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G.F. - 再始動編 -

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浅見丈彦さんは、もう40年も俳優をやっている凄い人。年齢は57歳。
そして冴嶋プロダクションでは、俳優を務めながら《タレント指導教育部の部長》でもある。

今年の11月の第4木曜日に行った《金魚の女装と復讐》にも、浅見丈彦さんは若手女優の寺本陽凪さんと駆け付けてくれたんだった。

マネージャーの山本さんが座っていた《空いた席》は、元々は浅見さんが座る予定だったらしい。




あのあと…。
冴嶋社長から指導教育部として浅見さんが改めて紹介され、すぐに《初見面談会》はお開きに。

会議室から廊下へと出た僕と詩織に、冴嶋社長から『次は5階の社長室へ行って。私の秘書を務めてくれている朱莉あかりちゃんが居るから』って。




3階からエレベーターに乗り5階へ。
エレベーターから出ると、いきなりそこが社長室だった。


『お疲れさまです。お待ちしておりました。こちらへどうぞ』


津田朱莉さんは30歳の、これまたお綺麗な秘書さん。
朱莉さんの案内で、詩織と僕は応接席へ。


『ここにお掛けになって、少々お待ちください』

『はーい』
『はい』


朱莉さんが案内してくれた、黒い本革のソファー。そこに2人でゆっくりと座る。
ドタドタと足音を立てて、後から追い掛けて来るようにこの社長室へとやって来た、総務部部長の松下諭さん。54歳。

僕らの前に座って、松下総務部長は資本金や企業理念などの《会社の詳細》を説明してくれた。
更に契約書の難しい《業務提携約款》という項目を長々と読んで…。







『記入終わりましたぁ』
『…僕も記入…終わりました』


…僕らは《業務提携契約書》に住所や氏名などを記入。
契約期間は、とりあえず3年らしい。


『あー…ありがとう君たち。私はこれですぐ戻りますが…君たち、芸能活動頑張ってね』

『はーい。ありがとうございます』
『ありがとうございます』


そう言うと、松下総務部長は2枚の契約書を持ってきたファイルに入れて立ち上がった。
そして慌ててエレベーターへと向かって軽く駆け出し…ん?

…止まった?そして振り向いて僕を見た…?


『君…』

『えっ?僕ですか…?』

『そう。君。本当に20歳の男の子?そうは見えないけど…』

『えっ、あ…はい。そうですけど…』

『凄いね。本物の女の子にしか見えないよ。それじゃあ私は急いでるんで…』


…そして改めて、エレベーターに乗って忙しく消えていった松下総務部長…。
僕はしばらく、ポカーンとエレベーターを見てた。


『きゃははは♪』


詩織は笑ってるし…そして。


『私もよ。今の今までずっと、あなたを女の子だと思ってた。君凄いねー。本当に』


社長秘書の朱莉さんも、そう言って笑ってた。

そしてまた、エレベーターの扉が開いた。
出てきたのは、冴嶋社長と池田さん。


『朱莉ちゃん、すぐ出掛けたいんだけどいい?』

『はい。私はすぐにでも出掛けられます』


社長もまた忙しそうに、朱莉さんとエレベーターに乗り、消えていった。


『さぁ…て。君たち』


さっき松下総務部長が座っていたソファーに、池田さんがドカッと座った。


『ここでちょっと僕とお喋りをしようか。そのあと少し早めのディナーに出掛けよう』

『…いいんですかぁ?』
『ありがとうございます』


…ん?
急に池田さんが慌てて言った。


『えっ、それって…僕がディナーを奢るって流れ!?』

『あれぇ?違ったんですか?』


それで僕らは揃って大笑い。
結局、池田さんは東京港区のとあるパスタ屋さんで、期待どおりディナーを奢ってくれたんだけど。

ふと見た壁掛け時計は…午後4時19分を指して…い…。







『信ちゃん!』

『うわぁ!!』


視界がぐるんぐるんする…。

え?…あれ?…あ…。


『呼んでも下りて来ないから。寝てたのね』

『あ…ごめん。母さん』

『うぅん。いいのよ』


僕は自分の部屋のベッドで寝てた…。
母さんは僕の部屋にいた。


『夕食の準備ができたの。下りてきて』


…え?もうそんな時間…?


『父さんは?』

『もう帰ってきてるわよ。早く夕食にしましょう』


うーん…背伸び。
じゃあ行こうか…。























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