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6話 楽しい会話 その2
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ジーン・ファルガ第二王女殿下とグレス・ファルガ第三王子殿下の訪問は、私の中ではとても強い衝撃だった。特に、私が中心になってもてなす必要があったところが……。いえ、とても楽しく充実した時間を過ごせたのだけれど……。
私は玄関先でお帰りになる二人を見送っている。
「それではね、ミレーヌ。今日のところはこれで失礼させてもらうわ」
「はい、ジーン王女殿下……申し訳ありません、私しかお見送り出来る家族が居なくて……」
「ふん、失礼なことだけれど、私は心がとても広いから許してあげないことはないわ」
「ありがとうございます」
「それから……また、気が向いたら、その小市民的な顔を見に来てあげる」
「要約すると……ミレーヌ嬢のことが心配だから、また来てもいいですか? ということだね」
「お兄様、変な要約はしないでください」
二人のやり取りは最早、お約束と言えるのかもしれない。見ているこっちが微笑ましくなるし。
「それじゃあ、失礼させてもらうわ」
「はい、お気をつけてお帰りください」
「その……ミレーヌ嬢、二人で出掛ける日取りについては……また後程、決めるとしようか」
照れながら言われると、私の方まで波及してしまうから勘弁して欲しい。ほら、ジーン王女殿下がクスクスと笑い始めたし。
「まあ、デートの日取りについてはお互いの休日でよろしいのではなくて?」
「で、デート……!?」
「あら、デートでしょう? 身分の差はあれど、王子と貴族令嬢が二人で出掛けるのだから……これをデートと呼ばずして、なんと呼ぶのかしら?」
「そ、そうですね……」
「まったく、ジーンは……はあ」
余計な反論は意味をなさない……むしろ、ジーン王女殿下の術中に嵌ってしまうだろう。私とグレス王子殿下はこの時、息がピッタリだったように思える。
「ふふふ、二人のデートについては、私も楽しみでしてよ?」
「ジーン王女殿下が楽しむようなことではないと思うのですが……」
他人の恋愛関係は蜜の味? とは言うけれど……ちょっと違うかしら。まあいいや、ジーン王女殿下が楽しんでくれること自体に不快感はないし。少し恥ずかしい事態が起こらないか不安なだけで……。
「そ、それではグレス王子殿下……またお会いしましょう……」
「う、うむ。また会おうか、ミレーヌ嬢」
「あらあら、なんだか本当の恋人同士みたいですわね」
「ジーン王女殿下!」
「ジーン!」
最後までジーン王女殿下の手のひらの上だったのかもしれない。そして今度こそ、二人は専用の馬車で護衛と共に帰って行った。ジーン王女殿下は心配してくれて……グレス王子殿下とは予期せぬ約束が生まれたけれど、本当に楽しい時間だったかな。
……あ、そう言えば結局、バクラ・クレメンス侯爵令息がジーン王女殿下に強引? な告白をしようとしていることは有耶無耶になってしまったわね。ちゃんと伝えることを忘れていたけれど、まあ、ジーン王女殿下なら問題ないかな。
むしろ、バクラ様がどんな目に遭うかの方が興味があるわ……なんというか、ご愁傷様という言葉が自然に出てきてしまう結果になりそう……。いえ、ジーン王女殿下のことだから、それだけでは済ませない可能性もありそう。
私は玄関先でお帰りになる二人を見送っている。
「それではね、ミレーヌ。今日のところはこれで失礼させてもらうわ」
「はい、ジーン王女殿下……申し訳ありません、私しかお見送り出来る家族が居なくて……」
「ふん、失礼なことだけれど、私は心がとても広いから許してあげないことはないわ」
「ありがとうございます」
「それから……また、気が向いたら、その小市民的な顔を見に来てあげる」
「要約すると……ミレーヌ嬢のことが心配だから、また来てもいいですか? ということだね」
「お兄様、変な要約はしないでください」
二人のやり取りは最早、お約束と言えるのかもしれない。見ているこっちが微笑ましくなるし。
「それじゃあ、失礼させてもらうわ」
「はい、お気をつけてお帰りください」
「その……ミレーヌ嬢、二人で出掛ける日取りについては……また後程、決めるとしようか」
照れながら言われると、私の方まで波及してしまうから勘弁して欲しい。ほら、ジーン王女殿下がクスクスと笑い始めたし。
「まあ、デートの日取りについてはお互いの休日でよろしいのではなくて?」
「で、デート……!?」
「あら、デートでしょう? 身分の差はあれど、王子と貴族令嬢が二人で出掛けるのだから……これをデートと呼ばずして、なんと呼ぶのかしら?」
「そ、そうですね……」
「まったく、ジーンは……はあ」
余計な反論は意味をなさない……むしろ、ジーン王女殿下の術中に嵌ってしまうだろう。私とグレス王子殿下はこの時、息がピッタリだったように思える。
「ふふふ、二人のデートについては、私も楽しみでしてよ?」
「ジーン王女殿下が楽しむようなことではないと思うのですが……」
他人の恋愛関係は蜜の味? とは言うけれど……ちょっと違うかしら。まあいいや、ジーン王女殿下が楽しんでくれること自体に不快感はないし。少し恥ずかしい事態が起こらないか不安なだけで……。
「そ、それではグレス王子殿下……またお会いしましょう……」
「う、うむ。また会おうか、ミレーヌ嬢」
「あらあら、なんだか本当の恋人同士みたいですわね」
「ジーン王女殿下!」
「ジーン!」
最後までジーン王女殿下の手のひらの上だったのかもしれない。そして今度こそ、二人は専用の馬車で護衛と共に帰って行った。ジーン王女殿下は心配してくれて……グレス王子殿下とは予期せぬ約束が生まれたけれど、本当に楽しい時間だったかな。
……あ、そう言えば結局、バクラ・クレメンス侯爵令息がジーン王女殿下に強引? な告白をしようとしていることは有耶無耶になってしまったわね。ちゃんと伝えることを忘れていたけれど、まあ、ジーン王女殿下なら問題ないかな。
むしろ、バクラ様がどんな目に遭うかの方が興味があるわ……なんというか、ご愁傷様という言葉が自然に出てきてしまう結果になりそう……。いえ、ジーン王女殿下のことだから、それだけでは済ませない可能性もありそう。
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