王女と婚約するからという理由で、婚約破棄されました

マルローネ

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12話 ジーン王女殿下の怒り その3

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「バクラ殿……」

「は、はい。ジーン王女殿下……如何なさいましたか?」

「偶然ではあるけれど、ミレーヌとグレス兄さまの二人が来たわ。これで、随分と話しやすくなったでしょう?」

「は、話しやすい……?」


 バクラ様の汗は留まることを知らない……私とグレス王子殿下を肩越しに振り返って見つめている。その憂いを帯びた表情や瞳は何とも言い難い何かを感じさせた。バクラ様もこういう顔をすることがあるのね……。


「どうしてミレーヌとの婚約を破棄したの? そこから話してもらえるかしら?」

「さ、先ほど話した通りでございます……」

「新たに入って来た者達にも分かるように話しなさい」

「は、はい……。ミレーヌ嬢と婚約破棄をしたのは……ジーン王女殿下に告白する為です。以前の舞踏会では上手く行くだろうという確信がありましたので……」

「そう……随分と短絡的な考えね。私が断る可能性を考えていなかったなんて、侯爵としてはあり得ない」

「うっ……そ、それは……」


 バクラ様はこれ以上なに程に厳しい叱責を受けている。ジーン王女殿下は相当感情的になっているようだった。正確に善悪の判断が出来ているのか、少しだけ心配になるけれど……まあ、私の為に怒ってくれているのだし、口を挟むのは違う気がした。


「確かにミレーヌ嬢に婚約破棄をしてしまったのは申し訳ないことでした。しかし、相応の慰謝料は払う約束はしております……ジーン王女殿下、私はそこまで悪いことをしたのでしょうか……?」


 確かに慰謝料の話は出ている。それは間違いない。まあ、だからと言って、一方的な婚約破棄を肯定する理由にはならないのだけれど……バクラ様としては、そのように言うしかなかったようね。グレス王子殿下も無言を貫いているし、私も無暗に会話を途切れさせないようにする。


「はあ……侯爵令息ともあろう者が、そのようなことも分からないのかしら?」

「くっ、申し訳ありません……」

「こんなことでは、クレメンス家の将来がとても心配になるわね。侯爵家だというのに……まったく。今の内に次期当主の座から降りることをおススメするわよ」

「じ、ジーン王女殿下……」


 凄まじい程のジーン王女殿下からの攻勢に、バクラ様の汗はいつの間にか蒸発していた。そのくらい、身体が冷え切っているのかもしれない。

 それにしても、ジーン王女殿下の攻勢はまだまだ続きそうだ……私とグレス王子殿下はとんでもないところに、居合わせてしまったようね。バクラ様のメンタルは大丈夫かしら……?
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