上 下
7 / 21

7話 スティーブンとシャンファ その1

しおりを挟む
 スティーブン視点……


「まったく……シムルグ・マークス伯爵め。忌々しい奴だ……」

「まったくですわね……まさか、スティーブン様に盾突くとは。己の身分というものを分かっていないのではないですか?」

「そういうことだ。シャンファは流石に分かっているようだな」

「当たり前です、スティーブン様。私はあなた様の妻になる立場なのですから」


 そう言いながら、シャンファはソファに座る私の近くまで赴いた。お互いの手を掛け、絆を確かめ合う。本来ならば、このままキスをしベッドへ直行なのだが、本日はそんな気分にはなれなかった。

 くそ……これも全て、あの男のせいだ……!


「なんとか思い知らせてやりたいですわね。総攻撃を仕掛けることは出来ませんの?」

「総攻撃だと……?」

 ん? シャンファから予想しない言葉が出て来たような。なんだ、総攻撃とは……?


「総攻撃は総攻撃でございますよっ! スティーブン様に忠誠を誓っている私設軍を率いて、マークス家を焼き討ちにするのです!」

「……本気で言っているのか?」

「えっ……? や、やだなぁ、冗談ですよ……あははははっ」

「そ、そうだな……? うむ、冗談か……」

「冗談に決まっているじゃないですか、うふふふ」


 シャンファの目は本気に見えたが。いや、本気に見えたというよりも情勢が分かっていないような、そんな気がしてしまう。

「流石に総攻撃なんて手法は無理ですよね」

「当たり前だ。いくら私が侯爵の立場とはいえ、同じ王国内での臣下同士で血を流すようなことは出来ぬ」


 バートン王国の歴史を紐解くと、暗殺などが行われたこともあるらしいが……そんなものは現実味のない都市伝説のようなものだ。しかし、シャンファの言う通り確かに思い知らせてやりたいのは事実だ。アンネリーの奴もあくまで盾突くようだからな。この私の10万ゴールドの受け渡しを拒否しおって……。


「スティーブン様、こういうのは如何ですか?」

「なんだ、シャンファ?」

「私達の財力を見せつけるのです」

「ほう、財力とな?」


 どういうことだ? 貴族に貴族が金持ちであることをアピールするのか……? 相手が平民であれば、有効かもしれないが。


「マークス家はそれなりの富豪だぞ。私やシャンファの財力を見せてどうなるのだ? 予想の範囲内で終わると思うが……」

「そうでしたね」

「ん……?」


 シャンファはさっきから何を言っているんだ? もしかして……いや、それはないか。ちゃんとした考えを持って発言しているはずだ。


「では、その財力で私達が住む別荘を建設致しましょう! ピエール湖のほとりに優雅な別荘を建てて暮らすのが夢でした!」


 話が逸れている……シャンファはもしかして……いや、もしかしなくとも天然で話しているのか? 私は少し心配になって来た。

 だが、別荘の建設というのは悪くないかもしれん。マークス伯爵にも掛け合い出資させれば良いのだ。断れない理由を作り出し、悔しがらせてやるとするか。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。

木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。 その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。 ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。 彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。 その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。 流石に、エルーナもその態度は頭にきた。 今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。 ※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

その公女、至極真面目につき〜デラム公女アリスタの婚約破棄ショー〜

ルーシャオ
恋愛
デラム公女アリスタは、婚約者であるクラルスク公爵家嫡男ヴュルストがいつも女性を取っ替え引っ替えして浮気していることにいい加減嫌気が差しました。 なので、真面目な公女としてできる手を打ち、やってやると決めたのです。 トレディエールの晩餐会で、婚約破棄ショーが幕を開けます。

目を覚ました気弱な彼女は腹黒令嬢になり復讐する

音爽(ネソウ)
恋愛
家族と婚約者に虐げられてきた伯爵令嬢ジーン・ベンスは日々のストレスが重なり、高熱を出して寝込んだ。彼女は悪夢にうなされ続けた、夢の中でまで冷遇される理不尽さに激怒する。そして、目覚めた時彼女は気弱な自分を払拭して復讐に燃えるのだった。

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?

朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。 何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!   と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど? 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)

デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまで~痩せたら死ぬと刷り込まれてました~

バナナマヨネーズ
恋愛
伯爵令嬢のアンリエットは、死なないために必死だった。 幼い頃、姉のジェシカに言われたのだ。 「アンリエット、よく聞いて。あなたは、普通の人よりも体の中のマナが少ないの。このままでは、すぐマナが枯渇して……。死んでしまうわ」 その言葉を信じたアンリエットは、日々死なないために努力を重ねた。 そんなある日のことだった。アンリエットは、とあるパーティーで国の英雄である将軍の気を引く行動を取ったのだ。 これは、デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまでの物語。 全14話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
 婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!  ――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。 「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」  すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。  婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。  最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2022/02/14  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2022/02/13  小説家になろう ハイファンタジー日間59位 ※2022/02/12  完結 ※2021/10/18  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2021/10/19  アルファポリス、HOT 4位 ※2021/10/21  小説家になろう ハイファンタジー日間 17位

転生令嬢だと打ち明けたら、婚約破棄されました。なので復讐しようと思います。

柚木ゆず
恋愛
 前世の記憶と膨大な魔力を持つサーシャ・ミラノは、ある日婚約者である王太子ハルク・ニースに、全てを打ち明ける。  だが――。サーシャを待っていたのは、婚約破棄を始めとした手酷い裏切り。サーシャが持つ力を恐れたハルクは、サーシャから全てを奪って投獄してしまう。  信用していたのに……。  酷い……。  許せない……!。  サーシャの復讐が、今幕を開ける――。

家に代々伝わる髪色を受け継いでいないからとずっと虐げられてきていたのですが……。

四季
恋愛
メリア・オフトレスは三姉妹の真ん中。 しかしオフトレス家に代々伝わる緑髪を受け継がず生まれたために母や姉妹らから虐げられていた。 だがある時、トレットという青年が現れて……?

処理中です...