4 / 31
4話 サンセットの余裕
しおりを挟むサンセット・メジラマ侯爵視点……。
「そういえば、サンセット様。こんな話を聞きましたわ」
「ん? 何のことだシリス嬢?」
私はウィンベルに代わる新たな婚約者を部屋に呼んでいた。シリス・トークン公爵令嬢……家格としては、私よりも上の令嬢になる。ふふふ、私は完全な勝ち組になったというわけだな。
「あなたが振った相手……誰でしたっけ? あの、伯爵令嬢の……」
「ああ、ウィンベル・マリストル伯爵令嬢だな」
「ええ、その人物ですわ」
まさかウィンベルの話になるとはな……全く、なぜ私があんな娘のことを考えなければならないのか。身体も簡単に差し出さずに、頭が固くて不愉快だったな。だからこそ、あの婚約破棄はいい気味だった……なんせ、慰謝料も支払わないと、ハッキリと言ってやったのだからな! 実に愉快だったぞ。
「ウィンベルがどうかしたのか? シリス嬢」
「サンセット様は確か、婚約破棄の慰謝料を支払わないとおっしゃったのですわよね?」
「ああ、そうだな……ハッキリと言ってやったよ。流石にマズかったかな、わはははは」
「それが確か、マリストル伯爵がその慰謝料の件を議会に訴えているらしいですわ」
「なんだと……?」
ウィンベルは当然、自らの父親であるアグラス・マリストル伯爵に報告しただろう。その余波で議会への訴えが始まったということか。ウィンベルには脅しを掛けていたが……やはり、あの娘を脅すだけでは、慰謝料の件は封じ込められなかったか。
「アグラス・マリストル伯爵も馬鹿な奴だな。どうやら、自分達の立場を分かっていないらしい」
「確かにマリストル伯爵はサンセット様よりも身分は低いですが、慰謝料の件をなかったことになんて出来ますの?
私、妙なトラブルに巻き込まれるのはゴメンでしてよ?」
「心配するな、シリス嬢。お前は私の後ろをついて来れば問題ないのだ。ふふふ、マリストル伯爵が議会に訴えたところで全く意味など成さないさ」
私は議長を始め、何人かの議員と親交が深い。色々な理由を付けて、その訴えを退けることくらいはワケないのだよ。ふふふふふっ。まったく、マリストル伯爵家はバカしか居ないのだろうな……ウィンベルといい。
このサンセット・メジラマを敵に回してタダで済むと思うなよ?
「でも、実際問題として大層なことをやりましたね。婚約破棄自体は完全にサンセット様が悪いのでしょう?」
「お前との浮気が原因だからな。表向きの理由としては、公爵令嬢との政略結婚をするから、伯爵令嬢とは別れる……というものだが」
「うふふふ、本当は単なる浮気でしかなかったのに……サンセット様は悪い方ですわ」
「ふふふ、政略結婚の意味合いも強いのだから、問題ないだろう?」
「まるで政略結婚なら、先に締結されていた婚約を、破棄しても良いみたいな言い方ですわ」
「貴族社会なんてそんなものさ」
ウィンベルはまだまだ経験不足だったようだな。今回の慰謝料未払いの件でたっぷりと思い知るが良い……。
18
お気に入りに追加
5,272
あなたにおすすめの小説
可愛いあの子は。
ましろ
恋愛
本当に好きだった。貴方に相応しい令嬢になる為にずっと努力してきたのにっ…!
第三王子であるディーン様とは政略的な婚約だったけれど、穏やかに少しずつ思いを重ねて来たつもりでした。
一人の転入生の存在がすべてを変えていくとは思わなかったのです…。
(11月5日、タグを少し変更しました)
(11月12日、短編から長編に変更しました)
✻ゆるふわ設定です。
私は聖女になります、性女(娼婦)にはなりません
ブラックベリィ
恋愛
柳沢恵理花は、チビで地味なぽっちゃり系の女子高生だった。
ある日、エレベーターを待っているとそこに6人の女子高生が………。
それも、側にいるのはかなりの美少女達。
うわぁ~側に寄るの比べられるからイヤだなぁと思っていると、突然床に魔法陣が…………。
そして、気が付いたらそこは異世界で、神官様?が。
「ようこそ、聖女候補の姫君達……」
って、それを聞いた瞬間に、恵理花は、詰んだと思った。
なんの無理ゲーなのブスな私は絶対絶命じゃないの……。
だから、私は強く心の中で思ったのです。
「神様、私にチート能力を下さい」っと。
そんな私が、試練の森で幻獣(聖女の資格必須)を手に入れて、聖女になる話しのはず。
失敗したら、性女(娼婦)堕ちするかも…………。
冗談じゃないわ、頑張って聖女に成り上がります。
と、いう内容です…………。
ちなみに、初めての聖女モノです。
色々な人が聖女モノを書いてるのを見て、私達も書いてみたいなぁ~と思っていたので、思い切って書いてみました。
たまに、内容が明後日に飛ぶかも…………。
結構、ご都合主義で突き進む予定です。
わたしは妹にとっても嫌われています
絹乃
恋愛
「お姉さまって本当に地味でつまらないわよね」父である子爵に溺愛され、甘やかされて育ったビルギットは、姉のマルガレータを「地味」だと馬鹿にしている。マルガレータは長女として子爵家を支えているが、ビルギットは姉の婚約者も奪い、屋敷から追い出してしまう。マルガレータこそが彼女たちの贅沢な暮らしを支えているとも知らずに。放逐されたマルガレータを救ったのはクリスティアンという青年だった。
出て行けと言って、本当に私が出ていくなんて思ってもいなかった??
新野乃花(大舟)
恋愛
ガランとセシリアは婚約関係にあったものの、ガランはセシリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、ガランは自身の機嫌を損ねたからか、セシリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてセシリアはガランの前から失踪してしまうこととなるのだが、ガランはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はセシリアの味方をすると表明、じわじわとガランの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。
【完結】「『王太子を呼べ!』と国王陛下が言っています。国王陛下は激オコです」
まほりろ
恋愛
王命で決められた公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢との婚約を発表した王太子に、国王陛下が激オコです。
※他サイトにも投稿しています。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
小説家になろうで日間総合ランキング3位まで上がった作品です。
あなたたちのことなんて知らない
gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
【完結】悪役令嬢に転生したようです。アレして良いですか?【再録】
仲村 嘉高
恋愛
魔法と剣の世界に転生した私。
「嘘、私、王子の婚約者?」
しかも何かゲームの世界???
私の『宝物』と同じ世界???
平民のヒロインに甘い事を囁いて、公爵令嬢との婚約を破棄する王子?
なにその非常識な設定の世界。ゲームじゃないのよ?
それが認められる国、大丈夫なの?
この王子様、何を言っても聞く耳持ちゃしません。
こんなクソ王子、ざまぁして良いですよね?
性格も、口も、決して良いとは言えない社会人女性が乙女ゲームの世界に転生した。
乙女ゲーム?なにそれ美味しいの?そんな人が……
ご都合主義です。
転生もの、初挑戦した作品です。
温かい目で見守っていただければ幸いです。
本編97話・乙女ゲーム部15話
※R15は、ざまぁの為の保険です。
※他サイトでも公開してます。
※なろうに移行した作品ですが、R18指定され、非公開措置とされました(笑)
それに伴い、作品を引き下げる事にしたので、こちらに移行します。
昔の作品でかなり拙いですが、それでも宜しければお読みください。
※感想は、全て読ませていただきますが、なにしろ昔の作品ですので、基本返信はいたしませんので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる