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8話 ジーンとバクラ その1
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バクラ・クレメンス侯爵令息視点……。
「失礼いたします、ジーン王女殿下……」
「バクラ・クレメンス侯爵令息……お久しぶりね。こうして、話をするのは何時以来だったかしら?」
「はい、以前の舞踏会以来かと存じます」
「あら、もうそんなに月日が経っているのね。時間の流れと言うものは、本当に早いものだわ」
「左様でございますね」
私は宮殿内のジーン王女殿下の私室に入っていた。彼女は相変わらず美しく、超然としていらっしゃる。まさに、どこかの国の女王陛下のような佇まいだ。その割には部屋には動物のぬいぐるみが置いてあったりと、その趣味にはギャップがあった。
私は彼女のそういう部分に惚れたのだ。ジーン・ファルガ王女殿下……本日、私はこの方の婚約者となるのだ。これほどに光栄なことは、今後現れないかもしれない。それ程に重要な日となるだろう。さあ、あとは私が彼女に告白するだけだ、それで全ては丸く収まる……。
「バクラ殿あなたには色々と聞いておきたいことがあったの。でもこうして、あなたの方から来てくれて手間が省けたわ」
「左様でございましたか……それは良かったです。ジーン王女殿下のお手間を省くのは、臣下の貴族としては当然のことですからね」
「ええ、その通りね。ありがとう」
ジーン王女殿下から聞きたいことがあるというのは驚きだが……やはり、以前の舞踏会での会話内容が関係しているのか? 思えば色々な話題で盛り上がったからな……趣味や大会などのイベント事について、今後の地方開発、罪人の処分や王族と貴族の関係性。それから、他国との関係についても……私の知識を存分に披露した形になっていた。
ジーン王女殿下はそんな博識な私に興味津々といった態度を取っていたように思うからな。さて、どの内容について聞かれたとしても、すぐに答えられるようにしておかなければ。
ただ、先にもっとも重要な事柄を済ませておきたい。
「ジーン王女殿下、申し訳ございませんが……先に、私の用件を申し上げてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。本日は何をしにここへ来たの?」
あっさりと自分の意見が通ったことに拍子抜けしてしまった。もちろん、その方が良いのだが……ジーン王女殿下はキョトンとした表情になっているから、私の本意は分かっていないと思うが。
まあいい……許しが出たのなら、一世一代の告白をさせてもらおうではないか」
「実はジーン王女殿下に申し上げたいことがございまして……」
「だから何かしら?」
「私はジーン王女殿下とこれまで何度も話をし、確信いたしました。私はあなた様の隣に居たいということが……!」
「えっ……?」
「お願いいたします、ジーン王女殿下……! 私と婚約をしてください! あなたを愛しているのです……!」
私は緊張で噛みそうになるのを必死で堪え、何とか最後まで言い切ることに成功した。さて……返答や如何に!?
私は驚きのあまり、顔を真っ赤にしている彼女を思い浮かべていた。そして、ジーン王女殿下に視線を合わせる。すると……。
「……そんなことが」
「え、ええ……私は本気なのです、ジーン王女殿下! どうか私と結婚してください!」
「まさか……ミレーヌと婚約破棄をしたのは、この為だったと言うの? あの子をこんなことの為に悲しませた、と?」
「い、ジーン王女殿下……?」
あれ、おかしいぞ……感動のあまり、顔を真っ赤にして涙を浮かべている彼女の姿は何処にもなかった。
実際のジーン王女殿下はミレーヌの名前を出して、ワナワナと震えているだけ……そしてその表情はとても恐ろしいものに変わっていた。
「失礼いたします、ジーン王女殿下……」
「バクラ・クレメンス侯爵令息……お久しぶりね。こうして、話をするのは何時以来だったかしら?」
「はい、以前の舞踏会以来かと存じます」
「あら、もうそんなに月日が経っているのね。時間の流れと言うものは、本当に早いものだわ」
「左様でございますね」
私は宮殿内のジーン王女殿下の私室に入っていた。彼女は相変わらず美しく、超然としていらっしゃる。まさに、どこかの国の女王陛下のような佇まいだ。その割には部屋には動物のぬいぐるみが置いてあったりと、その趣味にはギャップがあった。
私は彼女のそういう部分に惚れたのだ。ジーン・ファルガ王女殿下……本日、私はこの方の婚約者となるのだ。これほどに光栄なことは、今後現れないかもしれない。それ程に重要な日となるだろう。さあ、あとは私が彼女に告白するだけだ、それで全ては丸く収まる……。
「バクラ殿あなたには色々と聞いておきたいことがあったの。でもこうして、あなたの方から来てくれて手間が省けたわ」
「左様でございましたか……それは良かったです。ジーン王女殿下のお手間を省くのは、臣下の貴族としては当然のことですからね」
「ええ、その通りね。ありがとう」
ジーン王女殿下から聞きたいことがあるというのは驚きだが……やはり、以前の舞踏会での会話内容が関係しているのか? 思えば色々な話題で盛り上がったからな……趣味や大会などのイベント事について、今後の地方開発、罪人の処分や王族と貴族の関係性。それから、他国との関係についても……私の知識を存分に披露した形になっていた。
ジーン王女殿下はそんな博識な私に興味津々といった態度を取っていたように思うからな。さて、どの内容について聞かれたとしても、すぐに答えられるようにしておかなければ。
ただ、先にもっとも重要な事柄を済ませておきたい。
「ジーン王女殿下、申し訳ございませんが……先に、私の用件を申し上げてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。本日は何をしにここへ来たの?」
あっさりと自分の意見が通ったことに拍子抜けしてしまった。もちろん、その方が良いのだが……ジーン王女殿下はキョトンとした表情になっているから、私の本意は分かっていないと思うが。
まあいい……許しが出たのなら、一世一代の告白をさせてもらおうではないか」
「実はジーン王女殿下に申し上げたいことがございまして……」
「だから何かしら?」
「私はジーン王女殿下とこれまで何度も話をし、確信いたしました。私はあなた様の隣に居たいということが……!」
「えっ……?」
「お願いいたします、ジーン王女殿下……! 私と婚約をしてください! あなたを愛しているのです……!」
私は緊張で噛みそうになるのを必死で堪え、何とか最後まで言い切ることに成功した。さて……返答や如何に!?
私は驚きのあまり、顔を真っ赤にしている彼女を思い浮かべていた。そして、ジーン王女殿下に視線を合わせる。すると……。
「……そんなことが」
「え、ええ……私は本気なのです、ジーン王女殿下! どうか私と結婚してください!」
「まさか……ミレーヌと婚約破棄をしたのは、この為だったと言うの? あの子をこんなことの為に悲しませた、と?」
「い、ジーン王女殿下……?」
あれ、おかしいぞ……感動のあまり、顔を真っ赤にして涙を浮かべている彼女の姿は何処にもなかった。
実際のジーン王女殿下はミレーヌの名前を出して、ワナワナと震えているだけ……そしてその表情はとても恐ろしいものに変わっていた。
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