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4話 王族 その2

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「ふん……ミレーヌ、バクラ殿からは相当に酷い別れ方をされたのかしら?」

「あ、いえ……どうなんでしょうかね……」

「違うのかしら?」


 どこまで話したら良いのかが分からない……おそらく、バクラ様がジーン王女殿下と一緒になることを目論んだから、私と婚約破棄をしたとは伝わっていないようだし。その辺りは話した方がいいのかな? 話しても問題ないはずなのに、私はなぜか慎重になっていた。

 余計なことを話したことによる、バクラ様からの報復とかを恐れていたのかもしれない。

「大丈夫よ、ミレーヌ。話したくなければ、話さなくとも」

「も、申し訳ありません……ジーン王女殿下。私も何から話せば良いのか分からなくなっておりまして」

「大丈夫だよ、ミレーヌ嬢。ジーンは分かっているさ、君の気持ちというやつをね」

「お兄様、余計なことは言わないでくださいませ」


 ジーン王女殿下はふんっと鼻を鳴らしながら、私から目を逸らしていた。そのしぐさに思わず微笑んでしまう。

「なにかしら、ミレーヌ? その小市民的な表情は?」

「いえ、なんでもありません」

「そう……なら、いいけれど」


 ジーン王女殿下はとりあえず、小市民的な……という言葉で小馬鹿にしていますよ、と伝えているのだ。別に本気で言っているわけではない。それは、彼女と長年付き合っていく内に分かって来た。


「ところで、本日は私を心配してお越しいただいたのでしょうか? そうだとしたら、とても申し訳ないことです……」

「……別に心配なんてしてないけれど、グレス兄さまがどうしてもというから、来て上げたのよ」

「要約すると、ジーンはとてもミレーヌ嬢を心配していた、ということだね」

「お兄様!」


 ジーン王女殿下はとても怒っているようだったけれど、特に否定はしないところが可愛かった。ちなみに、ジーン王女殿下は私と同じ17歳だ。お年頃……というやつかもしれない。

「それにしても……お二人がお越しくださったのは、お父様からの依頼かと思いますが、合っていますか?」

「そうね、デニス・ライドウ伯爵からの依頼ということになるわ」


 なるほど……やっぱり、そういうことだったのね。もう……お父様は。お母様やお兄様が留守なのもきっとそういうことね。

「では、グレス王子殿下がどうしても……というのは、どういう意味なのでしょうか?」

「ああ、それは……うん、まあ……どうでもいいんじゃないかな」

「?」

「ふふふ、お兄様。とても動揺していますわよ? 殿方でしたら、冷静に答える義務があるんじゃありませんこと?」


 どういうことかしら……? ジーン王女殿下はクスクスと笑いながら、グレス王子殿下をからかっているようだった。とても仲のよい兄妹に見えるのは良いんだけれど……グレス王子殿下がこんなに言葉を詰まらせるのは珍しいような気がする。

 どういうことかしら……?
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