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19話 恋仲
しおりを挟む「ミレーヌ、相変わらず小市民的な顔で安心したわ」
「これはジーン王女殿下。こんにちはです」
「ええ、こんにちは」
相変わらずの挨拶を交わす私達。最早、様式美とも言える光景かもしれない。ジーン王女殿下に私への軽蔑の念がないことは今までの彼女の態度が物語っている。
「グレス兄さまと何度もデートを重ねているそうね?」
「え、えと……それは、まあ……そうですね……あはは」
「はっきりしないわね、私には伝わっているのだから観念なさいな」
「は、はい……申し訳ございません……」
「誰が謝れなんて言ったのよ」
ジーン王女殿下の態度は相変わらずだ。私とグレス王子殿下との関係は認めてくれているとは思うけれど……やっぱり、グレス王子殿下を取られるのは悔しいとか、そういう感情があるのかな?
「あのえと……」
「ミレーヌはお兄様のことが好きなの?」
「ええっ! いきなりそんな質問ですか……!?」
「そんなに変な質問ではないでしょう?」
「た、確かにそうかもしれませんが……」
なかなか答えにくい質問が飛び込んで来た。でも、答えないわけにはいかない。ジーン王女殿下に嘘は吐きたくないし、今まで本当にお世話になったのだから。
「はい、私はグレス王子殿下を愛しています」
「そう……その言葉を聞けて、安心したわ」
意外な言葉がジーン王女殿下から帰って来た……予想していた言葉だったのかしら?
「グレスお兄様は偏屈なところがあるけれど、あなたとなら良い関係を築けると思うの。私は二人のことを心から祝福するわ」
「ジーン王女殿下……ありがとうございます!」
「ふふ、幸せになってね。ミレーヌが幸せにならないと、私としては非常に困るんですもの」
「は、はい!」
普段の口調からは考えられない言葉が、ジーン王女殿下から返って来た気がするけれど、そんなことは些細なものだった。私とグレス王子殿下との関係を認めて貰えた……それだけでとても幸せだったのだから。
ジーン王女殿下に顔向けが出来るような関係性を、グレス王子殿下と築いていきたいと心から思った瞬間だった。
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