あれから、30分ほど経った。
でも、まだ西村さんや山本さん達は戻ってこない。

今まで、新たに詩織を加えた《Peace prayer》の６人のメンバーは、また床に座り込んで何となく雑談をして過ごしていた。

その雑談のほとんどは、詩織の自慢気な話…っていうか、僕と詩織との偶然？の出会いの話から始めて、僕が復讐のために女装を始めたことまで赤裸々に話して、それで街の女の子たちに本当に復讐を果たしたところまでの全て…。


浅倉海音さんが僕を見ながらニヤニヤと笑う…。


『岩塚慎吾くん…可愛い女装の天才？なの？今度見せてね…ふふっ。私たちにも…♪』

『私も見たいですー♪』
『いつ見せてもらえますかー♪』

『…。』


…詩織…話しちゃダメだろ…。
そのことは冴嶋プロダクションで云うところの、門外不出の《極秘話》だったはず…あーぁ。

詩織…清々すがすがしいくらいに悪びれた様子も全然なし。