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12話 頼りない その2

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 私はガスト様に心底、驚いていた。いえ、驚いていたというよりは失望したというか、情けなさ過ぎるというか……確実に王子殿下としての教養が足りていないし、頭も悪すぎる。こんなことで、国民に対して上位者として顔向け出来るのだろうか。

 私達、貴族王族は国民の支払っている税金で食べているようなものだ。もちろん、領地経営などでの収入も大きいけれど、元を辿れば国民の数が重要になってくる。そんなことは、考えずとも分かっていなければならないはずなのに。

 私達は本来であれば、貴族と言う肩書きがなくとも一般人としての生活が出来るくらいには鍛えられてないといけない。でも、それが出来る貴族達は少ないと言えるだろう。目の前のガスト様なんて特にね。


「ガスト様……他の王子殿下や国王陛下に知られないなんて、出来ると思っているのですか? シュタイン・モリアーヌ国王陛下にどうやって言い訳するのです?」

「だから、それはお前達が匿ってくれて、黙っていれば済む話ではないか!」

「……」


 私もクライブも同時に大きく溜息を吐いてしまった。匿うというのも現実的には不可能だし、する気もない。そもそもの問題として、そんな方法で国王陛下を欺いたりすれば国家反逆罪や不敬罪に問われてもおかしくはないだろう。ガスト様はそんなことも分かっていないの? 本当に情けない……。

「私達が匿うことは出来ませんし、元婚約者だからと言って、貴方様の命令に従う義務なんてないんです」

「な、なんだと……!?」

「ガスト王子殿下……残念ながら、王家にバレないようにという貴方の浅はかな計画は、全て無に帰すことになるでしょう。そんなことは不可能なのですから」

「そ、そんな……!? 私は第二王子であるぞ? 国家の至宝と言っても過言ではない私に不可能なことなどあるわけがないではないか!」


 随分と安っぽい至宝ね……まあ、どうでもいいことだけれど。今のガスト様に味方する人なんて、存在しないんだから。

「至宝とご自分でおっしゃるのなら、一度、王家の方々に話してみてください。ガスト様が国家の至宝であるならば……とても寛大に扱ってくれるでしょう」

「ほほう……言うではないか、ルリア! わははははは、それでは言う通りにしてやろう! 私が国家の至宝たる所以を見て驚くのだな! この私に協力しなかったことを、後から後悔しても遅いぞ!」

 強烈な捨て台詞を吐いて立ち去っていくガスト様の図……私はなんて見送ればいいのか分からなかった。

 後悔するな、と彼は言っていたけれど……今後、王家内で怒涛の混乱が生じることは容易に想像できる結果となってしまった。ガスト様の末路は、まあ、想像しないでおこう……。
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