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G.F. - 再始動編 -
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山本さんと挨拶を交わしたあと、すぐに僕らに『はい。立って』と言った。
僕も詩織も素直にロングソファーから立ち上がる。
『ちょっと予定時間より早いけど、出掛けましょう』
『えっ?どこにですか?』
…って詩織が訊くのも当然。いきなりなんだから。
『目黒区にある堀内芸能事務所よ。詳しいことは、車の中で話しましょう』
僕らの乗った山本さんの車は、首都高速を使って目黒区へと向かう。
運転はもちろん山本さんで、僕と詩織は後部座席に座った。
『うちの冴嶋プロダクションはね、堀内芸能事務所と仲がいいの』
『へぇ。そうなんですね』
僕は詩織と山本さんとの会話を聞きながら、窓から見える街の風景を黙って眺めていた。
『べつに業務提携の契約とかしてるわけじゃないけど、一緒に仕事することが多いのよね』
山本さんが教えてくれたんだけど、数ある芸能事務所には、それぞれに友好関係とかライバル関係とかがあるらしい。
創業者同士が同級生だったり、兄弟会社だったり、大きな事務所の傘下だったり…他にもいろいろ。
『それでね、詩織ちゃんは《堀内》に所属する《Peace prayer》っていうアイドルグループに加入してもらうわ』
『えっ…あの、どんなグループなんですか…?』
プレアー…って、《祈るひと(pray-er)》って意味だよね?
つまり《平和の祈祷師》とか《巫女さん》って感じの意味なのかな?
『ちなみに、グループ名の由来は《平和を祈る人》っていう意味だって』
ほら。やっぱり。
『でも大丈夫よ。うちの事務所からはもう一人《中原優羽》って子がメンバーにいるから』
『中原優羽ちゃんですか…それは心強いですね』
それから、また少し沈黙の時間…。
『…山本さん』
『はい。なに?』
とある交差点の赤信号で停車したとき、詩織が話し掛けた。
『グループのメインの活動としては…どんな』
『詩織ちゃんって、アイドルっぽい全員お揃いのキラキラなミニスカのユニフォームとかを着て、団体で歌って踊るとかって、あまり好きじゃないでしょ…?』
『はい。まぁ…ですね』
山本さんが『ほら、やっぱりね!』って理解していた感じで、ウフフと小さく笑った。
『大丈夫よ。どちらかというと…みんなで歌って踊ってライブするってより、バラエティ寄りというか…番組の屋外ロケとかクイズ番組出演とか、地方のイベント活動の司会参加とか、あとはそれぞれの個人活動とか…ね』
『あー。そうなんですね』
詩織…グループでのアイドル活動とか苦手だったんだ。なんか詩織の性格からして解る気もするけど。
『あとね…鈴ちゃんも所属してたことがあるのよ。このグループに』
『えっ!そうなんですか!』
『そうなの。その《Peace prayer》結成当時の初期メンバーの一人としてね』
鈴ちゃんの所属していたグループ…そう聞いて、詩織は少し安心した様子。
『ちなみに、今は何人のアイドルグループなんですか?』
『詩織ちゃん加入で6人になるって』
『6人…だったら私、安心しました…大人数のアイドルグループとかじゃなくて。本当に良かったです…』
僕も詩織も、ちょっと古く見える7階建てのビルを見上げていた。
『お待たせ』
山本さんは僕らをこのビルの目の前で降ろし、近くの有料駐車場に車を停めに行き、今戻ってきた。
『思ってたより…普通ですね』
『僕も。もっと大きな真新しいビルを想像してました』
『そうね。堀内さんは芸能事務所では、名高い老舗の一つだから』
『それと比べれば、うちの事務所なんてまだ若いほうよ』って、山本さんは話してくれながら『じゃあ、入りましょう』って。
僕らは山本さんに続いて、ビルの1階ロビーへと入っていった。
僕も詩織も素直にロングソファーから立ち上がる。
『ちょっと予定時間より早いけど、出掛けましょう』
『えっ?どこにですか?』
…って詩織が訊くのも当然。いきなりなんだから。
『目黒区にある堀内芸能事務所よ。詳しいことは、車の中で話しましょう』
僕らの乗った山本さんの車は、首都高速を使って目黒区へと向かう。
運転はもちろん山本さんで、僕と詩織は後部座席に座った。
『うちの冴嶋プロダクションはね、堀内芸能事務所と仲がいいの』
『へぇ。そうなんですね』
僕は詩織と山本さんとの会話を聞きながら、窓から見える街の風景を黙って眺めていた。
『べつに業務提携の契約とかしてるわけじゃないけど、一緒に仕事することが多いのよね』
山本さんが教えてくれたんだけど、数ある芸能事務所には、それぞれに友好関係とかライバル関係とかがあるらしい。
創業者同士が同級生だったり、兄弟会社だったり、大きな事務所の傘下だったり…他にもいろいろ。
『それでね、詩織ちゃんは《堀内》に所属する《Peace prayer》っていうアイドルグループに加入してもらうわ』
『えっ…あの、どんなグループなんですか…?』
プレアー…って、《祈るひと(pray-er)》って意味だよね?
つまり《平和の祈祷師》とか《巫女さん》って感じの意味なのかな?
『ちなみに、グループ名の由来は《平和を祈る人》っていう意味だって』
ほら。やっぱり。
『でも大丈夫よ。うちの事務所からはもう一人《中原優羽》って子がメンバーにいるから』
『中原優羽ちゃんですか…それは心強いですね』
それから、また少し沈黙の時間…。
『…山本さん』
『はい。なに?』
とある交差点の赤信号で停車したとき、詩織が話し掛けた。
『グループのメインの活動としては…どんな』
『詩織ちゃんって、アイドルっぽい全員お揃いのキラキラなミニスカのユニフォームとかを着て、団体で歌って踊るとかって、あまり好きじゃないでしょ…?』
『はい。まぁ…ですね』
山本さんが『ほら、やっぱりね!』って理解していた感じで、ウフフと小さく笑った。
『大丈夫よ。どちらかというと…みんなで歌って踊ってライブするってより、バラエティ寄りというか…番組の屋外ロケとかクイズ番組出演とか、地方のイベント活動の司会参加とか、あとはそれぞれの個人活動とか…ね』
『あー。そうなんですね』
詩織…グループでのアイドル活動とか苦手だったんだ。なんか詩織の性格からして解る気もするけど。
『あとね…鈴ちゃんも所属してたことがあるのよ。このグループに』
『えっ!そうなんですか!』
『そうなの。その《Peace prayer》結成当時の初期メンバーの一人としてね』
鈴ちゃんの所属していたグループ…そう聞いて、詩織は少し安心した様子。
『ちなみに、今は何人のアイドルグループなんですか?』
『詩織ちゃん加入で6人になるって』
『6人…だったら私、安心しました…大人数のアイドルグループとかじゃなくて。本当に良かったです…』
僕も詩織も、ちょっと古く見える7階建てのビルを見上げていた。
『お待たせ』
山本さんは僕らをこのビルの目の前で降ろし、近くの有料駐車場に車を停めに行き、今戻ってきた。
『思ってたより…普通ですね』
『僕も。もっと大きな真新しいビルを想像してました』
『そうね。堀内さんは芸能事務所では、名高い老舗の一つだから』
『それと比べれば、うちの事務所なんてまだ若いほうよ』って、山本さんは話してくれながら『じゃあ、入りましょう』って。
僕らは山本さんに続いて、ビルの1階ロビーへと入っていった。
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