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17話
しおりを挟む私はルシエドと一緒にゼノム様の部屋を訪れた。公爵という肩書きのある人物だけに、会うのは非常に緊張してしまうわね。
「父上。ルシエド、参りました」
「ああ、わざわざ呼び立てて済まないな。座ってくれ。ミリー嬢も楽にするといい」
「ありがとうございます、ゼノム様」
私達は部屋に入ると、あらかじめ用意されていた椅子に腰を掛けた。ゼノム様はちょうど対面に座っている形だ。その間に大理石の机が置かれている。
「父上、本日は如何なさいましたでしょうか?」
「わかっていることだろうが、私の元にボイド殿から怒りの言葉が寄せられたのだ」
「怒りの言葉でございますか?」
「自分の妹に対する虐めだけではなくて、その後も執拗に追い回すのは何事か……とな」
予想通りの展開ではあるけれど、まさかゼノム様を巻き込む形になるとは思わなかったわ。
「それは私が行っているということでしょうか?」
「ボイド殿はそのように考えているようだ」
ルシエドはまったくの濡れ衣を着せられていることになるわけね……ボイド様もいよいよ周りが見えなくなっているのかもしれない。物事の視野が狭まっているのだろうか。
「ははは、ボイドはそこまでのことを……まったく、参りました……」
「どうなっているのだ、ルシエド? 私にも噂の件は届いていたが、お前を信用して黙っていたのだぞ」
「申し訳ありません、父上……」
「お前からそのような言葉が出て来るとはな」
ゼノム様に責められているルシエドだ。ここは私が矢面に立つ必要があると思う。彼は私のためにやってくれたのだから。
「ゼノム様、どうかルシエドを責めるのはお止めください。彼は私のことを想って色々としてくれたのですから……」
「虐めの件や追及の件はどうなのだ? ボイド殿の言い分は正しいのか?」
「いえ、まったくの濡れ衣でございます」
「ボイド殿の妹であるシエナを追い回したというのは?」
「それは事実でございますが、決して執拗に追い回したわけではありません。あくまでも虐めの件を終息させる目的で動いただけです」
「そうか……」
ゼノム様は難しい顔をしていた。公爵としての立場と息子を信じる気持ちが錯綜しているのかもしれない。
「父上は私達のことを信じてくださいますか?」
「信用したいとは思っている。しかし、私にも立場というものがあるのでな」
「ゼノム様……」
クレームが公爵家に届いた……相手は侯爵家と言う立場なのだから無視するわけにはいかない。ゼノム様としても悩むのは当然のことだろうか。
「よし、一度、しっかりとした話し合いの場を設けるとしよう。ボイド殿は王家にもこのことを話すと言っていたからな。流石にそこまで話が大きくなってからでは面倒だ」
「なんとそこまで……ははは」
乾いた笑いしか出なかった。それもそのはずだ、王家が絡んでくるとなれば大きすぎる事態なのだから。その後、私達はボイド様との話し合いの場を設けるべく動いていくのだった。
ここで誤解を解かなければ、大変なことになりかねないわね。失敗は許されないわ。
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