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10話 反撃の狼煙 その2

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 さて……スコット・テスタメント王子は私の味方になってくれた。隣国の王子様ではあるけれど、ソドム・ゴーリキー公爵と婚約破棄をする上でこれほどの味方は早々居ないと思える。

 彼はこの国には直接、関わることは出来ないけれど、それでも王子殿下という肩書きは大きい。さらに、私とは幼馴染にあるのだ。幼馴染という関係性がなければ、スコットを味方に引き入れることはおそらく出来なかっただろう。

 そう考えると、昔の繋がりに感謝しなくちゃならない。

「それで、スコット……本当に実行に移すの?」

「マズいかな? アップル伯爵やリドリーが無理だと判断するのであれば、別の手を考えるが……」

「いえ、スコット王子殿下。私はこの方法がもっとも確実ではないかと思っております」

「ありがとうございます、アップル伯爵。そう言ってもらえると自信になります」


 私とお父様、それからスコットの3人は付き人などを従えて、ルーンウェル王国の王宮前に来ていた。その理由は……ソドム・ゴーリキー公爵の件を王家の人間に伝える為だ。もう少し正確に言えば、国王陛下に直接報告することを考えている。それから議会にも同じように伝えるのだ。

 その報告の中心に居るのは隣国のテスタメント王国の王子殿下……いくらルーンウェル王家と言えども、門前払いは出来ないだろうという希望的観測だった。実際にどうなるかは不明だけれど、既に訪問の予定は入れてあり、それが通っていることからも、門前払いになることはないだろう。

 あとはどんな話になるか、ということだけれど……これだけは本当に読めなかった。

 相手は私達の国の最高権力者である、ジラーク・ルーンウェル国王陛下なのだから。ソドム・ゴーリキー公爵は元々は王家の血筋だったので、親戚関係ということになるはず。その辺りでどのように判断されるか、というところね。

「スコットが一緒であれば、国王陛下も門前払いは出来ない……なるほど、あなたが直接介入することは出来なくても、間接的に介入する形を取ったわけね」

「そういうことになるね」

 流石はスコットといったところかしら。大胆な考えだと思う。ただ、言われてみるとそれしかないって考えではあったけれど。

「まあ、どうなるかは行ってみるしかない。頑張ってやろうか」

「ええ、そうね」

 もう既に国王陛下に謁見する許可は出ているのだ。私達は進む以外に道はなかった。まあ、そこまで深く考えなくともなんとかなる……今は、そういう安心感の方が強いけどね。これもスコットが協力してくれているおかげだわ。
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