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4話

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 アルマーク・フィレオ侯爵……先代が病気になった為に若くして侯爵を継いだお方だ。私とシエスタ姉さんとは知り合いだった。初めて会ったのはいつだったかしら。


「アルマーク様お久しぶりです。どうぞ、普通にお話しくださってよいのですよ? 侯爵様に敬語を使われては困りますし」

「そ、そうか……じゃあ、そうさせてもらおうか。ジプシー、シエスタ。久しぶりだな」


 姉さんは慣れた手つきでアルマーク様と話していた。別にアルマーク様は普通に話していたと思うけれど、今後、敬語になったりしないようにという配慮なのかもしれないわね。


「こんなところで会えるなんて、思ってもいませんでした。アルマーク様」

「私も同じ気持ちだよ、ジプシー。私のことは呼び捨てで構わないぞ」

「さ、流石にそれは……」


 侯爵様を呼び捨てにはできない。いくらアルマーク様の発案でも納得できなかった。


「まあ、よいかな」

「あらあら、アルマーク様はジプシーだけにご執心なんですか?」

「おいおい、シエスタ……勘弁して欲しいよ……」


 流石は年上の姉さんだった。アルマーク様を手玉に取っている様子だ。実際にはシエスタ姉さんは侯爵令息のお方と婚約しているのだから、アルマーク様に対して怒ったりするわけがない。ヤキモチなんてあり得なかった。これはアルマーク様への単なるイタズラだ。


「うふふ、申し訳ありません。アルマーク様と久しぶりに会えて嬉しいので、つい……」

「相変わらずだな、シエスタは……」


 私達が初めて会ったのは何年も前の話だ。最近はお互いに忙しくて会えない日々が続いていたけど……アルマーク様とはある意味では幼馴染と言える関係だった。

「そういえば、ジプシーは大変な様子だな」

「あ……ご存知なんですね、アルマーク様……」

「まあ、これでも侯爵という立場だからな。色々と話しは聞いているよ」

「なるほど……婚約破棄の事実もご存知なんですね」


 出来ればアルマーク様には知られたくなかったけれど……これも仕方のないことなのかもしれないわね。侯爵家に知られないようにすることは事実上、不可能だし。


「一部悪い噂も流れているようだが……ジプシーに限っては信じられないな。私が知っている君とは違いすぎる」

「悪い噂に関しては事実ではないかと。婚約者のレナン様は浮気が原因で婚約破棄をすると言ってましたし」

 隠す必要もないので、私は事実を述べた。すると……。

「なに? 浮気が原因だと……?」

「えっ……そ、そうですが……」

「レナン……あの男……」


 アルマーク様の表情は通常では考えられないものになっていた。どうやらレナンに対してものすごく怒っているようだけれど……レナンのことを話してどうかと思うけれど、その表情はすこし恐怖を覚えるほどだった。
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