婚約者の妹を虐めていたと虚偽の発言をされた私は……

25話

　いきなり行ったボイド様の奇行……愛しているはずの妹のシエナ様を殴ったのだった。

「お、おい……！　ボイド殿！　なにをしているんだ！？」

「ゼノム殿！　黙っていてくれ！　これは私達兄妹の問題なんだ……シエナ！　お前と言う女は！」


　ゼノム様の制止でもボイド様は止まらなかった。さらに追い打ちをシエナ様に掛けようとする。それを護衛の人達が止めるといった構図だった。

「くっ、離せ！　離せ～～～！」

「ボイド様！　落ち着いてください！　どうか、落ち着いてください！　シエナ様が大怪我をしてしまいます！」

「か、構うものか～～～！　私はお前を信じていたのに！　なんてことをしてくれたんだ～～！」


　ボイド様は護衛の人達でも止めるのが精一杯だったようだ。そういえば、ボイド様って武闘派だったような。私やルシエドはその状態を黙ってみている。なんとも不思議な光景だった。

「い、いや……！　お兄様！　こんなのお兄様じゃないわ！　私、帰ります！」

「何を言っているんだ、君は……？」


　立ち上がり埃を払い落としたシエナ様だったけれど。帰ろうとしたのは驚いた。自分がこれからどうなるのか分かっていないのかしら？

「何って……帰ると申し上げたんです！　もうこんなところには居られません！　慰謝料はあとから支払いますから、それでいいですよね！」

「ボイド殿、しっかりと教えてあげたまえ」


　ルシエドは頭を抱えながら言った。情けなくて言葉が出て来ないといった印象だわ。シエナ様はあまりに世間が分かっていないような、そんな感じだった。それをボイド様から伝えさせるあたり、ルシエドもやるわね。

「お前は私とミリーの婚約をなしにしたのだ。私もそれに加担したことになるだろう……ルシエド達への非礼も含めて……相当な罪に問われる。最早、まともな身体で外に出ることは出来ないはずだ……」

「えっ？　そ、そんな……私はただ、お兄様を取られたくなかったから嘘を吐いただけで……！　それがそんな大きな罪になるんですの！？」

「なるのだ！　お前は本当にとんでもないことをしたんだよ！」

「そ、そんな……いや、いやよぉぉぉぉぉぉぉぉ！！」

「く、くそ……どうしてこんなことに……！」


　ボイド様とシエナ様……二人は後悔したのか、その場に崩れ去った。気持ちは痛いほどに分かるけれど……。


「あの、まずは謝罪してくれませんか？」


　二人の罪よりも私はそれが気になっていた。