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25話 楽しい舞踏会 その2
しおりを挟む「ウィンベル様、お話はお伺いしておりました……大変なことがあったのですね……」
「えっ?」
ヴィクター兄さまとユリアナ嬢の関係性を突っ込もうかと考えていた矢先、ユリアナ嬢が話し出した。
「ええと……なんのことでしょうか?」
「お話はお伺いしております。サンセット・メジラマ侯爵の件でございまして……」
「ああ、そのことですか」
サンセット様との婚約破棄は有名なことだし、別にユリアナ嬢に知られていたとしても不思議ではないか。それに加えて、ヴィクター兄さまから詳しい話を聞いたのかもしれないわね。
「ありがとうございます、ユリアナ嬢。ですが、そちらの件は解決に向かっていますので、何とかなりそうです」
「はい、ヴィクター様からも聞いておりましたが、本当に良かったです」
「ありがとうございます」
ユリアナ嬢に心配されてしまった、なんだか湿っぽい雰囲気になってしまったかもしれない。よし、ここは一気に攻勢に出てみよう。今度は私のターンだ。
「それよりも、ヴィクター兄さま。先ほどの踊りは演舞を彷彿とさせるように激しいものでしたね」
「な、なんだいきなり……?」
ふふふ、焦っているわね……でも、私の攻撃は終わらない。なんで攻撃しているのか分からないけれど、やっぱり楽しい雰囲気の方が良いしね。だからといって、ユリアナ嬢に「サンセット様の話はこのくらいにしましょう」とも言いにくかったし。
話が一区切りしたタイミングで一気に話題を変えたのだ。これならば、誰も嫌な気分にはならないだろう。
「やはりあれでしょうか? ヴィクター兄さまはユリアナ嬢のことがお好き、ということでしょうか?」
「ま、まあ……!」
「な、何を言いだすんだいきなり……ウィンベル!」
「あらあら、それほど満更でもないようですね。まあ、一緒に踊りを披露している段階で分かっていましたが」
「ぬ、ぬう……それを言うなら、お前とジクトも同じではないのか!?」
ヴィクター兄さまは恥ずかしさの余り、私達に矛先を向けて来た。でも、それは逆効果である。
「ええ、そうですよ。ねえジクト?」
「そうだな……まあ、ウィンベルが嫌でないならそういうことかな」
「な、なんと……!?」
「兄さま、残念でしたね」
ヴィクター兄さまは私達がもっと焦ることを期待していたのだろう。でも、そうはいかなかった。私とジクトはその……なんとなく繋がりが大きくなり始めていたからだ。それを確認出来ただけ、その質問をしてくれたヴィクター兄さまには感謝しないといけない。
「ヴィクター兄さまも良かったですね? 次のゼノン様との謁見では不敬罪にならなくて済みそうで」
と、最後にちょっとだけ皮肉の言葉を混ぜてみた。ヴィクター兄さまとユリアナ嬢がこの先、どういう風になるかは不明だけれど、私とジクトは良い関係に進むのではないかと思っている。
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