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16話 砦での会話 その2
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「姉さんは多分……私との関係をずっと、仲良くやって来ていたと思っていたでしょう?」
簡易ベッドに眠った姉妹の会合とでも言えばいいのだろうか……アリシアは明かりが消えた部屋で、私に問いかけて来ていた。私は彼女の質問に答える。
「そうね……少なくとも、私はあなたとの仲は良いと考えていたわ。でも……思い過ごしだったみたいね」
「ええ、そうよ……私は以前から、姉さんが疎ましかった」
「そう……」
信用していた妹に、婚約者を奪われた。その事実を知ってからは、彼女の言葉は真実なのだろうと嫌でも分かってしまう。私は頼れる姉を演じていただけ……裏ではアリシアに笑われていたのでしょうね。分かってはいたけれど……やっぱり、可愛いと思っていた妹から直接言われると傷付くわね。
「どうしてそこまで私を? あなたの方が美人じゃない」
「そうね……でも、私の好きになった人はみんな、姉さんを気に入っていた。私は見た目だけでなく、勉学だって優れていたのに……その頃からよ、姉さんを疎ましく思うようになったのは」
「……いつぐらいの時か、思い出せないのだけれど」
「私だって正確には覚えていないわ……でも、いつか姉さんを選んだ人物を奪ってやる。そういう想いは日に日に強くなっていった」
そういうことか……今回のレザード様との婚約破棄。アリシアの奇行の裏にはそういう事情があったのね。私はその事情を知れたことで、少しだけスッキリした気分になっていた。もちろん、それくらいで彼女を許す気なんてないけれど。
「でも、ありがとうアリシア……話してくれて良かったわ」
聞けたことは素直に嬉しい……とりあえず、アリシアにお礼を言っておく。
「変な姉さん……私はレザード様を奪った張本人なのに。お人よし過ぎない? 最初の質問に戻るけど、私のこと恨んでいるんでしょう?」
「そうね恨んでいるわ……この恨みは、そう簡単には消えないでしょうね。アリシア……あなたには、やってもらわなければならないことが、たくさんあるわ」
「怖いわよ……姉さん」
「なにせ、海岸線の総責任者になられるレザード様の婚約者なんですもの。アリシア……あなたの責任は今後、とても大きくなるでしょうね」
「言ってくれるわ……流石はケルヴィン王太子殿下の婚約者っていうところ?」
「ちょ、何を言ってるのよ……別に私は……!!」
「冗談で言ってみたんだけど……もしかして、脈ありだったの? わ~お、これはスクープだわ」
「アリシア……!」
「きゃあっ!」
私は彼女の毛布を咄嗟にめくっていた。アリシアは叫び声をあげている。
……なんだろう、とても笑える状況ではないんだけど。久しぶりに姉妹の本音がぶつかったような……そんな清々しい気分だった。
簡易ベッドに眠った姉妹の会合とでも言えばいいのだろうか……アリシアは明かりが消えた部屋で、私に問いかけて来ていた。私は彼女の質問に答える。
「そうね……少なくとも、私はあなたとの仲は良いと考えていたわ。でも……思い過ごしだったみたいね」
「ええ、そうよ……私は以前から、姉さんが疎ましかった」
「そう……」
信用していた妹に、婚約者を奪われた。その事実を知ってからは、彼女の言葉は真実なのだろうと嫌でも分かってしまう。私は頼れる姉を演じていただけ……裏ではアリシアに笑われていたのでしょうね。分かってはいたけれど……やっぱり、可愛いと思っていた妹から直接言われると傷付くわね。
「どうしてそこまで私を? あなたの方が美人じゃない」
「そうね……でも、私の好きになった人はみんな、姉さんを気に入っていた。私は見た目だけでなく、勉学だって優れていたのに……その頃からよ、姉さんを疎ましく思うようになったのは」
「……いつぐらいの時か、思い出せないのだけれど」
「私だって正確には覚えていないわ……でも、いつか姉さんを選んだ人物を奪ってやる。そういう想いは日に日に強くなっていった」
そういうことか……今回のレザード様との婚約破棄。アリシアの奇行の裏にはそういう事情があったのね。私はその事情を知れたことで、少しだけスッキリした気分になっていた。もちろん、それくらいで彼女を許す気なんてないけれど。
「でも、ありがとうアリシア……話してくれて良かったわ」
聞けたことは素直に嬉しい……とりあえず、アリシアにお礼を言っておく。
「変な姉さん……私はレザード様を奪った張本人なのに。お人よし過ぎない? 最初の質問に戻るけど、私のこと恨んでいるんでしょう?」
「そうね恨んでいるわ……この恨みは、そう簡単には消えないでしょうね。アリシア……あなたには、やってもらわなければならないことが、たくさんあるわ」
「怖いわよ……姉さん」
「なにせ、海岸線の総責任者になられるレザード様の婚約者なんですもの。アリシア……あなたの責任は今後、とても大きくなるでしょうね」
「言ってくれるわ……流石はケルヴィン王太子殿下の婚約者っていうところ?」
「ちょ、何を言ってるのよ……別に私は……!!」
「冗談で言ってみたんだけど……もしかして、脈ありだったの? わ~お、これはスクープだわ」
「アリシア……!」
「きゃあっ!」
私は彼女の毛布を咄嗟にめくっていた。アリシアは叫び声をあげている。
……なんだろう、とても笑える状況ではないんだけど。久しぶりに姉妹の本音がぶつかったような……そんな清々しい気分だった。
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