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32話
しおりを挟む「ふう……」
「疲れたのかな、ミリー? まあ、久しぶりの買い物だからね」
「そうね、ルシエド。楽しかったけれど、少し疲れたかもしれないわ」
私はルシエドとデート……という程ではないけれど、貴族街で買い物を楽しんでいた。シエナが好きだった服屋やレストラン……そのほかにも装飾品や花など、たくさんの場所を見て回ったのだ。ボイドとシエナの裁判も終わり、ゆっくりしたいと私は考えていた。
ルシエドはそんな私の考えを汲んでくれたわけで。
「ついその場のノリで決めてしまったわけだけれど……迷惑じゃなかったかい?」
「いえ、迷惑だなんてそんな……とても楽しかったわ」
これは本当のことだ。ボイドとシエナのことは私としても非常に疲れていたから、本当に気分転換はしたかった。いつまでもあの二人のことを考えているのは良くないことだったし……。
「楽しかったのなら、良かったよ。しかし、休みたなかったのに随分と動かしてしまったのは悪かったよ」
「いえ……歩いている方が余計なことを考えなくてもいいしね」
「それならいいんだが」
私は物理的にはゆっくりしていないけれど、精神的には落ち着いていると思っている。これも、ルシエド達のおかげだ。本当にありがとう、と言いたい。また、どこかの機会で彼にはお礼を言わないと駄目ね。
「今までにはない程の速度でボイドとシエナには罰が執行されたみたいね」
「そうだね……まあ、フューリ―家は名家だからね。対処も早かったというわけだ。ボイドとシエナが原因であの家がなくなってしまうのは避けたいという思いだろう」
「……」
ボイドの父親であるマイケル様は、病弱だけれど自分達の代でフューリ―家を終わらせるつもりはないようだった。身内に懇願して、新しい当主を募るつもりなのか……。
「フューリ―家は大変な立場になっているわね」
「そうだな。ボイドとシエナが抜けたのは非常に大きいだろうからね」
「ええ……それにあの二人も収容先で無事に済むとは思えないわ」
「だろうな」
本当の地獄はここからなのかもしれない。ボイドとシエナ……同情なんてしないけれど、本当に馬鹿なことをしたわね。ボイドに関しては信頼できる相手だったのに、残念だわ。
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