上 下
8 / 19

8話 ガスト王子殿下の現状 その2

しおりを挟む
 私は本日、クライブ・マーガレット公爵と私室で会っていた。あの日から、何日か経過している。

 シューミートには邪魔されてしまったので、彼とのキスはまだ出来ていないけれど、それはもういつでも可能な状態になっているのだ。なぜならば……私達は婚約を前提に付き合うことにしたのだから。正式に婚約関係にはまだなっていないけれど、それも時間の問題だった。


「クライブとこういう関係になれる日がくるとは、本当に思っていなかったわ。運命って不思議なものよね」

「本当だね、ルリア。僕としても信じられないよ。君がガスト王子殿下を選んだから、この初恋はそこで途絶えたと思っていた」

「考えていることは同じだったのね」

「そうだね。しかし、僕は君への想いを持ち続けて正解だったよ。まさか君が、ガスト王子殿下に婚約破棄をされるなんて思いもしなかったからさ」

「ええ……人生一寸先は闇、というものを感じたわ」

「そうだろうね……」


 ガスト様の性格なども酷かったけれど、あの浮気三昧は本当にどうかしているとしか思えなかった。もっと、下の位の王子であればともかく、彼は第二王子に該当するだけに余計に酷く感じてしまう。


「一寸先は闇だったけど、クライブに連絡を取って再会できたことは光明だったわね。シューミートにも感謝しなくちゃ」

 メイドのシューミートが私と彼を引き合わせてくれたと言っても過言ではないだろうし。最近は少し、それをネタにからかわれている気がするけれど。

「僕も君に告白出来て本当に良かったよ。ルリア、改めて僕の再度の告白に応じてくれてありがとう!」

「いえ、とんでもないことだわ。私の方こそ、まだ好きでいてくれてありがとう!」


 お互いがお互いを愛し合っている……それがハッキリと分かる感謝の言葉となっていた。良い雰囲気だけれど……このまま彼に抱き着いて、キスするくらいなら許されるかしら? いえ……扉の向こうではシューミートが待機しているかもしれない。また、ケーキを持参しました、とか言って入って来るかも……。


 私は意味の分からない警戒心に苛まれていた。まあいいわ。そっちはとりあえず置いておくとして……私はこの前に聞けなかった質問を試みる。気になっていたのよねずっと……。


「ねえ、クライブ。王家の方々についてなんだけれど……以前に話題に上がった時に、ガスト様以外もあんまり良くはない可能性を言っていなかった? あれって、どういう意味なの?」

「ああ、そのことか。まあ、そうだな……あまり他の人にペラペラとしゃべる内容ではないんだけど。ルリアはもう身内みたいなものだし構わないか」

「他言はしないから、よければ聞かせてくれない?」

「わかった、実は……」


 と、クライブが王家について話し始めたまさにその時だった、私室の扉が開かれたのは。シューミートが入って来たのだ。彼女がノックもしないで入ってくるなんて……一体、何事だろう?


「ど、どうしたの? シューミート……?」

「申し訳ありません、ルリア様。クライブ様。ご報告したいことがございまして……」

「報告? 一体、どうしたの?」


 シューミートは少し、焦っているようにも見られた。彼女が平常心でないなんて珍しい気がしてしまう。

「ガスト・モリアーヌ第二王子殿下が、この屋敷に本日来るようです……」

「ええっ!? ガスト様がっ!?」

「はい……」


 私は意外過ぎる人物の名前に、驚きを取り越した声を上げてしまった。本当に人生は一寸先が分からない……まさか、屋敷にガスト様が来るなんてね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!

しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。

まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?【カイン王子視点】

空月
恋愛
精霊信仰の盛んなクレセント王国。 身に覚えのない罪状をつらつらと挙げ連ねられて、第一王子に婚約破棄された『精霊のいとし子』アリシア・デ・メルシスは、第二王子であるカイン王子に求婚された。 そこに至るまでのカイン王子の話。 『まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/368147631/886540222)のカイン王子視点です。 + + + + + + この話の本編と続編(書き下ろし)を収録予定(この別視点は入れるか迷い中)の同人誌(短編集)発行予定です。 購入希望アンケートをとっているので、ご興味ある方は回答してやってください。 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScCXESJ67aAygKASKjiLIz3aEvXb0eN9FzwHQuxXavT6uiuwg/viewform?usp=sf_link

安息を求めた婚約破棄

あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。 そして新たな婚約者は私の妹。 衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。 そう全ては計画通り。 これで全てから解放される。 ……けれども事はそう上手くいかなくて。 そんな令嬢のとあるお話です。 ※なろうでも投稿しております。

婚約破棄されました。あとは知りません

天羽 尤
恋愛
聖ラクレット皇国は1000年の建国の時を迎えていた。 皇国はユーロ教という宗教を国教としており、ユーロ教は魔力含有量を特に秀でた者を巫女として、唯一神であるユーロの従者として大切に扱っていた。 聖ラクレット王国 第一子 クズレットは婚約発表の席でとんでもない事を告げたのだった。 「ラクレット王国 王太子 クズレットの名の下に 巫女:アコク レイン を国外追放とし、婚約を破棄する」 その時… ---------------------- 初めての婚約破棄ざまぁものです。 --------------------------- お気に入り登録200突破ありがとうございます。 ------------------------------- 【著作者:天羽尤】【無断転載禁止】【以下のサイトでのみ掲載を認めます。これ以外は無断転載です〔小説家になろう/カクヨム/アルファポリス/マグネット〕】

婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました

鈴宮(すずみや)
恋愛
 公爵令嬢ポラリスはある日、婚約者である王太子シリウスと、親友スピカの浮気現場を目撃してしまう。信じていた二人からの裏切りにショックを受け、その場から逃げ出すポラリス。思いの丈を叫んでいると、その現場をクラスメイトで留学生のバベルに目撃されてしまった。  その後、開き直ったように、人前でイチャイチャするようになったシリウスとスピカ。当然、婚約は破棄されるものと思っていたポラリスだったが、シリウスが口にしたのはあまりにも身勝手な要求だった――――。

私がもらっても構わないのだろう?

Ruhuna
恋愛
捨てたのなら、私がもらっても構わないのだろう? 6話完結予定

妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。 だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。 しかも新たな婚約者は妹のロゼ。 誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。 だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。 それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。 主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。 婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。 この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。 これに追加して書いていきます。 新しい作品では ①主人公の感情が薄い ②視点変更で読みずらい というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。 見比べて見るのも面白いかも知れません。 ご迷惑をお掛けいたしました

聖人な婚約者は、困っている女性達を側室にするようです。人助けは結構ですが、私は嫌なので婚約破棄してください

香木あかり
恋愛
私の婚約者であるフィリップ・シルゲンは、聖人と称されるほど優しく親切で慈悲深いお方です。 ある日、フィリップは五人の女性を引き連れてこう言いました。 「彼女達は、様々な理由で自分の家で暮らせなくなった娘達でね。落ち着くまで僕の家で居候しているんだ」 「でも、もうすぐ僕は君と結婚するだろう?だから、彼女達を正式に側室として迎え入れようと思うんだ。君にも伝えておこうと思ってね」 いくら聖人のように優しいからって、困っている女性を側室に置きまくるのは……どう考えてもおかしいでしょう? え?おかしいって思っているのは、私だけなのですか? 周囲の人が彼の行動を絶賛しても、私には受け入れられません。 何としても逃げ出さなくては。 入籍まであと一ヶ月。それまでに婚約破棄してみせましょう! ※ゆる設定、コメディ色強めです ※複数サイトで掲載中

処理中です...